「切りがないな」
奏良は威嚇するように、『レギオン』のギルドメンバー達に向けて、連続で発泡する。
弾が『レギオン』のギルドメンバー達の身体に衝突し、大きくよろめかせた。
「このままでは、『レギオン』の追っ手から逃れられないな」
『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンの入口を見据えながら、奏良は事実を冷静に告げた。
「奏良くん、奥の手とかないの?」
「恐らく、『カーラ』のギルドマスター達とともに、『アルティメット・ハーヴェスト』が来るはずだ。それまでに、この状況を改善する必要があるだろうな」
花音が恐る恐る尋ねると、奏良は自分と周囲に活を入れるように答える。
有は敵の少ない方向に駆け出すと、余裕の笑みを浮かべている賢へと視線を注いだ。
『カーラ』のギルドマスターが付与してくる『再生能力』。
不死のように再生を繰り返すモンスター達に囲まれれば、『サンクチュアリの天空牢』から脱出することは過酷な状況へと追い込まれるだろう。
今のままでは、埒が明かないな。
この状況を打破するためには、『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバー達と合流した上で離脱に持ち込むしかないだろう。
一刻の猶予もならない状況の中、有はそう決断する。
「望、リノアよ。このまま、転送アイテムを用いて、『カーラ』のギルドマスターの光の魔術の加護を妨害するぞ! 望よ、もし、予想以上に早く、『カーラ』のギルドマスターが現れたら、彼女の目を誘導してほしい」
「ああ、分かった」
「うん、分かった」
有の指示に、望は同じ言動を繰り返すリノアの腕を引いて、有の援護に回った。
次々と、四方八方から『レギオン』のギルドメンバー達が襲いかかってくる。
「行きます!」
裂帛の咆哮とともに、プラネットは力強く地面を蹴り上げた。
「はあっ!」
「ーーくっ!」
気迫の篭ったプラネットの声が響き、行く手を遮る『レギオン』のギルドメンバー達を次々と爆せていく。
『フェイタル・ドライブ!』
勇太が大きく大剣を振りかぶり、光の刃が波動のように『レギオン』のギルドメンバー達へと襲いかかった。
万雷にも似た轟音が響き渡る。
「ーーっ」
迷いのない一閃とともに、勇太の強烈な一撃を受けて、『レギオン』のギルドメンバー達は怯んだ。
その隙に、勇太は疾走し、望達のもとへと向かう。
有が転送アイテムを用いれば、賢達もまた、転送アイテムを使って追いかけてくる。
有による、『レギオン』とのいたちごっこになる可能性を視野に入れた決断。
転送アイテムを使わなくては状況を打破できないーー。
思い込みを誘発したその作戦は、『レギオン』を翻弄する。
しかし、賢の余裕は崩れない。
転送アイテムには限りがある。
この方法では、すぐに状況が行き詰まることを理解していたからだ。
痛し痒しの突飛な作戦だったが、窮状には変わりなかった。
先に尽きるのは体力か、それともアイテムか。
どちらにせよ、終わりの時が近づいている事は、有自身がよく分かっていた。
だが、望達は前を見据える。
仮想世界ーー『創世のアクリア』のプロトタイプ版へと赴けば、『レギオン』と『カーラ』の妨害が付きまとってくることは分かっている。
それでも、リノアを救える可能性を諦めることなんて出来ない。
望達が止めなくては、美羅が生み出した理想の世界は永遠に続いてしまうだろう。
「今だ!」
戦局全体を見極めていた奏良は、銃を構えると範囲射撃をおこなう。
「ーーっ」
不意を突いた連続射撃は、有の妨害に動こうとした『レギオン』のギルドメンバー達を怯ませる。
状況を改善に向かわせるために、奏良は風の魔力を励起した。
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