【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第68話 遠足は疲れて足が痛くなるよ、だから行きたく無いんだ

公開日時: 2024年7月10日(水) 01:00
更新日時: 2024年7月22日(月) 14:55
文字数:3,388


 赤いパイプの先へと、ウェスト率いる分隊は足音を立てずに歩む。


 彼等は、言葉では軽口を叩くが、決して小学生の遠足や冒険家、気取りでいる訳ではない。



 何が起こるか予想が着かない地下道を、頭をボンヤリとさせては居られないからだ。


 帝国側だけでは無く、レジスタンス側にも、監視カメラ等の警備装置はある。



 それ等は、秘密基地・周辺や地下道の彼方此方《あちらこちら》に設置してある。



 余り設置しすぎると、秘密基地の場所が帝国側に特定される危険性がある。


 さらに、物品不足である故に数が足りず、秘密基地から離れた場所には、余り設置してないのだ。



 その為、監視カメラの隙を突いて、浸入してくる帝国側の隠密行動部隊。


 攻撃的な正格で、情け容赦ない、対テロリスト駆逐戦隊。



 等々と言った、帝国側の精鋭部隊に奇襲される恐れがある。



 地下道内を密かに行動する、レジスタンス部隊には、こう言った、リスクが常に隣り合わせなのだ。



『…………彼等は…………この間のトイレで出会った…………』


 レジスタンス部隊・隊列の最後列を、メルヴェとともに歩く、ナタンだが。


 前を歩く、サビナとリュファスと呼ばれた男女を、彼は見つめた。



 そして、ナタンは先日のトイレまで行かされた、お使いで出会った、二人組だなと思う。



 サビナはH&K・MP5を構えている。



 腰のベージュ色のホルスターにはマカロフPMが容れてある。


 そして、彼女の背中には、大きな灰色リュックが背負われていた。



 一方、リュファスだが。



 高倍率スコープ・二脚・大型サプレッサーなど。。


 これらが備え付けられた、C7CT・マークスマンライフルを、背中に携えていた。



 彼は、マークスマン兼スナイパー担当なのだ。



 両手には、不意に仕掛けられる接近戦に対応するために、短機関銃が握られていた。


 それは、銃床が無い、スターリングMK.7パラだ。



『…………帝国兵が居たら…………いざと成ったら…………あの格好を四人で…………』


 後方に警戒しながら、ナタンは皆に着いていく。

が、彼は帝国側部隊と遭遇した際の行動を考える。


 それは、サビナが背負う灰色リュックの中に納めてある警察隊員が着ている制服のことである。



 同じ衣類を着用して変装することで、敵を欺くと言う手段を用いて、戦闘を出来るだけ避けられる。


 こうして、目立たずに、目的地にまで向かうための作戦であった。



 この作戦を行うため、何時でも変装出来るように、変装チームが組まれている。


 ナタン・メルヴェ・ハルドル・レギナ達が、その変装を行うメンバーである。



 彼等は、衣服の下に、警察隊員が使用する黒い制服を着ていた。



『…………このまま何も起こらなければ良いけど…………』


 地下道を通る、ナタン達は暫くの間、無言で何処までも続く暗闇を歩き続ける。


 そこは、上にある太い赤色のパイプが、天井で曲がっている。



 これに合わせて、道をたどると、今度は広い空間に成っている場所まできた。



 ここは、下水道と防空壕へと続く分かれ道であった。



「うわぁーー! めっちゃ臭いっ!」


「凄く匂うわねぇ…………」


「何度来ても慣れない匂いだ」


「おェ~~? 吐きそうだ」


 広い空間の左側、灰色の四角い柱が六本立てられている場所。


 そこからは、汚水が緩やかに流れる下水道がある。



 その小さな水音が、チョロチョロと静かな広い空間に反響していた。


 当然だが、下水道を流れる汚水からは水音だけが聞こえてくる訳では無い。



 微かな湿気とともに、鼻を突く、耐えがたい悪臭が漂うのだ。


 その匂いを嗅いだ、仲間達は愚痴が止まることなく出てくる。



 レギナ・ティエン・ハルドル・リュファス達は、悪臭の文句を次々と言って、悪態を突くが。


 そんな事を言って、時間を無駄にしている暇は無いので、ハキムが渇を入れた。



「五月蝿いぞっ! お前らが文句を言っている暇は、これっぽっちも無いんだぞ」


 小学生のように騒ぎ、余りに五月蝿い若者達にハキムは叱る。


 そして、彼は当初の目的地を目指すように、彼等に指示を出す。



「大体な…………下水道は通らないで、済むから安心しろ? 俺達が通るのは右の地下防空壕だからな」


「だそうだ? 良いか、ハキムの良う通りだ…………これから先は地下防空壕だ、恐らくは敵が潜んでいる可能性を考慮して、変装役に先頭に立って貰う」


 気が緩んだ若者たちに、ハキムは呆れた顔で、通るのは、右側にある地下防空壕だと伝える。


 その横から、ウェストは変装役であるナタン達に向けて、真剣な顔で命令してきた。



「この先、帝国部隊と遭遇したら、変装役の連中に誤魔化して貰うからな? さあ早く着替えろっ!」


 右側にある、灰色のコンクリート壁に存在する、地下防空壕。


 そこへと繋がる、入口の錆び付いた、赤銅色の大きな鋼鉄製扉を指差すウェスト。



 彼の命令を聞いた、ナタンとメルヴェ達は、衣服を脱ぎだす。



「分かったよ、ウェスト」


「さっさと着替えるわ」 


 ナタンとメルヴェ達は、急いで上着を白いシャツに着替える。


 薄青色のネクタイを首に巻き、帝国警察が採用している黒い制服を着込む。


 また、最後に銀色の髑髏《ドクロ》とドラゴンの飾りが付いた、黒い制帽を被る。



 彼等だけでは無く、帝国警察に変装し終えた、レギナとハルドル達も加わる。



 こうして、四人一緒に地下防空壕にある赤銅色に塗装された、ドアの前まで歩いて行く。



「ナタン、手伝ってくれ」


「ああっ行くぞ、ハルドル」


『ガタッ!』


 重たい地下防空壕にあった、赤銅色のドアを開き、大きな物音を立てる、ナタンとハルドル達。


 二人は開いた、ドアの向こう側を凝視する。



 暗闇の先に敵が潜んで居ないかと銃を向けて警戒するためにだ。


 しかし、幸いな事に、帝国側の部隊は一人も居なかった。



 剥き出しに成った、黄土色の岩壁が見える、地下防空壕内には敵影はない。


 そこは、静かな空気と僅かな湿気が存在するのみだ。



「敵は居ない、クリア」


「先導する」


 モスバーグM500ショットガンの銃口を暗闇に向ける、ハルドル。


 険しい顔をする彼が、地下防空壕内に敵は居ないと一言告げると。



 その左隣に居た、ナタンはMASー1935ーA拳銃を両手で握る。


 それから、先導すると言って地下防空壕内を、一人ゆっくりと歩いて行く。



「敵は居ない…………」


 ナタンの背中には、FAーMASライフルが背負われていた。


 彼は、岩壁に囲まれた防空壕トンネル内の先へと続く、緩やかな曲がり角に進む。



 その見えない部分から、敵が来るかも知れぬと慎重に動く。



「背後に続く…………」


 ナタンの背後からは、慎重にハルドルが動いて、後に続いた。


 彼は、何時でも飛び出してきた敵を撃てるようにと、背中を丸めて、グロック17を両手に構える。



「緊張するな?」


 ハルドルは、ナタンを巻き込み誤射しないようにするためだが。


 無数の鉄球を発射する、モスバーグM500散弾銃を背中に回す。


 そして、二十連発もの9ミリ、パラベラム弾を連射する拳銃グロック17に持ち替えた。



「ハルドル、敵は見あたらない」


「ナタン、こっちも敵影は無しだ」


 モスバーグM500ショットガンは、ナタンと同様に、ハルドルの背中に背負われていた。




「クリア、ふぅ?」


「クリアだ」


 黄土色の岩壁に囲まれた、トンネルである地下防空壕だが。


 その狭い道を先導する、ナタンとハルドル達は、緊張しながら進む。



 彼等を追う、メルヴェとレギナ等を含む、他の仲間達。



 ここにある、黄土色の岩壁は、何処までも長く続いている。



「鉄格子だ?」


 やがて、再び灰色のコンクリート壁が姿を現すまで、ナタン達が永遠に感じるほど時間が掛かった。


 その分厚そうなコンクリート壁には、鉄格子と格子状で作られた、鉄製ドアが備えてある。



「」


 ナタンが、ドアノブに触れると、ガチャガチャと音が鳴るだけで動きはしない。


 彼が良くみると、鍵が掛かっている上に、鎖で鉄格子と格子状の扉が、ぐるぐる巻きにされていた。



 このお陰で、決して、ドアは開きそうに無かった。



「しまったな…………これじゃあ開かないな」


「ショットガンで吹き飛ばせるのはドアノブくらいだし、どうする?」


 鎖で、何重にも、ぐるぐる巻きにされた格子状のドアをナタンは見た。


 彼は、苦い顔をして呟き、ハルドルも、他にドアを開く方法が無いのかと探す。



 だが、付近には他に入口が見当たらない。



 ほかに存在すのは、横に存在する何処に繋がっているか、それが全く分からない道だけだ。


 それは、洞穴みたいに岩壁が露出する地下防空壕のトンネルであった。

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