アンペラトリス通り、総合ビル内。
「レオ、支援は頼んだわよ?」
「分かっている、きちんとするさ」
MPiーAKー74Nの銃身を、窓から手前にある棚上に敷かれている土嚢に置いた、ミアは呟く。
対するレオも、キャンプ用の簡易ベッドに伏せながら、H&K、G3SG/1を置いていた。
「ふぅ…………」
「はぁ?」
ミアは、膝だち状態で外を眺め、レオは静かに警戒しつつ遠くを狙う。
今、二人が構えている銃身には、長いサプレッサー&サーマルスコープが装着されている。
この二人は、黒い耐熱遮光フィルムを窓から下げ、決して銃身を外には出さずに潜んでいた。
「何か動きはあった?」
「いや、スコープを覗く限り、何もない」
ヴァンパイアに改造された、二人は夜目が効くのだが、流石に距離が離れ過ぎた敵は狙えない。
と言うワケで、サーマルスコープを銃に取り付けているのだ。
これにより、敵に動きがあれば、二人はマークスマンとして活躍する。
そのため、狙撃支援を行うため、ビル内に潜伏しているワケだ。
「まるで、スターリングラードを思い出すぜ?」
「今は、サンクトペテルブルクでしょ?」
二人は、記念碑が立つ、スタチュー・オブ・ロア・ブードアン公園を挟んだ向かいのビルを見る。
この建物も同じく、マルキ通りに面する、茶色い総合ビルであり、現在は連合軍が占拠している。
レオは、二つある窓枠から左側だけを僅かに開けている。
ミアは、右隣にある窓の真ん中を開けている。
そのせいで、室内は冷たい夜風が入ってきていた。
「いや、映画の方な? 因みに、狙撃兵の奴とビルを守る奴の二作品あるからな」
「それより、サイレントスコープの方が、まだ分かり安いわよ…………」
レオは、サーマルスコープを覗いて、向かいのビル左側にある、尖塔みたいなオブジェを見る。
そこには、白黒画面に、三角型・鉄格子の飾りが映るだけで、敵スナイパーは存在しない。
ミアも愚痴りながらも、MPiーAKー74Nのサーマルスコープを覗いて監視を続ける。
機関部・左側に付いた、マウントプレートに取り付けられた、スコープ内には、敵影は見えない。
しかし、彼女は敵陣のビルに走っていく、車両が走行する音を聞いた。
「おあっ? ついに始まったようね?」
「RPGとPKが、お出ましだっ!!」
紫色のNAVYA製・無人バス、EVOは二台で車列を作って、ロキヨーム通りを走ってゆく。
それを迎撃するべく、敵の兵士たちが慌ただしく、姿を見せ始めた。
ミアは、それに気づくと、即座に敵狙撃兵を撃ち抜く。
レオも、敵RPG兵を仕留めて見せた。
「一台、やられたか?」
「仕方ないわ」
レオとミア達を含む、複数の狙撃兵が、EVO部隊による突撃を支援する。
だが、敵部隊による機銃掃射やRPG弾による、猛烈な十字砲火で、一台のEVOが吹き飛ぶ。
そして、大爆笑を起こしながら噴煙と爆炎を夜空に舞い上げた。
オレンジ色の炎が、世闇を派手に照らす中、もう一台が炎火から現れ、突っ走ってくる。
「お? あれは、やったな…………」
「爆弾魔が突っ込んで行くわ?」
ロキヨーム通り走るEVOは、総合ビル左側入口に設置された防弾板に衝突する。
それとともに、大爆発を起こし、入口のバリケードを纏めて吹き飛ばした。
サーマルスコープから眼を離し、外の様子を眺める、レオ。
今突っ込んだ無人車両を、自爆テロを行う者に例えつつ、ミアは連合軍兵士を撃つ。
「戦車隊も来たな? 外から攻撃する気だ?」
「感心してないで、指を動かしてよ」
ガタガタと道路を揺らす、キャタピラ音を聞いた、レオは再びスコープを覗く。
その間も、ミアは対戦車武器ジャベリンを構えた、敵兵を狙撃する。
屋上から現れた敵は、胸を撃ち抜かれて、地上へと落下していく。
「ジャベリン持ちが居るわっ! 気をつけてっ!」
「分かっている、機関銃手だって撃たんとなっ!」
ロキヨーム通りを移動していた、プーマ装甲歩兵戦闘車は停車すると、激しい砲撃を行う。
レオとミア達は、30ミリ機関砲による射撃で、建物の窓ガラスが割られていくさまを見る。
もちろん、それだけでなく、サーマルスコープに映る、白い敵の姿を撃ち抜いていく。
窓ガラスや屋上に、RPGやジャベリンを持った敵兵が現れる度、二人の指は引き金を引く。
「うっ! 戦車が破壊されたぞっ!」
「敵の数が多すぎるのよっ!」
何処か遠くから、ジャベリンによる上空からの攻撃で、プーマ装甲歩兵戦闘車が爆発する。
ジャベリンは、真っ直ぐ飛ばず、狙った目標を上昇してから落下して破壊する、対戦車武器だ。
しかし、正面のビルに、それらしき敵陰はなかった。
つまり、より遠方から、ジャベリンは放たれた事となる。
「武器を変えるぞっ! もっと、遠くに居るっ!!」
「敵はアチコチに居るのね? 見つけないとっ!!」
レオは、簡易ベッドから飛び降りると、脇に置いていた、H&K、PSGー1狙撃銃を手に取る。
ミアも、脇にあった開きっぱなしのケースから、SSG、82狙撃銃を両手で掴む。
二つとも、ドイツェル・東ドイツェルで製造された、高性能な狙撃銃だ。
とうぜん、長距離サーマルスコープとサプレッサーは取り付けられている。
「どこだ? ああ…………そこに居たのか? いいよ、隠れなくても」
「あんな場所に居るとはね? どこに潜んでも無駄よっ!」
レオは、総合ビルの道路を挟んで、向かい側に位置する建物に、スコープを向ける。
そこに存在するのは、全体的にガラス張り構造である、カントリー・プラザ・BNP・PFビルだ。
この建物は、楕円形型ビルと、他に四角いビルが二つある。
当の楕円形型ビル屋上には、多数敵兵が存在しており、ジャベリンを構える姿が視認できた。
ミアは、総合ビル&サン・ミッシェル大聖堂の間にある、学習センター・ビルに注意を向ける。
その屋上には、SPGー9無反動砲を用意する敵部隊が見える。
「撃たせるワケには…………いかないなぁ?」
「砲弾にーー当てるっ! 当たったっ!」
PSGー1により狙撃で、ジャベリン射手を、レオは一人射殺する。
継いで、素早く精桿《ボルト》を動かし、また次の射手を仕留める。
SSG、82のスコープ内に描かれた、十字を見ながら、ミアは呟く。
そして、無反動砲から離れた位置にある小さな箱に十字照準を合わせて、指を動かした。
それから直ぐ、学習センタービルの上で、大爆発が起きた。
「よし、敵の砲撃部隊は片付けた、と思ってても他にも存在するな?」
「お次は、迫撃砲だわっ!! 」
楕円形型ビルより、手前にある四角いビルに、フランシュ製、120ミリ迫撃砲RT部隊が現れた。
「一発も撃たせるかっ!」
「やるわよっ!!」
レオとミア達は、引き金を静かに引いて、迫撃砲の射手と砲弾装填手を仕留める。
これだけ敵を倒しても、未だ兵力は減っていないらしく、正面の総合ビルから機銃掃射を受ける。
「うわ、撃って来たな…………だが、冷静にしていれば?」
「問題ないわ、私達の居場所はバレてないし?」
敵部隊の狙撃兵や機関銃手などが、激しい銃撃で応戦してくる。
しかも、中にはRPG兵が存在しており、レオとミア達が潜むビルに弾頭を発射してくる。
それを受けても、二人は焦る事なく冷静に狙撃を続けて、機関銃手を倒していく。
「狙撃兵は見えないわね? 私達と同じく遮光カーテンや耐熱フィルムを使っている見たいね?」
「だが、何時までも撃たせるかってんだよっ! あっ?」
PK汎用機関銃、ミニミ分隊支援火器、M60汎用機関銃と言った武器は、発射音で位置が分かる。
さらに、危険を覚悟の上で、窓から身を晒した、機関銃手が機銃掃射を行っている。
それ故、機銃掃射を行う射手の位置は特定できても、巧妙に姿を隠す狙撃手までは分からない。
ミアとレオ達は、それでも見える敵だけでも狙撃しようと、スコープを覗き続ける。
しかし、何処か遠くの方からヘリコプターが、プロペラを回転させる音が聞こえてくる。
それは、二機のSA316アルエットIIIだった。
この機体が、上空に現れたかと思った瞬間、ミサイルを発射してきた。
「うわあっ! 今のは焦ったぜ」
「きゃああっ!! ビビった?」
激しい振動により揺れる室内で、レオとミア達は慌てたが直ぐに冷静さを取り戻す。
続いて、再度二発のSS.11ミサイルによる攻撃が、またもや建物全体を揺らす。
「また、来たぞ? 今度は機銃掃射だっ!」
「頭を下げなきゃっ!!」
レオは急いで、簡易ベッドから転がり落ち、ミアも即座に床に伏せた。
その間、MD520、MGヘリが飛来し、ガンポッドから機銃掃射させる。
こうして、ガチャシャッと、窓ガラスが割れる凄まじい音と、途切れない射撃音が鳴り響いた。
「今のは、ヤバかった、また何か来るかもな?」
「敵にも、航空機があるのね?」
レオとミア達は、銃撃から何とか身を守り、急いで狙撃銃を手に取る。
しかし、二人は耐熱遮光カーテンが破られたため、敵狙撃手を警戒して窓には近寄らなかった。
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