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留菜マナ
留菜マナ

第ニ百五話 星が溶けた世界で①

公開日時: 2021年4月11日(日) 16:30
文字数:1,167

「「みんな!」」


望達は目の前に現れるモンスター達を一掃しながら、有達のもとへと駆けつける。

だが、有達の周りは、完全にモンスター達によって取り囲まれていた。


「「はっ!」」


望とリノアは、モンスター達を跳躍して、一足飛びに有達の前に立った。

その瞬間、全てを確認することが、不可能なほどの攻撃が一斉に望達に殺到する。


「蒼の剣、頼む!」

「蒼の剣、お願い!」

「マスター、リノア様」


絶体絶命の危機を前にして、プラネット達の前に出た望とリノアは全ての攻撃を受け止めようと、それぞれの剣を構える。

流星のような光を放って、氷のつぶてを流れるような動きで弾くと、望とリノアは迫ってきたモンスター達の攻撃をいなした。


「……すごいな」


あっという間に、全ての攻撃を凌ぎきった望とリノアを前にして、勇太は唖然とした。


「俺も負けていられないな!」


望達の戦いぷりが、勇太の心に火を点ける。

露骨な戦意と同時に、勇太は一気にモンスター達との距離を詰めた。


『フェイタル・レジェンド!』


勇太は大剣を構え、大技をぶちかました。

勇太の放った天賦のスキルによる波動が、モンスター達を襲う。


「「はあっ!」」

「行くぜ!」


望とリノア、そして勇太の攻撃が、モンスター達を蹴散らしていく。

山のようにいたモンスター達が、次々と討ち果たされていった。


「行きます!」


裂帛の咆哮とともに、プラネットは力強く地面を蹴り上げた。


「はあっ!」


気迫の篭ったプラネットの声が響き、宙を舞っていた飛行モンスター達は次々と爆せていく。

やがて、有達を包囲していた、全てのモンスター達が消滅していった。


「モンスター達による包囲網からは、何とか脱出できたようだ」


全てのモンスター達を全滅させてみせた望達の姿を見て、有は安堵の吐息を漏らす。

合流した望達は、落とし穴によるトラップによって別れてから、今まで行った出来事についての情報交換を行う。

やがて、有は一呼吸置くと、決意を固めるように前に進み出る。


「望、勇太、リノア、徹、妹よ。吉乃信也の策略。ここから脱出する方法は困難を極めそうだ!」

「お兄ちゃん?」


狼狽する妹の様子に、有はあえて真剣な口調で続けた。


「恐らく、『サンクチュアリの天空牢』のクエストを達成することが、脱出への近道になりそうだな」

「……有。『サンクチュアリの天空牢』はもはや、中級者用ダンジョンとはいえない。上級者用ダンジョンだと考えた方がいいと思う」


有の方針に、奏良は突如、襲いかかってきたモンスター達を威嚇するように発砲しながら苦言を呈した。

有の表情が硬く強張ったのを見て、奏良は付け加えるように続ける。


「だが、『レギオン』と『カーラ』の介入は想定内だ。ただ、吉乃信也が『レギオン』のギルドホームにいるという話は鵜呑みしない方がいいな」

「そうだな」

「そうだね」


奏良の疑念に、望とリノアも警戒心を強めた。

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