【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第171話 民間軍事会社フリー・イージス

公開日時: 2024年7月11日(木) 17:55
更新日時: 2024年7月14日(日) 08:59
文字数:3,513


 廃墟を進んでいると、粉々に破壊された建物の前まで猛土は来た。



「開けゴマ、開けてくれ」


『了解した、三十秒まて…………』


 灰色の瓦礫から、コマンド短機関銃を構える、PMC要員が出てくる。


 彼は、赤茶・緑・黄緑からなるリザード迷彩服を上下に着ていた。



 そして、彼は瓦礫に偽装してある、インターコムに連絡すると、内部から返事が返ってきた。



「しかし、本当に中世風だな」


 おそらく、衛生兵役を担《にな》っているのが、僧侶みたいな格好をした、ヨルギオスだろう。



 ナタンは、彼に目を向ける。



 焦げ茶色のチリ毛を、ミディアムヘアにしている、男性。


 その瞳は茶黒く、顔は日焼けしたようにピンクがかっている。



 服装は、正教会の司教が纏うフェロニオンと呼ばれる、袖なし祭服を着ていた。


 それは、彼から見れば濃卵色の大きなローブを羽織っているように見える。



 さらに、首には領帯《たいりょう》と呼ばれる金刺繍に縁取られた、緑色のエピタラヒリを掛けていた。



 腕には、籠手ポルーチを身につけており、脚には茶色い乗馬用ブーツを履いている。



 右肩には、両手用の長いメイスである、モールを担いで座っていた。



「中世と言うか、異世界ね……」


 メルヴェは、南米文化の戦士みたいな格好をしている、エスメラルを見て呟いた。



 ラテン系と黄色人系のハーフな外見であり、顔は濃いめで、髪は7、3ロングストレートヘアだ。


 瞳は、限りなく黒に近いブラックグリーン色で、肌は赤茶がかった薄褐色だ。



 頭部には、灰色の硬貨がビッシリと巻き付いた奇妙なヘッドギアを株っている。


 その下にも、硬貨がブラ下げられており、正面には黄緑に塗られた花飾りが草食されていた。



 鉢巻型のコレは、頭上にも一本だけ真ん中に灰色に塗られた布がある。



 武器は、腰に巻いた布に、青銅製の手斧を身に付けていた。



 服装は、丈の短いポンチョを着ており、それには下から紐《ヒモ》をモップみたいに幾つもブラ下げている。


 ポンチョ自体は、✕や◇などの装飾が中央や腕に施され、モスグリーンに染められていた。



 下には、黄色いズボンと、焦げ茶色の短靴を履いている。



「レジスタンスでもなく、連合コマンドでもなく、PMCか?」


「一応は連合側だけどね」

 

 ナタンが呟き、メルヴェも喋ると、その間に瓦礫が起き上がる。


 これは、巧妙に瓦礫として、偽装された入口の蓋であった。



 負傷兵を乗せている二台の猛土と、バイク二台は入口内部へと入っていく。



 中に進んだ彼等が見た光景は、地下へと続くトンネルの坂道だった。


 トンネル両側には、小さなライトが幾つも輝き、内部は比較的に明るかった。



「うわ~~凄い、うちらが居た場所とは大違いねっ!」


「ここまでの規模を持つ、秘密基地が存在したとは…………」


「ここは、元々は帝国が建設したトンネルだったんだがな~~開発が放棄されちまったんだ」


「レジスタンスによる奇襲に対する、基地建設や警察署の要塞化が優先されましたからね」


 トンネル内を進んでゆく猛土の上で、メルヴェは秘密基地に驚嘆する。


 おそらく、ここの内部は巨大な地下要塞となっているであろうと、ナタンは思い絶句する。



 ワンガリは、驚いたまま固まる二人に、基地が建設された理由を説明する。


 この地下基地は、作られた理由と何故現在は連合側PMCが占拠しているか。



 それを、ジュジースも丁寧に語る。



「ここ以外にも、手堀の穴から昔の防空壕まで色々とあるだろう?」


「他の施設でも、今頃は明日に備えて武器の搬出作業を行っているでしょう」


「ああーーまあ、確かにそうだな」


「他の場所でも、連日攻撃は行っているわね」


 ワンガリが話す通り、様々な地下施設や秘密通路が連合側に使用されている。


 また、それら地下通路は蜘蛛の巣みたいに大量に作られている。



 そう言った場所では、ジュジースの言う武器や兵器が、拠点《アジト》から出し入れされている。


 それは、ナタンとメルヴェ達が見てきた、過酷な戦闘に、多数の武器や兵器が使用されるからだ。



「連合軍の大規模な反抗作戦……通称、砂漠の幻影作戦が開始されるらしいからな」


「それに合わせて、世界中の帝国支配下に置かれた地域で、今はレジスタンス組織が奇襲攻撃を活発化させているわ…………」


「どこが、反抗作戦の中心地域か悟られないため? または中心となる地域に戦力を集中させないためね」


「それで、あんなに激しい戦闘が繰り広げられていたのか」


 ついに、連合軍の反抗作戦が開始されると、ワンガリは静かに語る。


 連合軍による戦いの様子と世界情勢を、丁寧に説明する、ジュジース。



 メルヴェも、連日連夜に渡る、連合軍とレジスタンスによる波状攻撃の理由を考察する。



 ナタンは、図らずも帝国側に潜入する事となった。



 なので、連合側で何が起きたか、どう組織や作戦が動いていたか。


 自分が居なかった間に始まった出来事が、全く分からなかった訳だ。



「ん? 知らなかったのか、今まで何をしていたんだ」


「いったい、どこで何をしていんですか、差し支えなければ教えて下さい」


「実は…………帝国側に捕まりそうになってね、なんとか連中に化けて、ここ数日は逃げまわってたんだ」


「そう、私は味方部隊とともに行動していたけど、彼は今言った理由で分からないのよ」


 ワンガリとジュジース達は、何も知らないと言う、ナタンを不思議がる。


 メルヴェは、彼とともに現在の状況が分からない理由を答える。



「そうか? 俺たちPMCも、他の連合軍部隊やレジスタンスとは、今まで成るべく接触は控えてきたからな」


「情報漏洩や機密保持の観点から好ましくなかっったので」


「なるほど、でも今は他の組織から人員を受け入れているけど…………もちろん、僕らを含めて?」


「いや、ナタン? もう反抗作戦が半ば始まったような状態なのよ…………つまり、今さら情報が洩れようと構わないってわけ」


 自分たちも、他の組織と関わりを持たなかったことから、何も分からないと、ワンガリは語る。


 それは、情報が敵に筒抜けになる事を避けるためであり、また殲滅される確率を減らす意図もある。



 ジュジースも、機密保持と言う意味で、今まで他組織と連絡を取らなかった理由を話す。



 しかし、ここで、ナタンは何故自分たちを助けてくれたのかと疑問に思う。


 そこに、メルヴェはPMCである彼等が助けた理由と意図を教えた。



 四人が話す中、トンネルの先に、広大な地下駐車場が見えた。



「そうだ、連日に渡って帝国と激闘は繰り広げられている」


「この場所がバレてしまい、奇襲を受けようとも逆に撃退するだけです」


「なるほどな……もう戦いが始まった以上は止まらないし、敵に居場所が知られても構わないワケだ」


「私たちの居た所も、そうだったでしょう? もう相当数の兵器がアフレアから運び込まれているのよ」


 何年にも渡る戦闘の合間に、密かに大陸へと兵器が大量に送り込まれていた。


 ワンガリとジュジース達が、自信満々に語るとおり、本気になった連合側は帝国と闘いに望む気だ。



 ナタンも、現在の状況を理解すると、もう戦闘ではなく、大戦争が始まったことを知った。


 自分たちの元居た拠点にも、メルヴェは大量に密輸されてきた兵器を思い出す。



 グレネードランチャー・対戦車兵器・重機関銃、それらに加え、肉体改造された兵士たち。



 こうした、連合側による動きや物資輸送は全て、砂漠の幻影作戦に関連している。



「お? 着いたな、ヨルギオスッ! 負傷者を見てくれ」


「エスメラル、重傷者を後送しますから手を貸して下さい」


「了解した…………軽度の負傷者は任せて貰おう」


「分かったぜ、俺も手を貸すから早く行こうなっ!」


 二台の猛土は、様々な軍用車両が何十台も並ぶ、地下駐車場に着いた。



 そこから、ワンガリは飛び降りると、ナタンとメルヴェ達を含む、負傷者の治療を仲間に頼む。


 次いで、彼は両手を組んで、猛土・上部から二人が降りるのを補助する。



 二人より酷い怪我を負った負傷者を救護するべく、ジュジースは猛土から飛び降りる。


 ヨルギオスは、走ってきて負傷を負っているナタン達を見てくれた。



 エスメラルは、男勝りな喋り方で、ジュジースとともに重傷者の肩を掴んで何処かへと走っていく。



「ふむ、怪我をしているな? どれ、見せなさい…………そっちの貴方も」


「痛たっ!」


「ぎゃっ!?」


 ヨルギオスは、ナタンの右肩から一気に刃を引き抜き、消毒綿で拭いてから回復魔法をかけた。


 次いで、メルヴェの脇腹に開いた穴にも、同様に治療行為を行った。



 戦闘中なら、消毒綿を使わず、そのまま回復魔法で治療する。


 だが、戦闘が終了して安全な場所に今は居るので、消毒してから怪我を治そうとした訳だ。



 念のため、こうした方が傷が化膿しないからだ。



 とにかく、二人とも、安全な味方と軒下を得られたのであった。

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