「プラネットよ、頼む」
「はい。有様、お任せ下さい」
有の指示に、プラネットは恭しく礼をする。
プラネットは目を伏せて、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバーがいないかを探り始めた。
だが、周囲にはそれらしき気配は感じられない。
「マスター、有様。この周辺では、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバーの方の存在は感じられません」
「そうなんだな」
「そうなんだね」
その報告を聞いて、望とリノアはほっと安堵の表情を浮かべた。
「ニコットが単独で来たのか、もしくは僕達に分からないように気配を消しているのかもしれないな」
「奏良よ、『レギオン』と『カーラ』には、プラネットの探索能力に引っかからないーーそのようなスキルに長けた者がいるようだ」
奏良が発した疑念に、有は今までの情報を照らし合わせて、状況を掴もうとする。
「気配を消す能力に長けた者。つまり、花音と勇太くんと同様に、天賦のスキルの使い手か」
「気配を消す能力に長けた者。つまり、花音と勇太くんと同様に、天賦のスキルの使い手なのね」
「ああ。今までも、そのスキルで裏を掛かれたからな」
望とリノアの確信に近い推察に、徹は肯定の意を込めて頷いた。
「だけど、このダンジョンは『アルティメット・ハーヴェスト』の管轄下になっている。前みたいに『レギオン』と『カーラ』の集団が訪れても、俺達が対処してみせるからな」
徹は少しでも安心させるように、望達の気持ちを孕んだ行動へと移す。
「ああ。たとえ、『レギオン』と『カーラ』が隠れていたとしても、絶対にリノアを守ってみせる!」
「ああ、勇太くん、ありがとうな」
「うん、勇太くん、ありがとう」
望とリノアは眩しそうに、大剣を掲げた勇太へと視線を向ける。
大剣の穏やかな輝きの中には、彼の強固な意思を感じさせた。
「それにしても、ニコット以外にも、俺達、特殊スキルの使い手を狙っている存在がいるかもしれないのか」
「それにしても、ニコット以外にも、私達、特殊スキルの使い手を狙っている存在がいるかもしれないのね」
「望くんと愛梨ちゃんとリノアちゃんは、絶対に私達が守るよ」
望とリノアが咄嗟にそう言ってため息を吐くと、花音は元気づけるように望を見上げた。
「花音、ありがとうな」
「花音、ありがとう」
「うん」
望とリノアが誠意を伝えると、花音は朝の光のような微笑みを浮かべた。
絶対に守るーー。
その言葉には何の根拠もなく、何かの保証には決してなり得ないことを知りながら、花音が口にすると、まるでそれは既に約束された未来の出来事のように感じられた。
望の中で、漲る力が全身を駆け巡る。
望が感慨にふけていると、奏良は思案するようにダンジョン内へと視線を巡らせた。
「有、これからどうするんだ?」
「『這い寄る水晶帝』から脱出するつもりだ」
奏良の疑問を受けて、有はインターフェースで表示した『這い寄る水晶帝』のマップを見つめる。
「脱出か。やはり、『アメジスト』の素材は回収しないんだな」
「ああ。討伐対象のモンスターの出現は、『レギオン』によって制限を設けられている。このまま、ここにいても『アメジスト』の素材は手に入らないだろう」
奏良の言及に、有は落ち着いた口調で答える。
「お兄ちゃん、この子とはお別れなのかな?」
「妹よ、残念ながら、その通りだ」
花音の思いを汲み取るような有の配慮に、花音は意気消沈しながらも、スライムタイプのモンスターのもとへと歩み寄った。
「短い間だったけれど、あなたに会えて良かったよ」
屈んだ花音が優しく撫でると、スライムタイプのモンスターは慰めるように寄り添う。
「また、会いに来るね」
立ち上がった花音は、スライムタイプのモンスターの不安を一蹴するように微笑んだ。
「ねえ、お兄ちゃん。肝心の『アメジスト』の素材は、別の場所で手に入るのかな?」
「その通りだ、妹よ。だからこそ、このダンジョンから脱出する必要がある。そうすれば、『アルティメット・ハーヴェスト』も動きやすくなり、アイテム生成クエストのダンジョンーー『ネメシス』に挑む見通しも立つからな」
花音が声高に疑問を口にすると、有は意味ありげに表情を緩ませる。
「すごーい! さすが、ギルドマスターのお兄ちゃんだね!」
有の思慮深さに、花音は両手を広げて歓喜の声を上げた。
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