「あんたら、敵から捕虜を捕らえたんだな?」
「私達は警察署に戻るから、後始末は頼めるかしら?」
レオとミア達は、ゆっくりと歩き、話し込む、ユライ&テレザ達に声をかける。
そして、捕虜として捕らえた、レジスタンス員の場所まで、通路を歩いて来る。
「帝国警察部隊の方達ね? うーーん? 後始末と言っても、私達も何も言われて無いしぃ~~? 勝手に帰して良いのかしら?」
「ならば諸君、私が許可しよう」
青い唇に、テレザは右手の人差し指を当てて悩む、
その元に、黒いコートを着た、帝国軍士官が現れた。
「レオンハルト二等兵、レイミア二等兵だな…………両名には直ちに警察署まで帰還するようにとの通達が、ラヴィーネ大佐から出ている、さあ行くんだっ!」
「はいっ! 了解しましたっ! レオンハルト二等兵は直ちに帰還します」
「了解ですっ! レイミア二等兵は警察署に帰還しますっ!」
帝国軍士官の命令に従った、レオとミア達は、すぐに退散する。
二人は、施設の外に停車させている、サイドカー、AWOー700にまで急ぎ戻ろうと走る。
「では諸君、事後処理は我々が執り行う」
「了解っ!」
「了解…………」
帝国軍士官の下した命令に対して、テレザとユライ達は素直に従う。
そして、彼等は戦闘結果の報告と事後処理を行った。
所変わり、科学施設の外。
AWOー700の座席に座ると、レオとミア達は、即座に発進させる
そして、フロスト中尉や同僚たちの待つ、警察署を目指す。
「戻ったら、直ぐに報告だな」
「はぁ~? 面倒だわね…………」
AWOー700を運転する、レオは化学物質保管施設の正面入口を出る。
すると、二人は帝国軍・帝国警察部隊の車両と兵士達で埋まる道路を見た。
そして、灰色で鉛のように重たい、曇り空に包まれた街中を走る。
その隣で、ミアは市街に目を向ける。
彼女は、普段は中々見かけない、帝国軍・帝国警察部隊の装甲車両を眺めた。
そこには、黒と灰色の迷彩塗装が施された、兵器がある。
多目的装甲車パンデュール2、戦車支援戦闘車BMPーT等と言った、重車両が並んでいた。
車両を取り囲むように、兵士であるトーテン・シェーデル・ゾルダート達が、周囲を警戒している。
ワーウルフが、鼠色に塗装された、ビルの縁に捕まって、上へと登る。
二名のウィザード達が、両手を前に出して、冷凍魔法を使い始める。
それから、アイスビームで燃上する、帝国警察の黒と青色で塗装された、パトカーを消化する。
そんな光景が、通り過ぎさまに、段々と視界から遠ざかって行く。
この景色を、つまらなさそうに黙って、彼女は見つめていた。
「彼処を曲がれば、署まで後少しだ…………」
「疲れたぁーー! レオ、私はシャワーを浴びて、サッパリしたいから報告は頼んだわね?」
暫く、長い時間を同じような景色が続く、市内を突き進む、レオとミア達。
彼等の周りには、帝国軍が所有する建物が、ズラリと並ぶ。
青・紺・黒・灰・白などと、地味で暗い色合いのマンションや高層ビル。
これら建築物は、まるで死者達が住まう墓場の墓石を思わせた。
「いきなり、そんな事を言われてもなぁ~~?」
「頼むわよっ! お願いっ!」
薄暗い市内を、警察署を目指して、全速力で進む、二人のサイドカーAWOー700。
その座席に座る、ミアから報告役を強引に押し付けられそうになった、レオ。
彼は、困ったという表情を浮かべるが、両手を合わして、彼女は何とか頼み込もうとする。
「それより、俺が負傷者だって事を忘れて無いか? いくら身体的に優れた、ヴァンパイアでも流石に心配位はして欲しいもんだぜ…………」
「ああーー? そうだったわねーー? うーーん? しょうがないか、良いわっ! 今回は私が特別に報告書を作成してあげるっ!!」
しかし、運転のため、正面道路を見続ける、レオは負傷者だから無理だと伝える。
すると、ミアは彼が負傷している事を、スッカリと忘れていた。
彼女は、仕方が無いと言って、報告書の作成作業を引き受けると高らかに宣言する。
「はぁーー? 何時も作成してくれると、俺は助かるんだが…………」
「まーーまあっ! 男の子なんだから、それ位は何時もレディーファーストしなさいっ!」
黒いビルの角を曲がった、AWOー700の上で騒ぐ、レオとミア達。
その先に、鼠色で堅固な要塞みたいな印象を与える建物が見えてきた。
二人が建物に近付くと、車両保管庫のシャッターが上がり、AWOー700は中へと入って行く。
「何がレディーファーストだよっ!」
「うっさいわねーー!」
中へと入る際も、レオとミア達は、ギャアギャアと騒いでいたが。
車両保管庫の中で、ある人物達が待ち構えていたことを確認する。
すると、二人は急に痴話喧嘩を止めて、AWOー700を駐車させる。
そして、直ぐに降りると、ビシッとローマ式敬礼をする。
「レオンハルト二等兵…………任務完了致しました」
「レイミア二等兵、無事帰還しましたっ!」
レオとミア達は、目の前に立つ、複数の護衛を連れた、人物達に帰還を報告する。
二人の言葉を聞いた、人物達は彼等を労う。
「やぁ…………任務完了御苦労さん」
「二人とも、無事で何よりだわ」
二人の正面には、黒いコートを着込んだ、フロスト中尉が居る。
彼が、両手を後ろで組み、微笑みながら立っていた。
その右隣には、小柄な女性が居た。
レガッタ・ブルーの髪を後ろで縛った、ポニーテール。
その髪を、二つに丸めた玉ねぎヘアー、ヘーゼルカラーに輝く瞳。
と言った、風貌の若さと美貌を兼ね備えた、女性副官だが。
服装は、頭には黒い略帽を右斜めにして被り、上には黒い婦人用軍服を着ている。
下には、黒いタイト・スカートを、足には、黒いストッキングを履いている。
靴は、青いボタン・アップブーツを履いていた。
「フロスト中尉、ネージュ準尉…………御二人とも、わざわざ自分達を出迎えてくれなくても?」
「べつに、私達一兵卒何かを構わなくても良いのですが…………」
二人が、護衛を従えてまで、自分達を出迎えたのかが分からない、レオとミア達。
彼等は上官である、二人に対して気を使うが。
「いや、僕も丁度今から自宅に戻るところだったんだから、その次いでに君達の帰りを待っていただけ何だよ」
「そうなの…………それに貴方達は、私の事は、フィーンと呼んでも構わないわって、何時も言ってるでしょう…………流石に教師は辞めたから先生は要らないけどね」
フロスト中尉と、かつての小学校教師である、ネージュ準尉。
彼等は、二人に対して気を使う必要は無いと述べる。
「レオ、ミア…………分かったかしら?」
ネージュ準尉は、自らを、フィーンと呼んでも構わないと言った。
その言葉を聞いた、二人に呆れたような表情と同時に優しげな笑みを、顔に浮かべる。
「フロスト中尉、今から自宅に帰るのですか? それと準尉、もう慣れたのでネージュ準尉の方が言い安いんですよ」
「そうですよ、ネージュ準尉、私達だって直ぐには変えられませんよ? ここ数年は貴女の事をそう呼んでいるんですから」
ネージュ準尉の方が、自分達には言い安いと、レオとミア達は答えたが。
名前を呼ばれる、当の彼女は、元々使用していた名前で呼べと命令を下す。
「でも上官である私の命令なのよっ! 今度からはキチンと私の事はフィーン準尉って呼ぶ様にねっ」
「そう言う訳だから君達は彼女をフィーンと呼ぶんだ…………おっと! もう時間だ…………それじゃあ? レオ、ミア、君たちは報告書を書いたら休んで待機していて良いよ」
フィーン準尉とフロスト中尉たちは、時間だと言って、古い高級車に向かう。
その後、警護任務に着く、警察隊員たちが続く。
「分かりました、フロスト中尉、ネッ! フィーン準尉」
「了解です、フロスト中尉、フィーン準尉…………」
レオとミア達は、別れの挨拶と、ローマ式敬礼を取る。
それで、フロスト中尉とフィーン準尉たちを見送ろうとする。
「明日も任務で忙しく成るかも知れないから休息は充分取るんだよ」
「じゃあねっ! 皆、また明日」
フロスト中尉は、後部座席に座り、フィーン準尉は運転席に座ると、エンジンを始動させた。
そして、黒と白色に塗装された、ドライエ、ティープ178シャプロンを発進させる。
その前後を、漆黒に塗装された、LAPVエノク軽装甲車が護衛として囲む。
これは、テロリストによる奇襲攻撃に対する、防御用対策のために取られた措置である。
そして、三台の車両は、開いた警察署のシャッターを抜けて、外へと走り出して行ってしまった。
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