兄と妹とVRMMOゲームと

留菜マナ
留菜マナ

第四百八十九話 君の心に降るのは④

公開日時: 2024年6月21日(金) 16:30
文字数:1,102

望とリノアの剣先がかなめに迫ったその時ーー。


「「ーーっ」」


リノアの位置が移動し、望と対面するかたちへと変えられる。


「奏良……頼む!」

「奏良……お願い!」

「喰らえ!」


望とリノアの呼び掛けと同時に、奏良は距離を取って続けざまに四発の銃弾を放った。

弾は寸分違わず、かなめに命中する。

HPを示すゲージは少し減ったものの、いまだに赤色にはなっていない。


「あなた方の行動は予測済み――」


かなめの言葉が途切れる。

何故ならーー


「その行動も予測済みです!」

「……っ。あなたは……!」


イリスが跳躍し、かなめの不意を突くようなかたちで槍を振るってきたからだ。


『我が愛しき子よ』


かなめは辛くもその一撃を避けると、子守歌のように言葉を紡ぐ。

そして、自身の光の魔術のスキルを発動させた。


目的は当然、望達を明晰夢の世界へと誘うため。

しかしーー。


「同じ手は食わないからな!」

「同じ手は食わないから!」


強い断言によって、かなめの後追いの言葉は遮られる。

何故ならーー間合いを詰めた望とリノアがかなめの間近に迫っていたからだ。


「「はあっ!」」


望とリノアはその一刀に全てを託し、信也に向かって連なる虹色の流星群を解き放つ。

望の特殊スキルと愛梨の特殊スキル。

それが融合したように、かなめに巨大な光芒が襲いかかろうとする。


「「ーーっ」」


だが、再びリノアの位置が移動し、望と対面するかたちへと変えられてしまう。


「八方塞がりの状況のようだな」


かなめの動きを見つめた有は覚悟を決める。

かなめの『明晰夢』の力は、いまだ発動していない。

その好機を活かして、美羅の残滓と接触したいが、かなめはあくまでも望達の妨害に徹することに集中していた。


有は紘が語っていた特殊スキルの内容を呼び起こす。


「だが、美羅の器であるリノアは、『レギオン』と『カーラ』の者達にとって、決して失うことができないカードだ。リノアが意識を失えば、一時的とはいえ、あの時のように美羅の力は発動しないはずだぞ」


それは紘が以前、淡々と語った内容をなぞった言葉。

しかし、有には額面以上の重みがあった。


「でも、お兄ちゃん。吉乃信也さんの時と違って、リノアちゃんを気絶させるのは難しいよ」

「うむ。吉乃かなめの明晰夢の力は、理想の世界への誘い。吉乃信也の時のように、リノアを気絶させることはできないか」


花音が途方にくれたようにつぶやくと、有は訥々と答える。


特殊スキルの秘密に迫るもの。

それは今回の『サンクチュアリの天空牢』。

『レギオン』と『カーラ』が管轄しているダンジョン、もしくは彼らの拠点であるギルドホームに隠されているはずだ。

そして、その候補の中には常軌を逸したNPCであるニコットも含まれていた。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート