【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第118話 レジスタンスの拠点まで帰らないと…………

公開日時: 2024年7月13日(土) 11:31
文字数:3,182


「早く退いてよ…………」


「あっ! 申し訳ないっ!?」


 真っ白な顔を、赤らめた魔法使いは、視線を剃らしたまま恥ずかしげに言う。


 ナタンも、頬を紅潮させながら直ぐに彼女の上から退いた。


 と、同時に彼女の手を引っ張り、右側にある検問所裏に隠れる。



「ちょっと、私は?」


「RPGーーーー!?」


 怒鳴るエルフだったが、その時、近くにある建物から帝国軍兵士が、叫ぶ声が聞こえた。



「ポクレン、早く隠れてっ!」


「身を隠せ!!」


 飛んで来るRPGー7の弾頭と白煙が見えると、エルフの名前を魔法使いが叫ぶ。


 その声が響くと同時にナタンは走り、ポクレンと呼ばれたエルフを助けに行く。



 しかし、そこにRPGー7の弾頭が着弾する。



 弾頭は、爆風と灰煙を巻き上げたが、そこに彼等の姿はない。


 ナタンとポクレン達は、左側の検問所裏に隠れており、無事に難を逃れたからだ。



 それから、煙が晴れると。



「危なかったな? また間一髪だったぜ…………」


「あっ? うん…………」


 ナタンは両手を突いて、ポクレンを庇うようにして立っていたが、彼女は顔を紅く染める。


 何故なら、爆風が収まって直ぐ、眼前に彼の顔があったからだ。



「さっさと行かないとな?」


「あっ待ってっ!?」


 しかし、当のナタンは早く味方拠点に帰るべく、走り出して行ってしまう。


 ナタンには、左右に広がるビルの合間から、銃で反撃する帝国軍兵士たちが見えた。



 彼等は、破壊された遠くにあるビルの壁穴や窓から銃撃を耐えていた。



 ナタンは、彼等の動きに注視する。


 レジスタンス側の攻撃が余程激しいからか、帝国軍側は、やや押され気味だった。



「んもう~~?」


「彼は何処の隊の所属かしら?」


 走って行ってしまった、ナタンの後ろ姿を見ていた、ポクレンと魔法使い達。



「ウィッチカ、行くわよ? 彼を追うわっ!」


「あっ! ポクレンったら…………」


 路上を凄まじい勢いで走り続ける、ナタンの後を追うべく、ポクレンも駆け出す。


 それに、ウィッチカと呼ばれた魔法使いも、それに続いていく。



 彼女達も道路を走り抜け、破壊されたビルの壁穴を目指す。


 何故なら、そこで彼が身を隠して、レジスタンス側の様子を伺っていたからだ。



「レジスタンス側は?」


 ナタンは、レジスタンス側を注視する。



『…………さっきは勢いで助けちゃったけど、本来は敵なんだよな…………』


 かなり遠くから、レジスタンス側は、こちらを攻撃してきていた。


 これ以上近づけば、姿を補足されて撃たれるだろうと、ナタンは考える。


 連合軍から、供与された重火器を、レジスタンス側は使用しているらしい。



 時おり激しい砲撃が飛んで来る。



「敵は何処から…………ん?」


 ナタンは、RPGー7の砲撃で破壊された遠くの道路に目を向ける。


 そこに開いた洞窟の入口に似た穴は、きっと地下道に続いているであろう。



 また、中に侵入する事で、彼はレジスタンス側の攻撃を掻い潜る事が可能だと考えた。



「よっし!」


 穴に向かって駆け出した、ナタンは無数の機銃弾が、自身を狙うにも構わず走る。


 穴の近くまで来ると、彼は高く飛び上がり、地下道に入ると、床に降り立った。



 先程まで、己を殺すべく放たれていた数々の銃撃と砲撃だが。


 それ等が、聞こえるのは頭上にある穴からだけだ。



 彼は、見上げていた穴から、暗い地下道の奥へと目を向ける。


 そこから、レジスタンス側の方向に、一人黙々と進んだ。



「ん?」


 砲撃で揺れる黄土色をした、地下道の天井からは、土埃らしき物が崩れ落ちる。


 それ等を気にする暇なく、ナタンは奥に向かっていくのだが。



 前方から、微かに物音がする事に彼は気づいた。



「レジスタンス達は、地下でも…………」


 レジスタンス側の部隊は、地下道でも激しい戦闘を行っているらしい。


 時おり、大きな金属音や銃撃音が、前方から聞こえてくるからだ。


 その正体を確かめるべく、ゆっくりと暗闇に身を溶け込ませて、ナタンは歩く。



「残り数人だっ! 殲滅しろっ!!」


「了解、側面に回り込みます」


 ナタンが広い部屋に出ると、そこは何処かの地下室らしく、右側には、三つも機械が並ぶ。


 左側には、彼方此方《あちらこちら》に段ボール箱や工具箱が山積みにされていた。



 機械側は、帝国軍部隊が存在しており、山積みの箱には、レジスタンス達が身を隠していた。

 

 制服姿の帝国軍下士官が命令すると、帝国軍兵士が迂回して、攻撃を敢行する。



「レジスタンスが押されているな?」


 どうやら、帝国軍の別動隊が、奇襲を仕掛けるべく、地下道を密かに通っていたらしい。


 連中は、レジスタンス側の背後を突こうと、突入していたんだろうと、ナタンは考える。



「撃ち返せっ!!」


「おおっ! まだまだやれるぜっ!」


 レジスタンス達も、銃弾をバラ蒔いて、帝国軍を迎え撃とうと必死で応戦する。


 しかし、彼等の奮闘空しく、敵部隊に徐々に押されていく。



 相手の帝国軍兵士は、全員がトーテン・シェーデル・ゾルダートだ。



 彼等は、多少の銃弾を物ともしない。



「うぎゃああぁぁっ!!」


「一人、殺られたっ! きゃあっ!」


 機械右側から、素早く回り込んだ、二名の帝国軍兵士たち。


 彼等は、何発か銃弾を喰らうも、銃撃しながら素早く、箱山の右側面に回り込む。



 そこで、胸に何発かの銃弾を撃ち込んで、レジスタンス員を一人殺害する。


 さらに、味方が殺られた事に動揺した、一人の女性レジスタンス員が叫ぶ。


 その隙に、近寄ってきた、兵士が銃床で、彼女の頬を思いっきり殴った。



 それにより、被っていた赤いベレー帽が宙を舞った。

 


「肉盾になって貰うぞ」


「殲滅するっ!」

 

 彼女を盾にした、帝国軍兵士は、慌てふためく、レジスタンス達に銃撃を加える。


 もう一人の兵士も、残り僅かなレジスタンス達に銃弾を放つ。



「隠れろっ!」


「クソがっ!」


「うがああっ!!」


 リーダーらしき、緑ベレーを被った、レジスタンス員が叫ぶ。


 部下のレジスタンス員たちが、彼に続いて、奥にある木箱が積まれた山へと逃げるが。



 一番後ろのレジスタンス員が撃たれてしまう。



「殺られたかっ? ぎゃっ!」


「うわっ!」


「これで全員片付いたな…………」


「残りは? まだ居るかも知れないな」


 頭に何も被らず、黒髪を靡《なび》かせる軽装な鎧に身を包んだ剣士が素早く動いた。


 彼が、ラウンドシールドを突き出して、レジスタンス・リーダーの顔を叩く。


 次いで、怯んだ瞬間に、ショートソードを胸に深く突き刺した。



 その後ろから、レジスタンス員を狙って、サーベルによる鋭利な刃が一振りされる。


 すると、一瞬の内に、胴から離れた首が宙を舞う。



 サーベルを優雅に振るって、刃に付いた血を払う男は、無表情だった。


 黒いカウボーイハットのような帽子を被る、茶色い長髪の銃士。



 彼は、中世の人間みたいな黒いチュニックを着ていた。



「あっという間に殲滅か?」


 瞬く間に制圧された、レジスタンス達を見て、唖然とする、ナタン。



 そして、一人生き残った女性レジスタンス員。



 彼女は、二名の帝国軍兵士に両側から腕を捕まれて連行される。


 赤みがかった茶髪ロングパーマの彼女は、黒い瞳を正面に立つ、帝国軍下士官に向ける。



 その目には、強い憎しみと決意に満ちていた。



「生き残ったな? テロリスト」


「黙れっ! お前らの好きにさせるかっ!?」


 女性レジスタンス員は、叫びながら大きく開いた口を閉じようとした。


 その時、帝国軍下士官は、彼女の口に拳を突っ込んだ。



 もがもがと唇を動かしながら、彼女は直も暴れようとするが。


 両側を、帝国軍兵士に挟まれているので、彼女は身動き一つ取れなかった。

 


「中々威勢が良いな? よし、一人捕虜を確保だ、喜べ…………今日の午後から貴様も、我が隊の仲間入りだっ! 奥歯の毒も取ってやるよ? クハハハッ!!」


 ニヤリと犬歯を覗かせながら嗤う、帝国軍下士官だったが。


 彼は、口に右手を突っ込んでいる事から、左手で軍服のポケットから注射針を取り出す。



 そして、気泡が混じった薬液を出すと、女性レジスタンス員の首筋に一気に針を突き刺した。

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