予測できていた望とリノアの即答には気を払わず、かなめは確かな事実を口にする。
「あなた方が如何に阻止しようとしても、美羅様の真なる力の発動は必ず行われます。その時、あなた方を通して、美羅様の神託が世界に降り注ぎます」
「俺は協力するつもりはない!」
「私は協力するつもりはない!」
望とリノアの断言すらも無視して、かなめは一拍おいて流れるように続ける。
「美羅様の真なる力の発動が行われたら、あなた方の認識も必ず変わります。これは、全て定められた事。世界の安寧のためなのです」
「「ーーっ」」
付け加えられた言葉に込められた感情に、望とリノアは戦慄した。
当然だ。
協力するかどうかについては、既に何度も問答し、結論が出ている。
協力しない。
望は何度も、そう答えたはずだ。
「蜜風望、そして、椎音愛梨。美羅様は、あなた方の力を必要としているのです。どうか、美羅様に力をお貸し下さい」
語尾を上げた問いかけのかたちであるはずなのに、かなめは答えを求めていない。
いや、答えは求めているのだ。
ーー協力する。
その決まりきった答えだけを。
「ーーくっ」
「ーーっ」
どうしようもなく不安を煽るかなめの懇願に、望とリノアは焦りと焦燥感を抑えることができずにいた。
花音は慌てたように声を上げる。
「どうして……そこまで美羅ちゃんの真なる力の発動にこだわるの?」
「この世界が美羅様を求めているからです」
「それじゃ、意味が分からないよ」
花音が本題を投げかければ、返ってきたのは冷めたような乾いた瞳。
「西村花音さん。いずれ来(きた)る未来、特殊スキルの使い手達は、私達の手中に入ります。そうすれば、あなたも自然と受け入れるはずです」
「そんなことないから!」
花音の即答に、ひたすら柔和なかなめの微笑に、かすかに苛立ちのようなものが混じる。
「ああ、俺達は絶対に受け入れないからな」
「うん、私達は絶対に受け入れないから」
花音の強い決意を前にして、剣を構えた望とリノアは同意を示した。
「心配するな、妹よ。このまま、美羅の真なる力の発動を阻止すれば、必ず勝機はある」
「うん。お兄ちゃん、そうだね」
杖を構えた有の宣言に、花音は人懐っこそうな笑みを浮かべて続ける。
「ここで諦める選択を選ぶなんて、私達らしくないもん。それに望くんと愛梨ちゃんの特殊スキルは奇跡の力だから」
「そうだな」
「そうだね」
まぶしいほどの花音の笑顔に、望とリノアは笑みの隙間から感嘆の吐息を漏らした。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!