ドローン達が、飛行編隊を組んで、帝国側兵士たちを空襲する。
「ドローンが邪魔だな?」
「頭を晒すなっ!」
「また、交代して来たぞ」
「これじゃ、顔も出せない」
無数のドローンが白い曇り空を舞い、ビル内に身を隠す、帝国側兵士たちを機銃で狙う。
それは、二階や三階の窓から援護射撃を行おうとする帝国軍部隊を、激しい銃撃で釘付けにする。
交代しなが、機銃弾を放ちまくる、無人機部隊は、帝国側の兵士たちには厄介な相手だった。
敵の撃った、弾丸が建物に、弾痕を何十個も作っていくなか、ナタン達も反撃していく。
「邪魔な奴らだ…………」
『帝国側部隊に気を取られてはいるが? 連中の銃口は時おり残骸に隠れる自分たちも狙ってくる…………』
フォイルスニェーク大尉は、愚痴りつつも、空から銃弾を放つ無人機部隊を狙う。
また、敵機を指揮棒《タクト》の氷結魔法で撃ち落とす、彼女は相変わらず機嫌が悪そうだ。
ナタンも同様に、連中が銃弾を撃つ前に撃破して何とか牽制した。
こうして、残骸から身を出さないように気をつける彼等は苦戦していた。
「後方から援軍の登場だっ!!」
「正面の敵に突撃するっ!」
『テキ、ハッケン…………タダチニ、ハイジョスル…………』
ビルの合間を通って、増援として帝国側部隊が駆けつけて来た。
何人かの兵士からなる部隊よりも後方には、黒い六輪・装甲車型ロボット兵器が見える。
装甲車型兵器の背部が開くと、アームが持ち上がり横に長いレーダー板みたいな物が広がる。
「電子妨害システムか? 何にせよ、援護は助かるっ!」
ジャミングウェーブを放つ、装甲車型兵器の活躍により、ドローン達は無料化される。
そして、コントロールを奪われて、次々と地上に落下する無人機部隊の音が周囲に響く。
味方部隊の到着と、上空から飛来する敵部隊を退けた事で、フォイルスニェーク大尉は安堵する。
と言っても、直ぐに険しい顔となった彼女は、激しい抵抗を続ける向かい側のビルを睨む。
「やっと、数が減りだしたか?」
ナタン達の後方に位置する、ビルを狙って、宙を舞うドローン達は攻撃を続ける。
もちろん、ビル内からも、警察部隊や帝国地上軍部隊が応戦する。
ドローン部隊は、先ほど装甲車型兵器が、殆どをジャミングウェーブで撃ち落とした。
だが、何処からか数は少ないが続々と、レジスタンス側にも、増援として味方がくるのだ。
「くぅぅっ! このままでは埒が開かんっ!!」
逃げるドローンを、氷結魔法を乱発しながら、射ち落とした、フォイルスニェーク大尉。
無人機部隊による脅威度は低下したとは言え、前進は出来そうになく、そのことに彼女は苛立つ。
しかも、数が減ったドローン達と違い、レジスタンス側は、未だに健在だ。
援軍に現れた帝国側部隊も、敵が放つ機銃掃射を避けるために、左右のビル内へと逃げ込む。
これにより、ナタン達は再び苦戦状態に陥っているのだ。
「オリガ、援護射撃だっ!」
「はい、一時凌ぎですが…………」
フォイルスニェーク大尉は、レジスタンス側が立て籠るビルの方を眺めつつ叫ぶ。
この命令を聞いた、オリガは直ぐに、セルジュコフ拳銃を撃つことを止める。
そして、彼女は金髪ロングヘアを優雅に揺らしつつ、PGSー33を両手に構えた。
黒い肋骨服《ドルマン》、青い乗馬ズボン、黒いブーツ姿と言う、騎兵を思わせる姿のオリガ。
ナタンが彼女に目を向けると、腰から下げる片手剣ベーブトの青い鞘が目立っていた。
「これでも、喰らいなさい」
オリガの構える、黒い三連グレネードランチャーであるPGSー33は、三回弾丸を発射した。
放射線を描くように飛んだ弾丸は、ビルの壁に当たったり、手前で地面に落下する。
すると、黄緑色の煙を撒き散らし始め、あっという間に、辺りは化学兵器による煙幕に包まれた。
「スーラーン、ブラトノワ…………右から行けっ!!」
「分かりましたぜ」
「直ぐに行きます」
フォイルスニェーク大尉の命令が下ると、スーラーンとブラトノワ達は走り出す。
化学兵器を散布したことにより、レジスタンス側の抵抗が弱くなったからだ。
「援護を頼むぜ、ブラトノワ」
「あいよ、んじゃま…………?」
先に、スーラーンがビルの側面に向かって、四つ足で駆けていく。
その後ろを、ブラトノワは短機関銃PPSー43を撃ちまくりながら走る。
「着いたよっ! 隊長、今度は私らが援護するから早く来て下さいっ!」
ウシャンカ帽を被り、銀色のウェーブロングヘアを揺らす、ブラトノワ。
同様に、彼女が着ている黒革のロング・ジャケットも、走る度に揺れていた。
「分かった、今そっちに行くからなっ! ナタン、ゴプニカッ! 貴様らも左側へと突撃しろっ!」
「了解、今すぐに行きますよっ!!」
「了解しましたぁ~~すっ?」
フォイルスニェーク大尉の声が響くと、ナタンは仕方無しに、パトカーから出て走り出す。
その後ろから、ドラグノフKが発砲音を響かせて、ゴプニカが喋る声も聞こえた。
「ああーーーーーー!?」
「うわああああぁぁっ!!」
入口左右に貼り付いた、スーラーンとブラトノワ達は、手榴弾をビルの一階&二階に投げ込む。
二人が投げた手榴弾が爆発すると、中から爆発音が響き、同時にレジスタンス達の悲鳴が聞こえた。
その声が聞こえ終わる前に、二人は内部に突入し始めた。
「死ね…………俺の投擲でなっ!」
「オラオラッ! 退かんかいっ!?」
スーラーンとブラトノワ達が、内部で戦っている声が、外に聞こえてきた。
どうやら、二人は入口付近を守備していた、レジスタンス員たちを蹴散らしているらしい。
上階は、催涙ガスか、毒ガスなのかは分からないが、それにより今は機銃掃射が止んでいる。
自動小銃による射撃も、混乱と狼狽しているのか、散発的な攻撃しかこない。
こうして、ビルからの攻撃が止んだ今、フォイルスニェーク大尉たちは素早く前進する。
「全員、ビルに向かって走れっ!!」
「行くしかないか…………」
上空を飛来する敵ドローン部隊も減少しており、制空権が、帝国側に傾きだした。
この好機を逃すまいと、フォイルスニェーク大尉たちは駆け出す。
当然、ナタンも正面に立つ、ビルへと走って行き、玄関の中へと入った。
「敵が侵入してきたぞーー!!」
「これ以上は前進させるなっ!」
「ドローンを前に出せ」
「出すなら、コイツ等の方がいい…………」
入口を抜けた、ナタンを出迎えた物は、レジスタンス員達が構えるAK47の銃口だ。
左右の廊下から、連中は大量に弾丸をバラ蒔くために、滅茶苦茶に銃を乱射してくる。
「不味いっ!! このままじゃ、蜂の巣にされちまうっ!」
それらが、自らを捉える前に、ナタンは素早く、エントランス・ホール内を走った。
広いホール内には、二階の廊下へと続く、エスカレーターが左右に、二つある。
「あそこに居たぞ、撃てーー!」
「野郎、逃がすなーー!」
『…………クソッ! また、もう撃ってきやがったか? …………』
二階の手摺からは、レジスタンス員達が、AK74やAKM等を中心とする自動小銃を撃って来た。
それ等の弾丸を避けるためには、遮蔽物が無いため、ナタンは必死で前へと走るしかない。
正面には、運が良いことに、フロントの受付カウンターがあったが、そこに敵は存在しないからだ。
「んっ! 後ろからか?」
ナタンの後方からは、ドラグノフKが放つ銃声が何回も響いた。
そのお陰で、レジスタンス達は、そちらに気を取られたらしく、何人かが窓から離れた。
これにより、彼は援護射撃の元、何とか敵に向かって突撃していった。
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