「よっと、これくらいは運ばないとな」
「重たいバッグね、楽器用みたいだわ?」
ナタンは、マガジン式、グレネードランチャーSSW40を左手に持つ。
右腕には、予備弾倉が詰まった金属ケースを抱えている。
メルヴェは、両手で細長くて黒い、バッグ型ケースを運ぶ。
「…………に、しても、機甲部隊と戦ったあと、腹を医務班員に見て貰ったけど? 本当に大丈夫なの?」
「ああ、弾はキッチリ貫通していたし、幸い掠《かす》りキズ見たいなもんだったからな」
メルヴェは、先を歩くナタンの後ろから、体は無事かと心配しながら声をかけた。
トヨタ・テクニカルで、ワーウルフと退治した際に、背中から脇腹を狙撃されていた。
「昔から頑丈なのが、取り柄だしさっ?」
「なら、いいけど…………」
そうこう話し合いつつ、二人は部屋の隅に武器弾薬を設置した。
「さて、心配無用だっ! あと、サンドイッチでも食べに行こうかな?」
「まったく、いつも心配させるんだから…………」
「ミスター・タカヤマ、懐かしいなぁ? ジブツ基地でのUN作戦以来か、久々に友人の顔を見られて嬉しいよ」
「こちらこそ、ウェン軍曹殿………アフレアでの任務は過酷でしたな、戦友」
ナタンは呑気に補給物資を漁ることを考え、そんな彼にメルヴェは呆れながらも後を追う。
廊下を歩く、二人は部屋の中から、ウェン軍曹と誰かが話す声を聞いた。
「私は、貴方たちと同じく、こちらに向かい、ロケットランチャーを配備するように頼まれましてな…………まあ、積もる話も有りますが仕事後に一杯やりながら語り合いましょう」
「そうだな…………では、後程ウィスキーを用意してますよっ!」
タカヤマと呼ばれた、薄い色合いの砂漠迷彩を着た兵士は、サッと敬礼する。
ウェンも同じく、彼に素早く敬礼と笑顔を返した。
「今のは? 誰だ?」
「アシュア系だわ?」
そうこう話し合いながら、ナタンとメルヴェ達が歩いていると、突如業音が鳴った。
「迫撃砲だっ! 敵がRPGーを撃ってきたぞっ!!」
「上からも、横からも攻撃してきたんかよ?」
「夜くらい、寝かせろってんだっ!!」
「早く、カールグスタフを用意しろっ! 撃ち返したれやっ!」
チィーナ軍兵士が走り、それを黒人PMC要員が追いかける。
かと思えば、窓からサーマルスコープ付きのFALを構える連合軍兵士も居る。
弾薬を運びながら慌ただしく、廊下を走る、イズラエル兵。
「ロワ通りにある連邦政府庁舎から、公園の塹壕線が狙われているっ! もちろん、こっちもだっ!」
「後ろからだっ! 向かい側のBNP社ビルに敵が侵入したらしいっ!!」
「現在、民兵とPMC部隊が交戦中っ! 私たちは、そちらに向かいますっ!」
アラビ人PMC要員が叫ぶ中、男女二名のイズラエル兵たちも走る。
彼等は、全員が向かった公園とは反対側にあるBNP社ビルに銃を向ける。
「ナタン、私らも後ろの連中を援護するわよっ!」
「よっし、援護射撃で支援するぞっ!」
窓の左右に貼り付き、メルヴェとナタン達は向かい側に目を配った。
電気が消されたはずのBNP社ビルは、室内が明るく照らされていた。
敵の奇襲攻撃を受けたため、砲撃や狙撃を受けぬように、暗闇に包まれていた社内だったが。
闇夜に紛れつつ、奇襲を仕掛けてきた、帝国側部隊の方が暗所では強い。
そのため、守備隊によって、室内に明かりが灯された訳だ。
しかし、ビルは建物自体が柵のように、窓ガラスとコンクリート柱で構成されている。
これにより、ナタンとメルヴェ達は、効果的な援護射撃が行い難《にく》かった。
だが、かろうじて割れた窓から中の様子が伺え、夜襲部隊は右側から攻めてきている事が分かった。
「あっちだ、オーガーが見えるっ! 不味いぞ、PKPを持っているっ!」
「せめて、周りの兵士だけでも排除しましょうっ!!」
PMC部隊は、机やソファーに隠れながらも銃を撃ち返している。
さらに、マジシャンたちが身を守るために、氷壁を作って遮蔽物を構築する。
しかし、軽装備の民兵部隊は棚裏に潜んだり、床に伏せるだけで何もできない。
オーガー、シュヴァルツ・リッター達がPKPを乱射しているからだ。
また、何人かの防弾兵や、軽装兵部隊が走る姿が視認できた。
「早く援護してやらんとなっ!」
「分かっているわっ!」
ナタンは、AK12を単発連射で、向かい側のBNP社に弾丸を放っていく。
メルヴェは、窓に土嚢を置くと、その上にFADを載せながら連射する。
二人の攻撃で、事務机に隠れていた、帝国兵が何人か倒れた。
しかし、今の銃撃で帝国軍部隊は、隣にある建物から撃たれたことに気がつく。
野戦帽を被るグールは、口から青い毒ガスを吐いて、視界を遮る。
敵のウィザード達は、氷壁を作って、防弾遮蔽物を構築する。
「弾切れだ、マガジンを交換する」
「こっちもよ、交換するわ」
ナタンとメルヴェ達は、敵に圧倒されるPMC&民兵部隊を救うべく、急いで弾倉を取り替える。
その右隣にある窓にからは、イズラエル兵たちが冷静に援護射撃を行っていた。
「あの氷壁は貫けないな? 仕方ない、また周辺の雑魚《ザコ》から倒すしかあるまい?」
「ドゥロル、なら軽装備兵から先に倒しましょうっ!」
ドゥロルと呼ばれた、茶色とカーキ色のベレー帽を被る、アラビ人みたいな兵士は敵を観察する。
それと同時に、四角いダットサイトを覗き込みながら、マイクロ・タボールを撃ちまくる。
もう一人、かなり大きなベージュ色のベレー帽を被る女性兵士も、敵部隊が動く様子を慎重に探る。
彼女は、スコープ&サプレッサーを取り付けた、ガリルARを密かに撃ち続けた。
二人の服装は、シンプルに上下をOD・グリーンカラーに統一してあった。
一方、ベージュ色の防弾ベスト&ベルトには、様々な弾帯を取り付けていた。
そんな中、防弾兵やオーガーに混じり、一般の帝国軍兵が走り回りながら銃撃しまくっていた。
「よっ! 弾装は、交換したぞっ!」
「こっちも、撃つのを再開するわっ!」
ナタンとメルヴェ達は、銃撃を再び始めると、軽装備の敵兵を狙って撃ち続ける。
そして、また今の攻撃により、二名戦死させたがすぐに弾が切れた。
「くぅ~~! あの柱が邪魔だっ!」
「行くしか無いわ、って、私のFADは完全に弾切れね」
ナタンは、AK12の弾装を交換しながら階下を目指して走り出す。
メルヴェは、FADを床に置くと部屋の中に目を配り、代わりの武器を探す。
「クソ、コートは邪魔だな、戦いが終わったら脱がないとっ!」
そう言いながら、ナタンは外に出て大きい方のBNP社ビルに、AK12を乱射する。
こうして、窓ガラスを割ると、一気に室内へと、一人突撃していった。
「敵かっ!? 撃つぞ、コラァッ!!」
「いや、彼は味方だっ!」
「そうだ、だから撃たんでくれっ!」
白人PMC要員と黒人民兵たちが、いきなり窓を割りながら入って来た、ナタンに驚く。
「✕◆○っ!! ◤◢◤〇◉▤▦○◎」
「◢◉〇〇◣◢◇◤◥●◑□◌ッ!?」
「はっ?」
ナタンは聞き慣れぬ言葉とともに、銃弾が飛んできたので、急いで身を伏せた。
帝国軍兵士や、軽装備の歩兵は、88式小銃から銃弾を凄まじい勢いで連射してくる。
彼等の銃には、ドラムマガジンではなく、太いヘリカルマガジンが取り付けられている。
ゆえに、大量の銃弾で、分隊支援火器がごとく、途切れない機銃掃射が行えた。
「奴ら、チュソン人だっ!」
「元から、ロシャ連邦の奴隷さ?」
「今じゃ、帝国の洗脳兵士」
「いんや、正しくは洗脳・動物兵器だよ」
PMC要員や民兵たちは、喋りながらも遮蔽物から手だけを出して、何とか撃ち返す
と言っても、彼等が装備しているのは散弾銃や短機関銃など、軽火器しかない。
「状況は分かった、だが何とかしないとなっ!」
ナタンは顔を少しだけ出しながら、AK12の照準を、チュソン兵に向けて何発か撃つ。
野戦帽に、H型ハーネスと弾帯しか身に着けてない、チュソン兵は腹を撃ち抜かれても死なない。
「奴らも、改造兵士って言うのかよっ!?」
愚痴るナタンは、机の裏に身を隠しつつ、反撃するために機会を伺う。
「居たぞっ! あの事務机を狙えっ!」
「ヤバいっ! うわああっ!!」
「◣◥◇▤▦▦◎◑」
「▦▤◣◌□◇」
「増援が到着したぞっ!」
「◥□◇◣◢◣▤」
ウィザードの命令を聞いた、チュソン兵はナタンへと、88式小銃を向ける。
そうして、雷撃魔法とともに大量の銃弾をバラまいて身動きが取れないようにする。
さらに、続々と帝国軍兵士やチュソン兵たちが奥から現れたのだった。
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