望とリノアの剣先がかなめに迫ったその時ーー。
「「ーーっ」」
リノアの位置が移動し、望と対面するかたちへと変えられる。
「奏良……頼む!」
「奏良……お願い!」
「喰らえ!」
望とリノアの呼び掛けと同時に、奏良は距離を取って続けざまに四発の銃弾を放った。
弾は寸分違わず、かなめに命中する。
HPを示すゲージは少し減ったものの、いまだに赤色にはなっていない。
「あなた方の行動は予測済み――」
かなめの言葉が途切れる。
何故ならーー
「その行動も予測済みです!」
「……っ。あなたは……!」
イリスが跳躍し、かなめの不意を突くようなかたちで槍を振るってきたからだ。
『我が愛しき子よ』
かなめは辛くもその一撃を避けると、子守歌のように言葉を紡ぐ。
そして、自身の光の魔術のスキルを発動させた。
目的は当然、望達を明晰夢の世界へと誘うため。
しかしーー。
「同じ手は食わないからな!」
「同じ手は食わないから!」
強い断言によって、かなめの後追いの言葉は遮られる。
何故ならーー間合いを詰めた望とリノアがかなめの間近に迫っていたからだ。
「「はあっ!」」
望とリノアはその一刀に全てを託し、信也に向かって連なる虹色の流星群を解き放つ。
望の特殊スキルと愛梨の特殊スキル。
それが融合したように、かなめに巨大な光芒が襲いかかろうとする。
「「ーーっ」」
だが、再びリノアの位置が移動し、望と対面するかたちへと変えられてしまう。
「八方塞がりの状況のようだな」
かなめの動きを見つめた有は覚悟を決める。
かなめの『明晰夢』の力は、いまだ発動していない。
その好機を活かして、美羅の残滓と接触したいが、かなめはあくまでも望達の妨害に徹することに集中していた。
有は紘が語っていた特殊スキルの内容を呼び起こす。
「だが、美羅の器であるリノアは、『レギオン』と『カーラ』の者達にとって、決して失うことができないカードだ。リノアが意識を失えば、一時的とはいえ、あの時のように美羅の力は発動しないはずだぞ」
それは紘が以前、淡々と語った内容をなぞった言葉。
しかし、有には額面以上の重みがあった。
「でも、お兄ちゃん。吉乃信也さんの時と違って、リノアちゃんを気絶させるのは難しいよ」
「うむ。吉乃かなめの明晰夢の力は、理想の世界への誘い。吉乃信也の時のように、リノアを気絶させることはできないか」
花音が途方にくれたようにつぶやくと、有は訥々と答える。
特殊スキルの秘密に迫るもの。
それは今回の『サンクチュアリの天空牢』。
『レギオン』と『カーラ』が管轄しているダンジョン、もしくは彼らの拠点であるギルドホームに隠されているはずだ。
そして、その候補の中には常軌を逸したNPCであるニコットも含まれていた。
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