「こっちだ、この下を通れば…………」
「ここか、これを」
黒人レジスタンス員は、ナタンを案内するが、二人は、地下道の壁に備えられた鉄格子を外す。
その向こう側を観ると、さらなる別な通路へと繋がっていた。
剥き出しのパイプが、上下左右にと無数に並び、そこは本当に狭い場所だった。
「この先に行けば広い場所に出る」
「本当かよ…………」
黒人レジスタンス員に先導させながら、その後を歩く、ナタン。
パイプだらけの道は狭く、本当に広い場所に続いているかも分からない。
しかも、この道は、人間が一人だけで進める、ギリギリくらいしか幅しかない。
オーガーやシュヴァルツ・リッターと言った、帝国の兵士では絶対に通れないだろう。
「あ、出るぞって? 嘘だろ…………」
「おい、テロリスト、お前の脳天をブチ抜いてやろうか? ああっ!?」
「止めないか、こう言った場合の対処法は、即座に殺処分するのが正解だ」
狭い道から、広い空間に出た黒人レジスタンスを歓迎した者たち。
それは、サーベルの切っ先を、黒人レジスタンスが動けないように当てる、帝国軍女性兵士。
そして、AK12の銃口を脇腹に強く押し当てる、帝国軍兵士。
運が悪い事に、この二名だった。
「タイム、それは止してくれないか、彼は僕が捕らえた獲物なんだから」
「っ!? って、今度は俺たちの味方かよっ!!」
「ならば、連れて行って貰うしかないな」
狭い道から出たばかりのナタンは、二人を制して黒人レジスタンス員を救う。
彼の登場に、帝国軍女性兵士と帝国軍兵士たちは一瞬だけ驚いた。
「悪いね、じゃあ先に行くよ」
「ああ、良いぜ?」
「どうぞ、通ってくれたまえ」
ナタンは、二人の間を、MASー1935の銃口を黒人レジスタンス員に押し当てて進む。
サーベルを下げた、略帽を被る、金髪ツインテールの帝国軍女性兵士。
AK12の銃口を、ゆっくりと下ろした、野戦帽を被る、帝国軍兵士。
彼等から、二人は離れたあと、広い空間を進んでゆく。
「生き残りは居るか?」
「向こうは居ませんでした」
「こちらにも、敗残兵は無しです」
広い空間は、四角い部屋であり、床は金網が張られている。
その階下からは、絶え間なく帝国軍兵士たちが歩く、足音が聞こえる。
帝国軍下士官の命令に答える、兵士達。
「こちらは、二名新兵の材料を確保しました」
「我が分隊も、生きの良い奴を滷確しました」
「うむ、ご苦労であった」
兵士達が去ると、また別な兵士が、下士官の元に現れる。
その周りを、ナタンと黒人レジスタンス達は金網越しに見る。
階下は、下士官を中心にして、無数の帝国兵が歩いている。
その他には、レジスタンス員が惨殺された、死体が転がっていた。
「離せっ! 離せってんだよっ!」
「ゲボアッ!? はぁ~~はぁ~~? ゴボッ!! ウ…………」
「どれどれ?」
兵士達から拘束されている、多少の掠り傷しかない、白人男性レジスタンス員は騒いでいる。
そして、吐血する瀕死状態のアラビ系女性レジスタンス員。
四名の帝国軍兵士に連行される、この二人を、下士官は眺めた。
「くそ、絶対に暴れて死んでやるっ! お前らの基地でなっ!? そして、アビーの仇を討つんだっ!」
「アビー?」
暴れて騒ぐ、白人男性レジスタンス員に、下士官は奇妙な顔を見せる。
「てめえ等に殺された、レジスタンスの仲間だよっ!」
「アビーね、アビー? アビ~~!! …………ああーー!! 彼女なら、私が救ったんだよ、感謝してくれたまえ」
下士官を、猛獣の如く睨む、白人男性レジスタンス員だったが。
しかし、そんな彼に対して、奴から告げられたのは、意外な言葉だった。
「はあっ!?」
「アビーなら、ホラ? 上に居るだろう? いやーー!! 彼女のお陰で、君達の拠点を一つ潰せたんだ、だから彼女には報奨を与えないとね」
驚きながらも、顔を上へと向ける、白人男性レジスタンス員。
彼に対して、上階に居る金髪ツインテールの女性兵士を指差す、下士官。
「知り合いか?」
「ええ、そうよっ! ヤッホーー! ジョセフ? 元気そうね~~?」
帝国軍兵士から声を掛けられた、アビーと呼ばれた、女性兵士。
彼女は、階下に居る白人男性レジスタンス員の名前を呼ぶ。
「そんな、そんな…………アビー? 正気に戻れっ!!」
「はいはい、もう面倒臭いから連れてってくれ」
「了解、早くこい」
「五月蝿い奴だぜ」
ジョセフと呼ばれた、白人男性レジスタンス員は変わり果てた、アビーの姿に眼を見開く。
落胆する彼は、下士官の命令で、帝国軍兵士たちに連行されて行く。
「クソがああああぁぁぁぁっ!?」
まるで、断末魔の如く、ジョセフは大声を響かせて、叫んでいたが。
やがて、その姿は暗闇へと、連れ去られて行ってしまった。
「体長、今度はコレを発見しました」
「いやーー! 放してっ! 放してってば~~~~!?」
下士官の前に、また帝国兵が現れ、今度は白人女性レジスタンス員を連行してきた。
「もう良い…………見てられん、早く行こう」
「同感だな…………くっ!」
顔を背ける、黒人レジスタンス員と同じく、苦虫を噛み潰したかのような渋い顔になる、ナタン。
二人は、何時までも悪夢を見ていようとは思わず、先へと進んだ。
それから、暫く時間が立った。
地下道を進んだ、ナタンと黒人レジスタンス員たちは、無事に帝国側部隊の巡回を切り抜けた。
「この先が、俺達のアジトだ」
「いよいよか、長かったぜ」
黒人レジスタンス員は振り返り、ナタンに目的地へと、ようやく辿り着いたと教えた。
彼等は、あれから確かに長時間、敵を警戒しつつ地下道を歩いた。
その果てに、レジスタンス達が秘密裏に使用する入口にまで、無事に辿り着いたわけである。
彼等の目前には、岩盤をくり貫いて作られた洞窟がある。
そこへ黒人レジスタンス員は、先に進んだ。
「着いてきてくれ」
「ああ、行くよ」
そう言って、先を歩く、黒人レジスタンス員の背中を追う、ナタン。
「この先に、俺達のアジトがある、だが…………」
「だが…………? あっ!!」
立ち止まる、黒人レジスタンス員の言葉を妙だと感じた、ナタン。
「外したかっ! なら、これでっ!」
「ぐっ!」
後ろから、急に飛び降りてきた、女性レジスタンス員が襲ってくる。
鉄パイプを振り下ろした、彼女の攻撃はナタンに回避されたが。
すぐに、彼女は次なる一手である腰のスプレー缶を取り出し、顔に浴びせてきた。
「うあ…………」
スプレー缶から、噴射された霧を吸い込んだ、ナタンの意識は、深い闇へと沈んだ。
「おいっ! 起きろ、帝国の化け物めっ!」
「何時まで寝ているんだい、クソ坊主がっ!」
「…………うぅ? ぐっ!」
レジスタンス員から背中を蹴られた、ナタンは痛みで目を覚ます。
すると、目の前に、レジスタンス達が三人も立っている事が分かった。
そして、彼が周りを見渡すと、どうやら自分は、椅子に拘束されている事が分かった。
『…………助けた奴に? 知らない顔? さっきの奇襲を仕掛けてきた奴だな? …………』
ナタンは、自身を睨みつける、レジスタンス員たちの顔を見る。
右に立っているのは、さっき行動をともにしていた、黒人レジスタンス員だ。
彼は、緑色の作業服を着て、両腕を組んで、こちらを観察している。
次に、真ん中に居るのは、怒っている顔をした、白人男性レジスタンス員だ。
頭には、黒髪の上に赤いバンダナを巻いており、服装は、上下ともに黄緑色をしたスーツ姿だ。
最後に、左側に存在するのは、白人女性レジスタンス員だった。
オレンジのロングヘアーに、茶色い瞳が光っており、真っ赤な口紅が目立つ。
服装は、カーキー色のブルゾンで、下は同じ色に染められた、スカート姿だ。
「お前を生かしているのは、情報を得るためだ」
「さあ、知っている事を吐くんだよ?」
「知っている事をだと? 俺は帝国兵に変装しているだけだっ!」
リーダーらしき、白人男性レジスタンス員が、淡々と喋る。
隣の女性レジスタンス員も、キラリと光るナイフを、ナタンの頬に当てる。
ぺたぺたと、冷たい刃で頬を叩かれた、彼は帝国兵じゃないと弁明する。
「はあ、そんな嘘を信じる訳ないでしょっ! ジャック、あんたはどう思う? あんたが連れて来たんだし?」
「さあな、コイツは確かに俺を救ったんだが、やはり怪しいな?」
「帝国軍・帝国警察と言えば、スパイを使って、我々レジスタンスを瓦解させる…………だから気は抜けないからな」
オレンジ髪の女性レジスタンス員・黒人レジスタンス員・レジスタンス・リーダー達。
この三人は、ナタンを前にして、彼を全く信用していなかった。
「頼む、信じてくれ…………」
「黙~~れっ!」
『バキッ!』
ナタンは、一言だけ喋ったが、オレンジ髪の女性レジスタンス員は、彼が話す言葉を全く信じない。
それ所か、彼を痛めけるべく、左頬をナイフの柄で思いっきり、ぶん殴った。
面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。
あと、生活費に直結するので、頼みます。
(^∧^)
読み終わったら、ポイントを付けましょう!