「分かった。特殊スキルの力を解き放って、美羅の残滓の意識をこちらに向けさせるんだな」
「分かった。特殊スキルの力を解き放って、美羅の残滓の意識をこちらに向けさせるんだね」
有が呈示した作戦の概要に、望とリノアは肯定した。
「私、望くんと愛梨ちゃんの力を信じている。だって、望くんと愛梨ちゃんの力は希望の光だから」
花音は胸のつかえが取れたように宣言する。
そして、朝の光のような微笑みを望達に向けた。
信じているーー。
その言葉には何の根拠もなく、何かの保証には決してなり得ないことを知りながらも……。
花音が口にすると、まるでそれは既に約束された未来の出来事のように感じられた。
望の中で漲る力が全身を駆け巡る。
何物にも代えがたい花音の笑顔。
その笑顔を護りたいと望は切に願う。
『……みんなの力になりたい』
不意に愛梨の声が聞こえた。
それは望を介し、望の意味が付与された愛梨の想い。
「ああ、そうだな。俺はーーいや、俺達は諦めない!」
「うん、そうだね。私はーーいや、私達は諦めない!」
望とリノアは胸に灯った炎を大きく吹き上がらせる。
その瞬間、二人の剣からまばゆい光が収束する。
二人の剣からはかってないほどの力が溢れていた。
「「はあっ!」」
望とリノアはその一刀に全てを託し、美羅の残滓に向かって剣を振り下ろす。
「究極スキル……」
その瞬間、今まで反応しなかった美羅の残滓が言葉を発した。
彼女は辛うじてその一撃を躱すものの、その威力は凄まじく、大きく吹き飛ばされた。
「言葉を発した?」
「言葉を発したの?」
望とリノアがぽつりとつぶやく。
だが、美羅の残滓はそれには反応せず、佇んでいるだけだ。
不可解な空気に侵される中、望とリノアは率直に言う。
「あなたは誰だ?」
「あなたは誰?」
シンプルな言葉。
ストレートな疑問。
美羅の残滓だと分かっているにも関わらず。
向けられた問いかけに、彼女は少なからず面食らったようだ。
「私の名前は……」
「名前じゃない。今話しているあなた自身が自分を何者だと思っているのか聞いている」
「名前じゃない。今話しているあなた自身が自分を何者だと思っているのか聞いているの」
ほんの少し言い回しを変えただけの質問。
だが、問いの答えではなく、問いそのものが意味を持つような尋ね方。
「何者なのか……」
望とリノアの問いかけに、美羅の残滓は寸前までの穏やかな空気を残らず払拭した。
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