【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第141話 彼女は帝国に忠誠を誓った

公開日時: 2024年7月13日(土) 12:04
文字数:3,084


「レギナ、グズグズしないでっ!」


「早く行かないと、敵が戦列を立て直しちゃうわよっ!」


「いや、あの…………私は?」


 ベーリットは、バトルライフルであるAGー3を抱えながら。


 ミアは、ステアーGBとステアー・ハーン・ドッペルを両手に。


 それぞれ、真剣な顔で走ってゆく後には、レギナが続く。



「後少し、後少しで塀の外…………?」


「…………いや、ちょっと待って」


「は? 今度は何んなのよ?」


 ベーリットが話した通り、崩された塀に開かれた穴は直ぐそこだ。


 しかし、ミアは上空を見上げると、自分たちに近づく、ヘリの姿が見えた。



 レギナは、それを見ると自分たちが、爆撃や銃撃されるのではないかと驚く。



「アレは…………装備をぶら下げているっ!」


「きっと、補給物資だわ」


 ババババと、プロペラ音を鳴らして現れた、小型ヘリコプターが、三人に見えた。


 白い機体に、青い線が描かれた、無人多目的ヘリ、Kaー37だ。



 それが、三機も黒い箱をぶら下げて、現れたかと思うと、三人の前に物資を投下する。



「箱の中身は…………」


「これなら、相手とまともに戦えるわっ!」


「…………?」


 ミアが蓋を開いて、中身を確かめると、ブルパップ式の自動小銃ステアーAUGが入っていた。


 ベーリットの黒箱には、強力な汎用機関銃ラインメタルMG3と、弾薬箱が入っていた。



 レギナの箱だけは、何故か銃ではなく、妙な装備が入っていた。



「レギナ、貴女のは細菌保存用の装置よ」


「それを着ければ、口から強力な毒粘液を吐く事ができるわ」


「…………これを、私が? …………いや、そんなの出来ない」


 ベーリットとミア達は、親切な感じで、装備の説明をする。


 しかし、それが、細菌を保存する兵器だと聞かされて、レギナは装着する事を嫌がる。



 まだ、彼女には、レジスタンスや人間としての理性が残っている。


 それ故、装置を身につけた瞬間、本能的に自分が変わってしまうような恐怖を感じたのだ



「…………レギナ、貴女は私たちを敵から助けてくれたわ」


「それを身に着ければ、私たちの仲間になれるのよ」


「いや、来ないでっ!!」


 今手にしたばかりの銃を下げつつ、ベーリットとミア達は、レギナへと少しずつ近寄る。


 だが、当のレギナは微笑みを浮かべつつ、ゆらりと近寄る二人に恐怖を抱く。



 そうして、彼女は肩を震わせながら、ゆっくりと下がり始める。



「二人とも、来ないで…………」


 後ろに下がり続けるレギナは、WIST《ヴィス》ー94L拳銃を正面に向ける。


 彼女は、旧知の仲である女アンデッド達が迫りくる事に恐怖を感じてしまう。



 その動く死者たちは、かつては一緒に遊んだ友人や仲間だった。


 しかし、彼女たちは今や生者としての姿を失い、帝国が洗脳した事によって操られていた。



 彼女は、二人に悲しみと憐れみを感じながらも、自分自身を守らんと、引き金を引く覚悟を決めた。



「ごめんなさい、でも私はレジスタンスなの? 生きなければ成らないのよ…………」


 レギナは、WIST《ヴィス》ー94L拳銃を構えたまま、ミアとベーリット達と戦う覚悟を決めた。


 彼女のグリップを握る両手は、微かに震えていたが、それでも決意は揺るがない。



「レギナッ! 私たちは、友だちでしょっ!」


「待って、ミア…………ここは落ち着いて」


 叫ぶ、ミアに対して、ベーリットは冷静に対処しようとする。


 彼女は、汎用機関銃ラインメタルMG3を地面に下ろし、全部の武器を捨てて近づく。



 ベルトからは、ホルスターに入った、コングスベルグコルトを下ろす。


 そして、最後にはブラックサーベルを雪にまみれた地面に置いた。



「…………ベーリット?」


「レギナ、大丈夫、怖くない…………また一緒に遊べるだけ」


 レギナは、近寄ってくるベーリットに対して、WIST《ヴィス》ー94Lの銃口を向ける。


 しかし、ベーリットは彼女が握る拳銃の銃身を、右手で上から押さえた。



 そうして、彼女の両腕をゆっくりと下げさせる。



「ベーリット?」


「どう、私達は撃てないでしょ? それに、ずっと昔から仲間よね」


「今の貴女は帝国の人間、いやアンデッドなの」


 レギナは、右側から近寄ってきた、ベーリットに耳元で囁《ささ》かれる。


 ミアも、左側に回ると同じく呟くように、彼女を悪の道へと誘う。



「ベーリット、ミア? でも帝国は悪だわ…………それに、私は人間だし、ナタンやメルヴェ達は裏切れないっ!」


 右から話しかける、ベーリットの顔はグールであり、とても不気味に、そして優しく見える。


 柔らかそうな、シルバーホワイト色をした、ポニーテールの髪。


 ブルーグレーの瞳、蒼白色をした肌。



 顔には、右側が青紫色の吹き出物と腐敗痕がつく。



 左から微笑みかけつつ話す、ミアも妖艶で危険な雰囲気を醸し出す。



 緩やかに吹く、寒風で靡《なび》く、シュネーカラーのロングヘア。


 シャレイ・ブルーのトロンとした眠たげな瞳、不健康そうなほど、透き通った真っ白い肌。



 等々のパーツを持つ可憐で、あどけない少女みたいな印象だ。



 レギナは、二人に左右から挟まれて、蛇に睨まれた蛙《カエル》のように不思議と身動きが取れない。



「レギナ、逆なの…………帝国は正義、この星の人間は無駄な闘争を続けて、治安を乱しているのよ? プシュッ! プシュ~~~~」


「ナタンやメルヴェ達も、テロ組織や連合軍に騙されているだけ、だから二人も助けてあげましょう? カプッ!」


「…………うぅっ! い、や…………うっ!?」


 ベーリットは甘い毒息を吐いて、ミアも首筋に噛みついて、それぞれ、レギナの動きを封じる。



「それっ! これを、ちゃんと着けてっ!」


「ホラ、良い匂いがするわよ~~♡」


 顔の下半分を覆うガスマスクを、ベーリットは無理やりレギナに装着させる。


 対するミアも、彼女の体に、細菌保存装置を取り付けていく。



 甘い毒ガスを嗅がされたり、首を噛まれた、彼女は気分が良くなり、呆けている。


 その隙に、二人は彼女をバクテリエラー・ゾルダートに変身させてしまった。



『ほぁ~~♡ 何だか良い感じ…………ブシュッ! ブシュゥゥーーーー! うっはぁーーあぁんっ♡』


 グールである、ベーリットの吐いた毒ガスは対人用に開発された特殊フェロモンだ。


 一方、ヴァンパイアであるミアの噛みつきも、マヒ毒や媚毒を相手に注入する事ができる。



 そして、レギナの強制的に装着させられた、細菌保存用装置からも、大量に快楽が与えられる。


 今や、彼女の味覚や嗅覚は改編され、細菌や毒性因子を美味しく感じるようになっている。



 また、ガスマスクから吐息混じりに、彼女の嬉声《きょうせい》が聞こえる。



「ふぅーー! ふぅーー? 今ようやく分かったわ、私は帝国の一員なのねっ!」


 目を瞑り、ガスマスクから供給される細菌類を吸った、レギナは頭が冴え渡るような感覚を感じる。


 そして、自身が完全に、帝国の一員となってしまった事を自覚した。



 もちろん、これはVR空間に存在する彼女の脳内に、大量に洗脳情報が送られたからだが。



「そうよっ! そして、まだ私たちの敵は残っているわっ!」


「向こうでは、この戦いが終わってないのよっ!」


「ええっ!! 二人とも、行きましょうっ!!」


 ベーリット・ミア・レギナ達、この三人は未だ終わらぬ戦闘区域に向かって走ってゆく。


 その途上、ミアとベーリット達は、レギナを説得するために下ろした、武器を拾いつつ走った。



 どうやら、敵が逃げた先は、深い森林の中らしく、白い雪を被った木が何処までも続いていた。



 森の奥では、連続する銃声が彼方此方《あちらこちら》から轟く。



 そして、高い樹木によって、上空から敵が見えなくなり、弾薬と燃料が少なくなったのか。


 三機のヘリコプター部隊は、帰投したらしく、姿が見えなくなっていた。

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