「あっ! …………その前に私はシャワーを浴びたいです」
「じゃあ? 一緒に浴びて、御風呂に浸かろうか」
勤務中に、身体に纏わりついた汗と仕事の疲れを癒したいと思った、フィーン。
彼女が、シャワーを浴びたいと言うと、一緒に浴槽に浸かりたいと、フロストは言い出す。
「その方が身体も洗えるし、恋人同士の抱擁もシャワーを浴びながら出来るしさ」
「ご冗談をっ!?」
浴室での愛し合う物同士の情事を提案する、フロスト。
しかし、フィーンは言葉を詰まらせつつ、恥ずかしそうに顔を、ほんのりと赤らめて答える。
「ふふ…………分かってるさ、さあ行こう」
「はい、御供させて頂きます」
脱衣所へ向かう前に、フロストは帝国警察に支給される黒い制服を脱ぐ。
そして、彼は眼前に立つ小柄な少女のようであり、かつ大人の麗しき女性みたいな美女を見た。
もちろん、それは柔肌のふっくらとした美麗なフィーンの身体であり、彼は見惚れてしまう。
『…………美しい…………この少女の様な麗しい容姿に…………大人の女性を想わせる豊満な身体つき…………』
フロストが見つめる中、フィーンは黙々を浴室まで歩いて行った。
その後、かなり時間が立った。
彼等は、二人ともベッドの上で寝ていたが、ふと、フィーンは時計に目を向けて気づく。
時刻が、既に七時二十分を回り、会食予定時間である、八時までギリギリの時間しか無いことを。
その事を知らない、フロストは疲れているからか、呑気に眠ろうとしていた。
「フロストッ! 時間です!?」
「あっ! しまった…………急いで準備を整えなければっ!?」
もう少しの猶予しか、準備を含めて時間が無い事をフィーンは叫んで伝える。
その大きな声に、深い眠りに落ちる寸前であった、フロスト。
彼は、直ぐに目を開けて、急ぎ脱衣所まで走る。
「急がなきゃ、急がなきゃ、首が飛ぶぞ」
「なら、早くして下さいっ!」
それで、サッとシャワーを浴びると、バスタオルで体を拭いて、手早く制服姿に着替える。
その後を、追うようにやって来た、フィーンも同様に、シャワーを浴びて黒い制服に着替える。
それから、二人一緒に、玄関から飛び出るように外に出て鍵を閉める。
次いで、ドライエ、ティープ178シャプロンに飛び乗ると、即座に発進させる。
「フィーン、ホテルまで急いでくれっ!」
「分かってます、フロスト中尉っ!」
フロスト中尉は、フィーン準尉に、急げと無茶な命令をする。
そして、彼等が乗っている三台の車からなる車列は爆走する。
こうして、高級ホテル、ラディソン・ブル・ロイヤル ・ホテル・ブルッシェンへと向かって行った。
「ギリ、間に合ったか…………」
いよいよ、フロスト達の車列は、ラヴィーネ大佐が泊まる巨大高級宿泊施設。
ラディソン・ブル・ロイヤル ・ホテル・ブルッシェンへと、無事辿り着いた。
「はぁ~~間に合ったかぁ? フィーン、良くやってくれた感謝するよ」
「中尉、礼は嬉しいのですが急いで下さい」
約束の時間までに、辿り着いたことに、安堵の溜め息を吐く、フロスト中尉。
彼は、フィーン準尉に感謝の言葉を述べる。
「もう、ギリギリですよっ!」
そんなフロスト中尉を、運転席からバックミラーで姿を確認する、フィーン準尉。
彼女は、早くホテルへ行って欲しいと急かす。
「ああ、もちろんだよっ! ラヴィーネ大佐を怒らせたら首が飛ぶからね…………職を逐われるだけでなく、物理的にも…………」
「ですから、御早くっ!」
下らない事を喋りつつ、ネクタイを締め直す、フロスト中尉。
彼に対して、今度は後ろに振り向き、再び急ぐように注意する、フィーン準尉。
「そうだね、じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃいませ…………フロスト」
それだけ言うと、ホテルの玄関入口まで歩いて行く、フロスト中尉。
その後ろ姿を、名残惜しそうに、フィーン準尉は見つめていた。
「失礼ですが、身分証の提示を」
フロスト中尉が歩いて、ホテルの正面玄関に向かうと、警備隊員たちが見えた。
二人のH&K、Gー3ライフルを構えた、帝国軍兵士たちが、玄関両脇で警備に当たっている。
それと、初老の白い口髭を生やした、帝国軍士官が一人中央に立っている姿が視認できた。
彼は、身分証の提示を求めてきた。
「これも、規則ですから」
「分かっています」
警備担当の帝国軍士官に、フロスト中尉は、指示された通り、懐から身分証を取りだし提示した。
「はい、これを…………」
「失礼しました、フロスト中尉…………ラディソン・ブル・ロイヤル ・ホテル・ブルッシェンへようこそ…………当ホテルのレストランにて、ラヴィーネ大佐が御待ちして居ります」
フロストが、懐のポケットから取り出した、身分証明書を提示する。
初老の帝国軍士官は、彼をラヴィーネ大佐が待つ、ホテル内にあるレストランへと案内する。
「御待ちして居りました、フロスト様…………ここからは私が御案内をさせて頂きます」
「では、私目はこれにて」
ホテル内へと、初老の帝国軍士官に案内された、フロスト中尉。
彼の前に、今度は白いタキシードと黒いズボンを身につけた、黒髪男性ホテルマンが現れる。
彼が、案内を引き継ぎ、初老の帝国軍士官は下がった。
「それでは、此方に…………」
「はい」
ホテルマンが歩く後に、黙って続いていく、フロスト中尉。
やがて、ホテル内の廊下を歩く、二人が高級レストラン付近にまで来る。
「ここが、当ホテルのレストランになります」
ホテルマンは、別れの挨拶を告げる。
「では、フロスト中尉…………御ゆっくりと」
「そうさせて頂こう」
そう一言述べると、すぐさま、ホテルマンは引き下がる。
それから、フロスト中尉は高級レストランの店内へと、一人歩いて行く。
やがて、彼は淡く青白い光を放つ妖しい店内に入店する。
「…………ここか?」
「御予約のフロスト様ですね、彼方の席へ御案内致します」
フロスト中尉が、一言呟くと、ウェイターが現れた。
彼は、白いシャツと、上に青いベストを着ている。
また、下には黒いスーツズボンを履いた。
彼は、ラヴィーネ大佐の座る席へと案内する。
「来るのが遅いっ! 私は待って居たぞ?」
「申し訳有りません、大佐、レジスタンスの襲撃を警戒して、車列を走行させて居たら、ギリギリの時間に成ってしまいまして…………」
冷たい氷のような眼差しと、微笑を浮かべつつ両腕を組む、ラヴィーネ大佐。
彼女は、遅いと文句を言って遅刻してきた、フロスト中尉を威圧する。
そして、フロストは内心焦りつつ、表情を崩さずに言い訳を言ったのだが。
「真に帝国に忠を誓った臣民成らば、10時前には着いてなければ成るまい、遅刻と言い訳をする者に対して、私が甘く無い事は貴様も良く知っているだろう?」
「はい…………それは勿論…………です」
冷たい微笑を浮かべたまま、自らの腰に手を伸ばした、ラヴィーネ大佐。
彼女は、即座にホルスターから拳銃を抜き取ろうとする。
そして、失態を犯したと思い、もはや命は無いだろうと覚悟した、フロスト中尉であった。
「フフ、済まない? 冗談だ…………遅刻しなかった、お前を罰する訳が無いで有ろう? さぁ早く席に掛けてくれ」
「…………分かりました」
ラヴィーネ大佐は冗談だと言って、先程とは違う柔らかい笑みを浮かべる。
そうして、席に座るように、フロスト中尉を促した。
『…………本気で殺されるかと思った…………』
すると、彼女の機嫌を損ねて、処刑される事は無いだろうと安心した、フロスト中尉は席に座った。
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