【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第121話 アジトへの道のり

公開日時: 2024年7月10日(水) 10:50
更新日時: 2024年7月13日(土) 11:35
文字数:3,525


「こっちだ、この下を通れば…………」


「ここか、これを」


 黒人レジスタンス員は、ナタンを案内するが、二人は、地下道の壁に備えられた鉄格子を外す。


 その向こう側を観ると、さらなる別な通路へと繋がっていた。



 剥き出しのパイプが、上下左右にと無数に並び、そこは本当に狭い場所だった。



「この先に行けば広い場所に出る」


「本当かよ…………」


 黒人レジスタンス員に先導させながら、その後を歩く、ナタン。


 パイプだらけの道は狭く、本当に広い場所に続いているかも分からない。



 しかも、この道は、人間が一人だけで進める、ギリギリくらいしか幅しかない。


 オーガーやシュヴァルツ・リッターと言った、帝国の兵士では絶対に通れないだろう。



「あ、出るぞって? 嘘だろ…………」


「おい、テロリスト、お前の脳天をブチ抜いてやろうか? ああっ!?」


「止めないか、こう言った場合の対処法は、即座に殺処分するのが正解だ」


 狭い道から、広い空間に出た黒人レジスタンスを歓迎した者たち。


 それは、サーベルの切っ先を、黒人レジスタンスが動けないように当てる、帝国軍女性兵士。


 そして、AK12の銃口を脇腹に強く押し当てる、帝国軍兵士。



 運が悪い事に、この二名だった。



「タイム、それは止してくれないか、彼は僕が捕らえた獲物なんだから」


「っ!? って、今度は俺たちの味方かよっ!!」


「ならば、連れて行って貰うしかないな」


 狭い道から出たばかりのナタンは、二人を制して黒人レジスタンス員を救う。


 彼の登場に、帝国軍女性兵士と帝国軍兵士たちは一瞬だけ驚いた。



「悪いね、じゃあ先に行くよ」


「ああ、良いぜ?」


「どうぞ、通ってくれたまえ」


 ナタンは、二人の間を、MASー1935の銃口を黒人レジスタンス員に押し当てて進む。


 サーベルを下げた、略帽を被る、金髪ツインテールの帝国軍女性兵士。


 AK12の銃口を、ゆっくりと下ろした、野戦帽を被る、帝国軍兵士。



 彼等から、二人は離れたあと、広い空間を進んでゆく。



「生き残りは居るか?」


「向こうは居ませんでした」


「こちらにも、敗残兵は無しです」


 広い空間は、四角い部屋であり、床は金網が張られている。


 その階下からは、絶え間なく帝国軍兵士たちが歩く、足音が聞こえる。



 帝国軍下士官の命令に答える、兵士達。



「こちらは、二名新兵の材料を確保しました」


「我が分隊も、生きの良い奴を滷確しました」


「うむ、ご苦労であった」


 兵士達が去ると、また別な兵士が、下士官の元に現れる。


 その周りを、ナタンと黒人レジスタンス達は金網越しに見る。



 階下は、下士官を中心にして、無数の帝国兵が歩いている。


 その他には、レジスタンス員が惨殺された、死体が転がっていた。



「離せっ! 離せってんだよっ!」


「ゲボアッ!? はぁ~~はぁ~~? ゴボッ!! ウ…………」


「どれどれ?」


 兵士達から拘束されている、多少の掠り傷しかない、白人男性レジスタンス員は騒いでいる。


 そして、吐血する瀕死状態のアラビ系女性レジスタンス員。


 四名の帝国軍兵士に連行される、この二人を、下士官は眺めた。



「くそ、絶対に暴れて死んでやるっ! お前らの基地でなっ!? そして、アビーの仇を討つんだっ!」


「アビー?」


 暴れて騒ぐ、白人男性レジスタンス員に、下士官は奇妙な顔を見せる。



「てめえ等に殺された、レジスタンスの仲間だよっ!」


「アビーね、アビー? アビ~~!! …………ああーー!! 彼女なら、私が救ったんだよ、感謝してくれたまえ」


 下士官を、猛獣の如く睨む、白人男性レジスタンス員だったが。


 しかし、そんな彼に対して、奴から告げられたのは、意外な言葉だった。



「はあっ!?」


「アビーなら、ホラ? 上に居るだろう? いやーー!! 彼女のお陰で、君達の拠点を一つ潰せたんだ、だから彼女には報奨を与えないとね」


 驚きながらも、顔を上へと向ける、白人男性レジスタンス員。


 彼に対して、上階に居る金髪ツインテールの女性兵士を指差す、下士官。



「知り合いか?」


「ええ、そうよっ! ヤッホーー! ジョセフ? 元気そうね~~?」


 帝国軍兵士から声を掛けられた、アビーと呼ばれた、女性兵士。


 彼女は、階下に居る白人男性レジスタンス員の名前を呼ぶ。



「そんな、そんな…………アビー? 正気に戻れっ!!」


「はいはい、もう面倒臭いから連れてってくれ」


「了解、早くこい」


「五月蝿い奴だぜ」


 ジョセフと呼ばれた、白人男性レジスタンス員は変わり果てた、アビーの姿に眼を見開く。


 落胆する彼は、下士官の命令で、帝国軍兵士たちに連行されて行く。

 


「クソがああああぁぁぁぁっ!?」


 まるで、断末魔の如く、ジョセフは大声を響かせて、叫んでいたが。


 やがて、その姿は暗闇へと、連れ去られて行ってしまった。



「体長、今度はコレを発見しました」


「いやーー! 放してっ! 放してってば~~~~!?」


 下士官の前に、また帝国兵が現れ、今度は白人女性レジスタンス員を連行してきた。



「もう良い…………見てられん、早く行こう」


「同感だな…………くっ!」


 顔を背ける、黒人レジスタンス員と同じく、苦虫を噛み潰したかのような渋い顔になる、ナタン。


 二人は、何時までも悪夢を見ていようとは思わず、先へと進んだ。



 それから、暫く時間が立った。



 地下道を進んだ、ナタンと黒人レジスタンス員たちは、無事に帝国側部隊の巡回を切り抜けた。



「この先が、俺達のアジトだ」


「いよいよか、長かったぜ」


 黒人レジスタンス員は振り返り、ナタンに目的地へと、ようやく辿り着いたと教えた。


 彼等は、あれから確かに長時間、敵を警戒しつつ地下道を歩いた。



 その果てに、レジスタンス達が秘密裏に使用する入口にまで、無事に辿り着いたわけである。


 彼等の目前には、岩盤をくり貫いて作られた洞窟がある。



 そこへ黒人レジスタンス員は、先に進んだ。



「着いてきてくれ」


「ああ、行くよ」


 そう言って、先を歩く、黒人レジスタンス員の背中を追う、ナタン。



「この先に、俺達のアジトがある、だが…………」


「だが…………? あっ!!」


 立ち止まる、黒人レジスタンス員の言葉を妙だと感じた、ナタン。



「外したかっ! なら、これでっ!」


「ぐっ!」


 後ろから、急に飛び降りてきた、女性レジスタンス員が襲ってくる。


 鉄パイプを振り下ろした、彼女の攻撃はナタンに回避されたが。


 すぐに、彼女は次なる一手である腰のスプレー缶を取り出し、顔に浴びせてきた。



「うあ…………」


 スプレー缶から、噴射された霧を吸い込んだ、ナタンの意識は、深い闇へと沈んだ。



「おいっ! 起きろ、帝国の化け物めっ!」


「何時まで寝ているんだい、クソ坊主がっ!」


「…………うぅ? ぐっ!」


 レジスタンス員から背中を蹴られた、ナタンは痛みで目を覚ます。


 すると、目の前に、レジスタンス達が三人も立っている事が分かった。



 そして、彼が周りを見渡すと、どうやら自分は、椅子に拘束されている事が分かった。



『…………助けた奴に? 知らない顔? さっきの奇襲を仕掛けてきた奴だな? …………』


 ナタンは、自身を睨みつける、レジスタンス員たちの顔を見る。


 右に立っているのは、さっき行動をともにしていた、黒人レジスタンス員だ。


 彼は、緑色の作業服を着て、両腕を組んで、こちらを観察している。



 次に、真ん中に居るのは、怒っている顔をした、白人男性レジスタンス員だ。


 頭には、黒髪の上に赤いバンダナを巻いており、服装は、上下ともに黄緑色をしたスーツ姿だ。


 最後に、左側に存在するのは、白人女性レジスタンス員だった。


 オレンジのロングヘアーに、茶色い瞳が光っており、真っ赤な口紅が目立つ。


 服装は、カーキー色のブルゾンで、下は同じ色に染められた、スカート姿だ。



「お前を生かしているのは、情報を得るためだ」


「さあ、知っている事を吐くんだよ?」


「知っている事をだと? 俺は帝国兵に変装しているだけだっ!」

  

 リーダーらしき、白人男性レジスタンス員が、淡々と喋る。


 隣の女性レジスタンス員も、キラリと光るナイフを、ナタンの頬に当てる。



 ぺたぺたと、冷たい刃で頬を叩かれた、彼は帝国兵じゃないと弁明する。



「はあ、そんな嘘を信じる訳ないでしょっ! ジャック、あんたはどう思う? あんたが連れて来たんだし?」


「さあな、コイツは確かに俺を救ったんだが、やはり怪しいな?」


「帝国軍・帝国警察と言えば、スパイを使って、我々レジスタンスを瓦解させる…………だから気は抜けないからな」


 オレンジ髪の女性レジスタンス員・黒人レジスタンス員・レジスタンス・リーダー達。


 この三人は、ナタンを前にして、彼を全く信用していなかった。



「頼む、信じてくれ…………」


「黙~~れっ!」


『バキッ!』


 ナタンは、一言だけ喋ったが、オレンジ髪の女性レジスタンス員は、彼が話す言葉を全く信じない。


 それ所か、彼を痛めけるべく、左頬をナイフの柄で思いっきり、ぶん殴った。

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