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留菜マナ
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第ニ百十話 星が溶けた世界で⑥

公開日時: 2021年4月15日(木) 16:30
文字数:1,477

「ふむ。ベヒーモスの大群を退けるためには、やはり足止めは必須か」


ベヒーモス達の猛攻を回避しながらも、有はインターフェースを表示させて、最深部の牢獄までのルートを検索していく。


「妹よ、頼む」

「うん」


有の指示に、鞭を振るっていた花音は勇ましく点頭した。


「よーし、一気に行くよ!」


花音は跳躍し、ベヒーモス達へと接近した。


『クロス・リビジョン!』


今まさに望達に襲いかかろうとしていたベヒーモス達に対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。

花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った麻痺の痺れによって、ベヒーモス達は身動きを封じられた。

さらに追い打ちとばかりに、花音は鞭を振るい、何度も打ち据える。

しかし、花音の防衛をすり抜けて、ベヒーモス達は望達へと迫った。


「お兄ちゃん、お願い!」

『元素復元、覇炎トラップ!』


花音の合図に、有は襲いかかってきたベヒーモス達に向かって杖を振り下ろした。

有の杖が床に触れた途端、空中に炎のトラップシンボルが現れる。

ベヒーモス達がそれに触れた瞬間、熱き熱波が覆い、炎に包まれた。

だが、ベヒーモス達は炎を振り払い、襲いかかってくる。


「奏良よ、頼む」

「言われるまでもない」


有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、銃を構えた。

発砲音と弾着の爆発音が派手に響き、ベヒーモス達を怯ませる。


「行きます!」


裂帛の咆哮とともに、プラネットは力強く地面を蹴り上げた。


「はあっ!」


気迫の篭ったプラネットの声が響き、ベヒーモス達は次々と爆せていく。

花音達の攻撃により、ベヒーモス達のHPは半分近くまで減った。


「「これで決める!」」


そのタイミングで、望とリノアは剣を掲げると、連なる虹色の流星群を一閃とともに放つ。

望の特殊スキルと愛梨の特殊スキル。

それが融合したように、ベヒーモス達に巨大な光芒が襲いかかる。

一片の容赦もない二人の一振りを受けて、二体のベヒーモス達が消滅していった。


「「あと、残り三体!」」

「リノア、任せろ!」


望達の戦いぷりが、勇太の心に火を点ける。

露骨な戦意と同時に、勇太は一気にベヒーモス達との距離を詰めた。


『フェイタル・レジェンド!』


勇太は大剣を構え、大技をぶちかました。

勇太の放った天賦のスキルによる波動が、ベヒーモス達を襲う。

ベヒーモス達のHPは減ったが、倒すまでには至らない。

しかし、勇太は起死回生の気合を込めて、ベヒーモス達に更なる天賦のスキルの技を発動させる。


『フェイタル・ドライブ!』


勇太が大きく大剣を振りかぶり、光の刃が波動のようにベヒーモス達へと襲いかかった。

万雷にも似た轟音が響き渡る。


「ーーーーガアアッ!」


迷いのない一閃とともに、勇太の強烈な一撃を受けて、ベヒーモスは怯んだ。

ベヒーモスのHPが一気に減少する。

頭に浮かぶゲージは0になり、ベヒーモスの一体はゆっくりと消えていった。


「逃がしません!」


プラネットは吹っ切れた言葉ともに、両拳を勇太の攻撃から逃れたベヒーモス達に叩きつけた。

それと同時に高濃度のプラズマが走り、爆音が響き渡る。

しかし、それはベヒーモス達の動きを止めただけで、倒すには至らない。


「俺も加勢をしないとな」


徹がそう告げたその瞬間、背中に不穏な気配を感じ取る。

徹は振り返ることはせずに、ただ一言、言葉を発した。


『ーー我が声に従え、光龍、ブラッド・ヴェイン!』

「ーーっ!」


今まさに、背後から徹に襲い掛かろうとしていたベヒーモスは、突如、目の前に現れた光龍の咆哮によってそれを防がれてしまう。

金色の光を身に纏った四肢を持つ光龍。

巨躯の光龍は、主である徹に危害を加えようとしたベヒーモスを睥睨した。

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