望達と賢達の熾烈な攻防戦。
奏良は銃を構えながら、戦況の動きを見極めようとする。
奏良の視線の先には、賢と勇太が戦闘を繰り広げている姿があった。
「奏良よ、頼む」
「言われるまでもない」
有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、賢に向けて銃を構えた。
発砲音と弾着の爆発音が派手に響き渡る。
「行くぜ!」
奏良の首尾を信じて、勇太は賢の間合いに向かう。
だが、晴れた煙幕の向こうで展開していた光景は、望達の想像を超えていた。
賢は自身の剣を用いて、奏良の銃弾をことごとく叩き落としていたのである。
一つとして、まともに賢には着弾していない。
「くっ……」
勇太は必死にとんぼを切って、何とか賢の次撃の攻撃範囲から離脱する。
それを援護するように、望とリノアは剣を翻し、モンスターの動きを阻むように立ち回った。
「「勇太くん」」
望とリノアは活路を開くために、勇太に声を掛ける。
「力を貸してくれないか」
「力を貸してほしいの」
「何か、手があるのか?」
望とリノアの言葉に反応して、勇太がとらえどころのない空気を固形化させる疑問を口にした。
「俺達で、あのモンスターを食い止める。だが、恐らく、あのモンスターを倒す瞬間、リノアの座標を移動させられる可能性があるんだ。勇太くんには、転移させられたリノアの動きを止めてほしい」
「私達で、あのモンスターを食い止める。だが、恐らく、あのモンスターを倒す瞬間、私の座標を移動させられる可能性があるの。勇太くんには、転移させられたリノアの動きを止めてほしいの」
「分かった」
勇太は今までの情報を照らし合わせて、状況を掴もうとする。
「リノア。今度こそ、絶対に護るからな……」
勇太は望とリノアの想いに応えたくて、誓いの言葉を口にする。
それは彼が、これまで歩んできた道のりの末に手に入れた強さのように思えた。
積み上げた強さとともに、望達は『レギオン』に立ち向かう意志を示す。
「よーし、一気に行くよ!」
勇太のその想いを皮切りに、花音は跳躍し、モンスターへと接近した。
『クロス・リビジョン!』
今まさに花音達に襲いかかろうとしていたモンスターに対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。
花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った麻痺の痺れによって、モンスターは身動きを封じられた。
さらに追い打ちとばかりに、花音は鞭を振るい、何度も打ち据える。
「マスター。モンスターの討伐に問題ありません」
「そうだな」
「そうだね」
後方を警戒していたプラネットの言葉に、望とリノアは一呼吸置いて応える。
「ただ、『レギオン』の動向が気がかりーー」
プラネットが憂いを帯びた眼差しで『レギオン』に視線を向けた途端、後方から聞き覚えのある声が轟いた。
『ーー我が声に従え、光龍、ブラッド・ヴェイン!』
「ーーなっ!」
「ーーっ!」
望とリノアの驚愕と同時に、望達の目の前に光龍が現れる。
金色の光を身に纏った四肢を持つ光龍。
骨竜とさほど変わらない巨躯の光龍は、主である徹の指示に従って、望達に危害を加えようとした『レギオン』のギルドメンバー達を睥睨した。
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