【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

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デブにゃーちゃん
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第209話 闇夜の狙撃戦

公開日時: 2024年7月12日(金) 10:38
更新日時: 2024年7月14日(日) 21:34
文字数:3,590


 アンペラトリス通り、総合ビル内。



「レオ、支援は頼んだわよ?」


「分かっている、きちんとするさ」


 MPiーAKー74Nの銃身を、窓から手前にある棚上に敷かれている土嚢に置いた、ミアは呟く。


 対するレオも、キャンプ用の簡易ベッドに伏せながら、H&K、G3SG/1を置いていた。



「ふぅ…………」


「はぁ?」


 ミアは、膝だち状態で外を眺め、レオは静かに警戒しつつ遠くを狙う。


 今、二人が構えている銃身には、長いサプレッサー&サーマルスコープが装着されている。



 この二人は、黒い耐熱遮光フィルムを窓から下げ、決して銃身を外には出さずに潜んでいた。



「何か動きはあった?」


「いや、スコープを覗く限り、何もない」


 ヴァンパイアに改造された、二人は夜目が効くのだが、流石に距離が離れ過ぎた敵は狙えない。


 と言うワケで、サーマルスコープを銃に取り付けているのだ。



 これにより、敵に動きがあれば、二人はマークスマンとして活躍する。


 そのため、狙撃支援を行うため、ビル内に潜伏しているワケだ。



「まるで、スターリングラードを思い出すぜ?」


「今は、サンクトペテルブルクでしょ?」


 二人は、記念碑が立つ、スタチュー・オブ・ロア・ブードアン公園を挟んだ向かいのビルを見る。


 この建物も同じく、マルキ通りに面する、茶色い総合ビルであり、現在は連合軍が占拠している。



 レオは、二つある窓枠から左側だけを僅かに開けている。


 ミアは、右隣にある窓の真ん中を開けている。



 そのせいで、室内は冷たい夜風が入ってきていた。



「いや、映画の方な? 因みに、狙撃兵の奴とビルを守る奴の二作品あるからな」


「それより、サイレントスコープの方が、まだ分かり安いわよ…………」


 レオは、サーマルスコープを覗いて、向かいのビル左側にある、尖塔みたいなオブジェを見る。


 そこには、白黒画面に、三角型・鉄格子の飾りが映るだけで、敵スナイパーは存在しない。



 ミアも愚痴りながらも、MPiーAKー74Nのサーマルスコープを覗いて監視を続ける。


 機関部・左側に付いた、マウントプレートに取り付けられた、スコープ内には、敵影は見えない。


 しかし、彼女は敵陣のビルに走っていく、車両が走行する音を聞いた。



「おあっ? ついに始まったようね?」


「RPGとPKが、お出ましだっ!!」


 紫色のNAVYA製・無人バス、EVOは二台で車列を作って、ロキヨーム通りを走ってゆく。


 それを迎撃するべく、敵の兵士たちが慌ただしく、姿を見せ始めた。



 ミアは、それに気づくと、即座に敵狙撃兵を撃ち抜く。



 レオも、敵RPG兵を仕留めて見せた。



「一台、やられたか?」


「仕方ないわ」


 レオとミア達を含む、複数の狙撃兵が、EVO部隊による突撃を支援する。


 だが、敵部隊による機銃掃射やRPG弾による、猛烈な十字砲火で、一台のEVOが吹き飛ぶ。



 そして、大爆笑を起こしながら噴煙と爆炎を夜空に舞い上げた。


 オレンジ色の炎が、世闇を派手に照らす中、もう一台が炎火から現れ、突っ走ってくる。



「お? あれは、やったな…………」


「爆弾魔が突っ込んで行くわ?」


 ロキヨーム通り走るEVOは、総合ビル左側入口に設置された防弾板に衝突する。


 それとともに、大爆発を起こし、入口のバリケードを纏めて吹き飛ばした。



 サーマルスコープから眼を離し、外の様子を眺める、レオ。


 今突っ込んだ無人車両を、自爆テロを行う者に例えつつ、ミアは連合軍兵士を撃つ。



「戦車隊も来たな? 外から攻撃する気だ?」


「感心してないで、指を動かしてよ」


 ガタガタと道路を揺らす、キャタピラ音を聞いた、レオは再びスコープを覗く。


 その間も、ミアは対戦車武器ジャベリンを構えた、敵兵を狙撃する。



 屋上から現れた敵は、胸を撃ち抜かれて、地上へと落下していく。



「ジャベリン持ちが居るわっ! 気をつけてっ!」


「分かっている、機関銃手だって撃たんとなっ!」


 ロキヨーム通りを移動していた、プーマ装甲歩兵戦闘車は停車すると、激しい砲撃を行う。


 レオとミア達は、30ミリ機関砲による射撃で、建物の窓ガラスが割られていくさまを見る。



 もちろん、それだけでなく、サーマルスコープに映る、白い敵の姿を撃ち抜いていく。


 窓ガラスや屋上に、RPGやジャベリンを持った敵兵が現れる度、二人の指は引き金を引く。



「うっ! 戦車が破壊されたぞっ!」


「敵の数が多すぎるのよっ!」


 何処か遠くから、ジャベリンによる上空からの攻撃で、プーマ装甲歩兵戦闘車が爆発する。


 ジャベリンは、真っ直ぐ飛ばず、狙った目標を上昇してから落下して破壊する、対戦車武器だ。



 しかし、正面のビルに、それらしき敵陰はなかった。


 つまり、より遠方から、ジャベリンは放たれた事となる。



「武器を変えるぞっ! もっと、遠くに居るっ!!」


「敵はアチコチに居るのね? 見つけないとっ!!」


 レオは、簡易ベッドから飛び降りると、脇に置いていた、H&K、PSGー1狙撃銃を手に取る。


 ミアも、脇にあった開きっぱなしのケースから、SSG、82狙撃銃を両手で掴む。



 二つとも、ドイツェル・東ドイツェルで製造された、高性能な狙撃銃だ。


 とうぜん、長距離サーマルスコープとサプレッサーは取り付けられている。



「どこだ? ああ…………そこに居たのか? いいよ、隠れなくても」


「あんな場所に居るとはね? どこに潜んでも無駄よっ!」


 レオは、総合ビルの道路を挟んで、向かい側に位置する建物に、スコープを向ける。


 そこに存在するのは、全体的にガラス張り構造である、カントリー・プラザ・BNP・PFビルだ。



 この建物は、楕円形型ビルと、他に四角いビルが二つある。



 当の楕円形型ビル屋上には、多数敵兵が存在しており、ジャベリンを構える姿が視認できた。



 ミアは、総合ビル&サン・ミッシェル大聖堂の間にある、学習センター・ビルに注意を向ける。


 その屋上には、SPGー9無反動砲を用意する敵部隊が見える。



「撃たせるワケには…………いかないなぁ?」


「砲弾にーー当てるっ! 当たったっ!」


 PSGー1により狙撃で、ジャベリン射手を、レオは一人射殺する。


 継いで、素早く精桿《ボルト》を動かし、また次の射手を仕留める。



 SSG、82のスコープ内に描かれた、十字を見ながら、ミアは呟く。


 そして、無反動砲から離れた位置にある小さな箱に十字照準を合わせて、指を動かした。



 それから直ぐ、学習センタービルの上で、大爆発が起きた。



「よし、敵の砲撃部隊は片付けた、と思ってても他にも存在するな?」


「お次は、迫撃砲だわっ!! 」


 楕円形型ビルより、手前にある四角いビルに、フランシュ製、120ミリ迫撃砲RT部隊が現れた。



「一発も撃たせるかっ!」


「やるわよっ!!」


 レオとミア達は、引き金を静かに引いて、迫撃砲の射手と砲弾装填手を仕留める。


 これだけ敵を倒しても、未だ兵力は減っていないらしく、正面の総合ビルから機銃掃射を受ける。



「うわ、撃って来たな…………だが、冷静にしていれば?」


「問題ないわ、私達の居場所はバレてないし?」


 敵部隊の狙撃兵や機関銃手などが、激しい銃撃で応戦してくる。


 しかも、中にはRPG兵が存在しており、レオとミア達が潜むビルに弾頭を発射してくる。


 それを受けても、二人は焦る事なく冷静に狙撃を続けて、機関銃手を倒していく。



「狙撃兵は見えないわね? 私達と同じく遮光カーテンや耐熱フィルムを使っている見たいね?」


「だが、何時までも撃たせるかってんだよっ! あっ?」


 PK汎用機関銃、ミニミ分隊支援火器、M60汎用機関銃と言った武器は、発射音で位置が分かる。


 さらに、危険を覚悟の上で、窓から身を晒した、機関銃手が機銃掃射を行っている。



 それ故、機銃掃射を行う射手の位置は特定できても、巧妙に姿を隠す狙撃手までは分からない。



 ミアとレオ達は、それでも見える敵だけでも狙撃しようと、スコープを覗き続ける。



 しかし、何処か遠くの方からヘリコプターが、プロペラを回転させる音が聞こえてくる。



 それは、二機のSA316アルエットIIIだった。



 この機体が、上空に現れたかと思った瞬間、ミサイルを発射してきた。



「うわあっ! 今のは焦ったぜ」


「きゃああっ!! ビビった?」


 激しい振動により揺れる室内で、レオとミア達は慌てたが直ぐに冷静さを取り戻す。


 続いて、再度二発のSS.11ミサイルによる攻撃が、またもや建物全体を揺らす。



「また、来たぞ? 今度は機銃掃射だっ!」

 

「頭を下げなきゃっ!!」


 レオは急いで、簡易ベッドから転がり落ち、ミアも即座に床に伏せた。


 その間、MD520、MGヘリが飛来し、ガンポッドから機銃掃射させる。


 こうして、ガチャシャッと、窓ガラスが割れる凄まじい音と、途切れない射撃音が鳴り響いた。



「今のは、ヤバかった、また何か来るかもな?」


「敵にも、航空機があるのね?」


 レオとミア達は、銃撃から何とか身を守り、急いで狙撃銃を手に取る。


 しかし、二人は耐熱遮光カーテンが破られたため、敵狙撃手を警戒して窓には近寄らなかった。

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