十字路を越えた、トヨタ・テクニカルは味方部隊と合流するべく、街中を疾走する。
その左側には、様々なビルや家屋などが、所狭しと立ち並ぶ。
また、右側にも、雪積もる広い敷地に木々と、医療センターの建物が見える。
「ところで、この車の行き先は?」
「あ? 知らないのか、行くのはブリュッ!?」
「また来たわよ、今度は装甲列車だわっ!!」
ナタンが行き先を聞いて見ると、アシュア系PMC要員が答えようとした。
しかし、彼とメルヴェ達は、後ろから装甲列車が迫っていることに気づいた。
「うわ、わっ! わあっ! 機関砲を撃って来たぞっ!!」
「ちょ、激しく揺らし過ぎっ!」
ドドドドと、激しい音を立てながら、黒い装甲列車は機関砲を撃ってきた。
トヨタ・テクニカルは、その攻撃を避けるために蛇行運転を繰り返し、右へ左へと揺れまくる。
右往左往する荷台の上で、ナタンとメルヴェ達は反撃する事もまま成らず、必死で車にしがみつく。
これは、アムールやバイカル型の装甲鉄道車両だと思われ、ZPUー2機関砲を撃ち続ける。
「車体がボロくなるっ!」
「ぐわああっ!?」
次々と発射される、14、5ミリ弾はトヨタ・テクニカルを易々と貫通してしまう。
それを、恐れた運転手は、即座に頭を下げて体を丸めたのだが。
座席後部を貫通した、一発が不運にも、アシュア系PMC要員に当たってしまう。
「殺られたかっ!」
「ああ…………KIAだ」
「くぅーー!?」
ナタンは、後ろを確認する間もなく、AAー52を撃ちまくりつつ、運転手に声をかけた。
だが、相手は装甲列車だ。
簡易的とは言え、装甲板が貼られている堅牢な車体を、機銃弾が貫通する事は出来ない。
メルヴェのダネルは、直撃すれば、ZPUー2機関砲を破壊できそうだが、それも今は不可能だ。
なぜなら、機関砲による連続射撃が激しすぎるからだ。
それを、避けようと、トヨタ・テクニカルの車体が揺れるため、発射した榴弾が当たらないわけだ。
「不味いな…………このままじゃあっ!?」
「うわあ? RPGッ!?」
「どこから、きゃああっ!!!!」
運転手が、ハンドルを右から左に回す中、ナタンはRPG弾が四方から飛んでくるさまを目にする。
メルヴェは、揺れ動く荷台と、次から次へと発射されるRPG弾を恐れて叫ぶ。
しかし、それらの弾頭はトヨタ・テクニカルではなく、装甲列車に何発も命中直撃した。
「は? 味方か?」
「………どうやら、そのようね? 赤い旗が見えるわ」
装甲列車が、爆発炎上する中、左右にある建物の屋根や屋上から歓声が聞こえた。
味方のレジスタンスや連合軍コマンド部隊が、病院を占拠して、真っ赤な旗を立てていた。
彼らの援護射撃により、装甲列車は破壊され、二人は難を逃れたわけだ。
「やあ?」
「ありがとうっ♡」
荷台の上で、ナタンとメルヴェ達は、味方部隊に手を振って礼を告げる。
こうして、病院の建物郡を通り過ぎた、トヨタ・テクニカルは、交差点を斜め左に向かっていく。
そして、次なる敵が二人に攻撃を仕掛けてきた。
BTRー40ZhD装甲トロリーが走って来たのだ。
「新手かよ……やるしかないか……弾切れかよ、クソッ!」
「連中、撃ってくるわよっ! 早く給弾してっ!」
BTRー40ZhD装甲トロリーは、車載用の機関砲や機関銃は、備えていない。
しかし、乗員であるワーウルフと帝国兵たちが、AKMを撃ちまくってきた。
ナタンは、周囲の箱からベルトリンク式・機銃弾を探す。
メルヴェは、ダネルMGLを撃つが、素早く走り迫ってくる敵には当たらない。
「死ねっ!! 連合兵めっ!!」
「白兵戦は得意かっ?」
「不味い、くるなっ!」
「近寄ると、斬るわよっ!?」
横付けされた、BTRー40ZhD装甲トロリーから、ワーウルフと帝国兵が飛び移ってきた。
荷台上で、ナタンはベルトリンク式・機銃弾を振るいまくる。
そうして、敵による鋭い爪の切り裂きを防御する。
一方、メルヴェはコンバットナイフを片手に迫る敵から必死で離れる。
それと同時に、服の背中内に隠していた、小刀ヤタガンを抜き取る。
「斬り合いなら負けないぜっ!」
「うるさい、離れろっ!!」
「そんな剣で勝てると思っているのかっ!」
「古い剣でも、敗けはしないわっ!」
荷台の上で、ワーウルフは爪を伸ばして、ナタンを殺さんと一気に攻める。
帝国兵も、メルヴェと刃を交え、斬り合いを繰り返す。
「斬るだけが、白兵戦じゃあねぇんだよっ!」
「ぐばっ!?」
「ナタンッ!!」
「よそ見したら隙が出きるっ!」
ワーウルフから蹴りを喰らった、ナタンは頭を左側の鉄板にぶつけてしまう。
それを心配する、メルヴェの首元に鋭いコンバットナイフが真っ直ぐ迫る。
「くそっ! いてぇっ!」
「うわ、この……」
「殺られるわけ無いでしょ」
「だまれ、はやく死ねっ!」
ナタンは、ベルトリンク式機銃弾を、ワーウルフの顔に投げつけた。
しかし、その投擲は右手で簡単に弾かれてしまった。
メルヴェは頭を後ろに引きつつ、小刀ヤタガンの切っ先で、帝国兵が握るコンバットナイフを防ぐ。
「クソがっ! なら、これでも喰らえっ?」
「させるかっ! オラッ!」
「刃渡り60センチか? 俺のナイフより長い……だがっ!」
「隙を突く気でしょうが、近寄らせないわよっ!」
ナタンは、腰から、MASー1935拳銃を引き抜こうとする。
だが、ワーウルフが武器を握らせるはずはなく、素早く右腕に蹴りを一発喰らわせる。
帝国兵は、一気に距離を積めると、コンバットナイフを、メルヴェの心臓めがけて袈裟斬りを放つ。
しかし、彼女はナイフを握る帝国兵の袖を掴んで斬激を避ける。
「おっ! 援軍の登場だっ!」
「味方のトラック部隊か……これで多勢に無勢だな」
「不味い、このままじゃっ! ぐわっ!」
「ナタン、よくもっ!!」
ワーウルフは、チラッと一瞬だけ、トヨタ・テクニカルに近づいてくる部隊に目を配る。
帝国兵も同じく、二台の黒いトラックに気づいて、ナイフによる連撃を勢いづかせる。
ナタンも、敵の増援が登場したことで焦り始めたが、いきなり彼に銃弾が当たる。
メルヴェは、彼が銃撃を受けたので、激昂しながら、小刀ヤタガンを振るいまくる。
今の一撃は、ZiSー151トラックに乗っているドライアドが放った。
トラックの屋根に載せた、ドラグノフSVDKから狙撃したわけだ。
これにより、いきなり不意討ちを受けた、彼は後ろに倒れこむ。
「ナタン、確りしてっ! きゃっ!」
「よそ見をするなっ!!」
「これで、俺の勝ちだな…………」
「ぐぅぅ…………ぁ」
メルヴェの小刀ヤタガンと、帝国兵が握るコンバットナイフは何度も打ち合う。
その間、ワーウルフは倒れた、ナタンに対して鋭い鉤爪による必殺技を放とうと飛びかかった。
「くっ! 喰らえっ!」
「何っ! チィィ…………」
「私だって、負けないわっ!」
「やるな、だがっ!!」
ナタンは咄嗟に、左手で腰からMASー1935拳銃を抜き取ると同時に撃つ。
素早く放った一発は、ワーウルフの腹を撃ち抜き、退けざらせた。
メルヴェも、小刀ヤタガンを振るいまくり、帝国兵を圧倒する。
しかし、後方のZILー157トラックから新手が現れる。
制帽を被った、ヴァンパイアが飛び込んで来たのだ。
それに続き、蔦を鉄板に絡めて、ドライアドが迫ってくる。
「動くなっ! もう、遊びは終わりだっ!」
「動くなら、容赦しないぜっ!」
ヴァンパイアは、H&K、VP7拳銃を、二人に向ける。
一方、ドライアドはH&K、P30を窓の外から運転手に突きつけた。
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