オーガー&シュヴァルツ・リッターたちは、弾丸に体を貫かれて倒れてゆく。
「JSDFかっ!」
後ろに振り返った、ジハードは一人の狙撃兵が土嚢に載せた、対物ライフルを撃つ姿を目にした。
「ぐぅっ!?」
「うっお?」
「えっ! いったい、何が起きているの?」
「狙撃だっ! また、援軍が来たんだよっ!」
次々と殺られていく、オーガー&シュヴァルツ・リッターの重突撃部隊だったが。
いきなり、続々と倒れていく、敵の重装甲兵を前に、メルヴェは何が起きたかと思った。
ナタンは、この攻撃が対物ライフルを使った物だと判断した。
「RPGーーーーーー!?」
「うぎゃ~~~~!!」
「ぎゃああっ!」
敵のオーガーが叫び、黒い弾頭が飛んでいくが、残念ながらバフチャーには当たらなかった。
しかし、周囲に展開していた重装甲兵たちを、何人か纏めて吹き飛ばした。
「んっ! 戦車が後退していくっ!」
「逃げる気かしら?」
バフチャーは、RPGー弾に恐れをなしたのか、急に後ろへと下がり始めた。
ナタンとメルヴェは、その様子を注視して、砲撃されるかも知れないと警戒する。
だが、砲弾の代わりに、発煙筒から発煙弾が、いきなり発射された。
それにより、視界は遮られてしまい、ナタン達は混乱する。
「また、煙を使って来やがったか?」
「ナタン、無事?」
「お前ら、気を付けろっ! 来るぞっ!」
「また、別な敵部隊が来るっ!」
ナタンとメルヴェ達は、充満する白煙により、銃撃を止めねば成らなかった。
しかし、そんな中でも、ジハードは気を抜かないで、敵の襲撃に備えていた。
マフディも、煙幕の向こう側から敵部隊が移動してくる様子を探る。
「フンフン、何だか、知っている匂いがするね?」
「どうでも良いから、さっさと行きなさいっ!」
帝国側部隊の声が聞こえて、ナタンとメルヴェ達は驚いた。
「おっ! ナタン、そこに居るなっ! かくれんぼは、お前の負けなっ!」
「そこねっ!」
ナタンの匂いを嗅いだ、カルミーネは即座に、タンフォリオT95を何発か撃った。
次いで、ベーリットがAGー3の銃身下部に装着した、M870マスターキー散弾銃を放つ。
「ぐっ! ぎゃっ!」
ナタンは銃声に反応して、即座に頃がったが、一歩遅かった。
彼の左肩と右足を、一気に放たれた、拳銃弾と散弾が貫いた。
「ナタン、追加の弾をプレゼ…………」
「ぐばああっ!?」
カルミーネは、さらなる弾丸を放とうとしたが、それは後ろから聞こえた妙な声に止められた。
振り返った、彼の目には、ベーリットが腹部を撃たれて倒れる姿が映った。
「ベーリット、ベーリットッ!?」
「ぐばっ! 大丈夫よ、手当てじないと不味いけど、じんでないっ! ぶぁっ!」
「ナタン、今のうちに後退するわよっ!」
「カルミーネ、ベーリット、お前ら…………いや、メルヴェッ! 直ぐに行くっ!」
充満する白煙の中、カルミーネは床に倒れた、ベーリットを抱き抱える、
幸いにも、彼女は脇腹に大穴が空いたが、死んではいなかった。
そして、二人が怯んだ隙に、メルヴェは後方へと退散するように、ナタンに伝える。
彼も、その指示に従い、さっさと後ろに下がるべく、すばやく駆け出した。
「ナタン、逃がさないぞっ!」
「カルミーネ、やったのは俺じゃないだろっ!」
カルミーネは、顔を獣化させながら、ナタンの背後へと襲いかかる。
「させねえよっ! 死にやがれっ! この野郎っ!」
「ちっ! 厄介な奴が居るようだっ!」
白煙の中、ナタンに襲いかかる影を見た、ジハードは、ベクターSSー77汎用機関銃を撃った。
それを、カルミーネは背を丸める事で、軽く回避してしまう。
「ナタン、良くもベーリットをっ! そこの黒い奴も死刑にしてやるっ!」
「やれるもんなら、やってみろっ!」
「敵は、こっちにも居るんだぜっ! 坊やっ!」
「それは、私達も同じ…………」
鞘から、アネラスソードを抜き取った、カルミーネは、ナタンに斬りかかる。
その左側からは、ジハードが、ベクターSSー77汎用機関銃を撃ちまくる。
しかし、彼もまた無防備になり、その隙を突かれて、ベーリットがAGー3を一発だけ撃った。
「がっ! くそったれっ! 殺られてたまるかよっ!」
「汚い言葉を吐かないで、血を吐いてよ?」
「おい、おいっ? 先走るなって? ベーリット、大丈夫かっ!!」
「ナタンに、メルヴェも居るわねっ!」
左肩を、ライフル弾に貫かれた、ジハードは反撃として、ベクターSSー77汎用機関銃を撃った。
その乱射を、腹に大穴が開いているにも関わらず、ベーリットはひらりと回避してしまう。
さらに、何処からかレオの声も聞こえたかと思えば、ミアも姿を表す。
もう、白煙は霧散してしまい、また互いの姿が見えるようになった。
「ナタン、今回は逃がしはしないぜっ!」
「まずは無力化するわねっ!」
「くそっ! カルミーネだけでも、邪魔なのにっ!」
「邪魔とは、なんだっ! 邪魔とはっ!」
「邪魔だから、邪魔って言われてるんだよ…………」
レオは、H&KG36Gを撃ちまくり、ミアはサクセニア、セミ・ポンプ散弾銃を連射した。
ナタンは、カルミーネが握るアネラスソードを、AK12で受け止めていた。
しかし、左右から銃撃された彼は後ろに倒れてしまい、窮地に陥った。
だが、右側から誰かの声が聞こえた。
「ぐああああっ!」
「ぎゃあっ!!」
「俺も居るんだぜっ!」
「ク…………面倒な奴ね、殺してやるわ」
「コイツッ!」
とつぜん、マフディが現れたかと思うと、MAT49短機関銃を乱れ撃ちした。
低威力の拳銃弾と言えど、カルミーネやミア達は、全身に弾丸を浴びた事で負傷してしまう。
ドラム缶に身を隠しながら、ジハードも、ベクターSSー77汎用機関銃を連射しまくった。
ベーリットは、ゆらりと床に倒れ込むような感じで伏せた。
レオは、スライディングしながら連続で放たれる機銃弾を回避する。
「ぐっ! 腕がっ!」
「こっちだって、殺るぞっ!」
カルミーネの右腕を、遠方から対物ライフルが吹き飛ばした。
反撃に、レオはH&KG36Gの銃身下部に装着した、H&K79グレネードランチャーを撃つ。
さらに、バフチャーは滑降砲とPKT同軸機銃を撃ってきた。
白煙がなくなった事と、外で味方が戦っている姿を、視認したから再び発砲を始めたのだ。
「ぐわっ!!」
「へっ! 喰らえっ!」
レオの放った榴弾は、天井に当たって瓦礫を崩すだけだった。
対して、バフチャーによる射撃は、土嚢から対物ライフルを撃っていた狙撃手を吹き飛ばす。
「んっ! こっちに来てみればっ!」
「戦いの真っ最中だなっ?」
バフチャーの後方左側から、レギナとソムサックが現れた。
「不味いっ! もう逃げなきゃっ!」
「ナタン、早くこっちに来てっ!」
いつの間にか、メルヴェは遠くに逃げていただけでなく、敵を土嚢裏で待ち構えていた。
彼女は、ミニミ分隊支援火器を途切れなく連射させて、レオ達を牽制する。
「マフディ、ジハード、あんた等も撤退しなっ!」
フランシーヌは、メルヴェの左側から姿を表すと、ストックレスAKを単発連射する。
「分かってるが、コイツらがっ!?」
「中々、渋い連中だぜっ!」
「はんっ! そう簡単には死なないんだよっ!」
「あんたら、早く死に…………?」
ナタンとマフディ達は、銃を撃ちまくりながらも必死で逃げ回る。
そんな二人に向かって、カルミーネは残る左腕の鋭い爪を振るう。
ミアも、サクセニア、セミ・ポンプ散弾銃を撃とうとしたが、胸を対物ライフルに撃ち抜かれた。
「ミアッ! くそが、ごおっ!」
今度は、レオの腹に一発大穴が開いてしまった。
「ソムサック、援護するわよっ!」
「ああ、俺は突っ込んで来るっ!」
レギナは、コンパウンド・ボウの玄を引いて、アガニ・ボルトを射った。
放たれた矢は、弧を描いて飛んでいき、対物ライフルを構えていた自衛隊員を爆風に巻き込んだ。
また、ソムサックは突撃していき、ナタン達を追いかけながら両腕から短機関銃を連射した。
しかも、バフチャーが滑降砲と同軸機銃を、メルヴェとフランシーヌ達に撃ってきた。
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