【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第104話 レジスタンスの午後

公開日時: 2024年7月10日(水) 09:46
更新日時: 2024年7月13日(土) 10:33
文字数:3,017


「これも見てよっ!!」


 ハーミアンは、右足を上げると、特別製ブーツ幾つか開けられた、縦に細長い穴から鉤爪を出す。



「帝国のワーウルフ見たいでしょう? このワーキャット姿は?」


「確かに、ワーウルフって言うか? ワータイガー? …………いや、ワーキャットの姿だね」


「凄いわ、私もそう言うのが欲しいわ~~」


 ハーミアンの爪を出し入れする姿に、目を丸くした、ナタンとメルヴェ達。


 二人は、改造手術を受けて獣人兵士になった、彼女をまじまじと見つめる。



「今回改造を受けたのは、私とウェストと他の数名だけね、他のレジスタンス員は正規の訓練を受けてないからダメ見たいよ」


「そうか、残念だなぁ」


「本当にそうね、これが有れば戦いが楽になるのに」


 帝国の兵士や警察官と、互角に戦えるほど、身体が強化される改造手術だが。


 それを、今回は受けられないと知った、ナタンとメルヴェ達はがっかりするが。



「戦いが有利に進んだら、連合軍は更なる物資の補給に資材を持って来るから、その時は二人も何かしらの改造を受けられるわよ」


「だと良いな、僕もワータイガーとか欲しいな」


「ブリーフィングでも、そう言っていたけど、いよいよ本格的な戦争ね」


 ハーミアンは、羨ましそうに自分の姿を眺める二人を説得する。


 それを聞いても、ナタンは無いものねだりを言って愚痴る。



 一方、メルヴェは例え物資がアフレアから沢山届いたとしてもだ。


 結局、それは戦いが激しさを増し、それだけの物資を消費するだけだと悟る。


 

「ええ…………明日が決戦の日よ、おっと射撃室に行くんだった、二人とも、また後でねっ!」


 大事な用事を思いだしたらしい、ハーミアンは姿勢を低くする。


 それから、彼女は射撃室に向かって、ピューマのように素早く走って言ってしまった。



「あっ! 凄い速さだっ!」


「行ってしまったわね?」


 駆け出した、ハーミアンの余りの速さに驚く、ナタンとメルヴェ達であったが。


 二人は、直ぐに落ち着きを取り戻すと、帰り道を歩きだし、何も喋らずに部屋へと入った。


 こうして、二人はベッドにヘタり込んで座り、ため息を静かに吐いた。



「あんな凄い改造を受けられるとはね?」


「噂の帝国から奪った技術ね、あっちが狼なら、こっちは豹って訳ね」


 二人は、ベッドに座ったまま、さっきのハーミアンに関する話をする。


 ナタンは、まだ改造を受けたいと思い、メルヴェは、帝国軍と連合軍の違いを考察する。



「でも…………明日はいよいよ帝国に強烈な打撃を与えるんだ」


「その後、連合軍が本当に来るのかどうかは分からないけれどね?」


 アフレア方面から北進する大規模な反撃を信じる、ナタンだが。


 連合軍が反撃するために、どの地域を選定しているか、全く不明な現状を、メルヴェは指摘する。

 


「きっと来るさ、このハンザまで」


「だと良いけど…………」


 儚い希望だとしても、それを決して捨てることのない、ナタン。


 そんな彼に対して、メルヴェも半ば呆れつつも、同様に連合軍を信じようかと言う気持ちになる。



 その後、何気なしに腰に下げた、ホルスターに、彼女は手を伸ばした。


 そこから、銃身フレームの一部が銀色で、グリップと銃身が黒い拳銃を取り出す。



「これは、オモチャ見たいだけど、本物…………」


「そうだよ本物さ、この戦い自体が遊びなら良かったのに」


 安価で、高性能なティルク製拳銃である、サルマスキリンC2000。


 それを強く握り締めて、銃口上部の照準を見つめる、メルヴェ。



 彼女は、何もかも全てが夢であり、今手に握る武器も、プラスチックの玩具ならばと語る。


 それは、ナタンも同じ気持ちであり、戦争が今も続く悪夢ならよかった。



 また、もし本当に脳が見せている幻影ならば、目が覚めて、全てが夢の中に消えて欲しいと願う。



「ねぇ? ナタン…………何時もの事だけど昔話をしましょう」


「あぁ良いよ、それを君が望むなら」


 白く光る拳銃を眺めていた、メルヴェは両手に握る、サルマスキリンC2000を見ながら呟く。


 すると、ナタンも彼女の方を向きながら、小さな声とともに頷いた。



 過去を思い出した、二人の記憶の中。



 そこには、仲が良かった何時もの八人が、今でも、何時までも遊んでいた。



「ナタン、早く来いってっ!」


「まてや、レオーー!?」


 元気に走り回る、レオとナタン達であるが、その後ろを、女子二人が追い掛ける。



「待ってよぉーー! 二人ともぉぉーー!」


「待ちなさいってばぁ~~~~!!」


 はぁはぁと息を切らして、二人の後を追う、ミアとメルヴェ達も、何故か必死で走る。



 そんな彼女達の後ろから、追っ手として、鬼役である四人が距離を縮めてくる。


 それは、キーラン・レギナ・カルミーネ・ベーリットであり、彼等が後を追いかけてきたのだ。



「お前は遅いなぁーー?」


「お前が早すぎるんだよ」


 レオとナタン達は、街中にある路地裏から、バケツ型のゴミ箱を足台にした。


 そして、忍者みたいに素早く、建物の赤い屋根に向かって、勢いよく飛び乗った。



「早く、手を伸ばして頂戴っ!?」


「もう直ぐそこまで奴等は来てる!」


 必死の形相で、バケツ型ゴミ箱に登ろうとする、ミアとメルヴェ達。


 そんな二人に、他の四人が映画に登場するような走るゾンビみたいに刻一刻と迫る。


 また、バケツ型ゴミ箱に乗っかり、ミアが細く小さな手を伸ばすと、ナタンは彼女を掴もうとする。



「ミアッ! 今助けるぜ…………?」


「おいっ! 手を伸ばすのも今日は遅いぜ、ナタン」


 しかし、ナタンより先に、横からミアの手をレオが掴んで、それから直ぐに引き上げる。



「ちっ! 先を越されたか…………」


「ナタン、早くしろってばっ!?」


 折角、ヒーローとしての活躍を奪われた、ナタンは愚痴るが。


 そんな彼を下から見上げた、メルヴェは怒鳴るように叫んで急かす。



「うるせぇーー!? メスゴリラは自分で上がれるだろっ!!」


「良いから早くしないと、あとで頭に、私の鋭いパンチのクリティカルヒットをっ!」


 ナタンは何時何処でも、メルヴェから頭や背中を殴られている。


 彼は、少し意地悪をしてやろうと、ニヤつきながら地面を見下ろすが。



 そんな彼を、彼女は付け上がらせたまま放っておく程、お人好しではない。


 彼女は、拳を後ろに引いて、必殺パンチを喰らわすポーズを構える。



「分かったよっ! ほら掴めってぇーーのっ!」


「そう、有り難うっ♡」


 メルヴェの右手を掴み両手で引き上げた、ナタンに、彼女は礼を言って微笑むが。



「メスゴリラに言われたって、嬉しくねぇやい」


「何か言ったのかしら?」


 ボソリと呟いた、ナタンの言葉を聞き逃さなかった、メルヴェ。


 彼女は、目を細めて、微笑んだまま拳を素早く後ろに引いた。



「いや、何でも有りませんよっ!」


「それなら良いけどね、それならね…………」


 拳の射程距離内に、入ってしまった事に戦慄する、ナタン。


 彼は、上手く誤魔化すのだが、メルヴェは怪しげに彼を睨む。



「それより、下のゴミ箱は蹴ったよな?」


「蹴ったわよ、ほら?」


 話を剃らそうとした、ナタンは、ゴミ箱の事を、メルヴェに聞いた。


 すると、彼女は屋根の下へと顔を向けたことに合わせて、彼も地面を覗く。



「あっ! 彼奴等は上にいるぞ」


「ゴミ箱を足台にしたのねっ!」


「なんて、すばしっこい奴等だ」


「待ってなさい、今追いかけるわ」


 すると、二人が高い所へと逃げた事を察した四人は、屋根の方に顔を向ける。


 それで、キーラン・レギナ・カルミーネ・ベーリット達は、上から覗く二人の顔を見つける。



 こうして、うまく逃げた彼等を発見した鬼役たちは叫びだした。

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