「ギルド員さん、また来るね」
「ありがとうございます」
花音が喜色満面で言うと、NPCのギルド員は恭しく礼をする。
有達は冒険者ギルドの外に出ると早速、街の通りへと向かう。
「よし、今度こそ吉乃信也を捕らえて情報を聞き出すぞ!」
「うん!」
有の決意表明に、跳び跳ねた花音が嬉しそうに言う。
望達はインターフェースで表示した王都『アルティス』のマップを見つめながら、これからの方針を模索する。
「三大高位ギルド以外に、このプロトタイプ版にログインしているプレイヤーか。彼らはこの現実世界、そして仮想世界の異変に気付いてはいないんだろうな」
「三大高位ギルド以外に、このプロトタイプ版にログインしているプレイヤー。彼らはこの現実世界、そして仮想世界の異変に気付いてはいないみたいね」
先程の信也の話を思い返して、望とリノアは複雑な心境を抱いた。
「『創世のアクリア』のプロトタイプ版。僕達も含めて、三大高位ギルドはいつでもログインすることができる状態だ。少なくとも、一万人以上は、この世界を行き来していることになる」
「ああ」
奏良の危惧に、有は深々とため息を吐いた。
ログインできる者は限られているとはいえ、一万人以上のプレイヤーが、この仮想世界を行き来している。
そして、その半数近くが、特殊スキルの使い手である望と愛梨を狙っているという事実。
有は、次の手を決めかねていた。
それは、開発者達という特異性だけではなく、彼らの手腕も侮ることはできないと感じていたからだ。
そこで、両手を伸ばした花音は興味津々な様子で有に尋ねる。
「お兄ちゃん。アイテム生成を用いたら、トラップを仕掛けられるんだよね?」
「その通りだ、妹よ。だが、俺が使う『覇炎トラップ』では対処されてしまう可能性が高いがな。しかし、それでも一時は動きを阻害することができるはずだ」
有の想定外の発言に、望とリノアは意外そうに首を傾げた。
「『覇炎トラップ』を使えば、『レギオン』と『カーラ』の動きを一時は止めることができるのか?」
「『覇炎トラップ』を使えば、『レギオン』と『カーラ』の動きを一時は止めることができるのね?」
「ああ、その通りだ。だが、『覇炎トラップ』を使うためには炎を元素還元する必要があるな」
有のその言葉を皮切りに、花音は表情に期待を綻ばせた。
「なら、お兄ちゃん。アイテム生成のスキルを使える『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバーの人達に協力してもらって、複数の罠を仕掛けたらどうかな?」
「なるほど、妹よ、一理あるな」
有は顎に手を当てると、花音の発想に着目する。
「よし、妹よ。早速、『アルティメット・ハーヴェスト』の者達の協力を得て、街道に罠を仕掛けるぞ!」
「うん! 『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバーの人達って、どんな罠を仕掛けたりするのかな!」
有の決意に応えるように、花音は戦闘への意気込みを語った。
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