「大丈夫だよね……」
「ああ、大丈夫だ」
「うん、大丈夫」
花音の不安の入り交じったつぶやきに、望とリノアは安心させるように応える。
あの部屋に赴くことによって、隠され続けていた真実が浮き彫りになるはずだ。
吉乃かなめさんのもとにたどり着いたら、俺達が愛梨さんがいる場所までの案内人になるはずだ。
敵に正体を気づかれるにしろ、気づかれないにしろーーここからは全ての力がぶつかり合う総力戦だ。
勇太は肌でその緊迫を感じると同時に、心の奥に満たされる戦意で胸が打ち震えた。
「「あの部屋は……!」」
やがて、『レギオン』のギルドメンバーに案内されて、望達は見覚えのある部屋の中に入った。
そこは以前、落とし穴によって落下した時、望達が行き着いた場所だった。
「盲点だったな。分断させられた時に放り込まれた部屋が、あの部屋に行くための鍵だったなんて……」
周囲を窺っていた勇太は、周囲の様子を見て痛々しく表情を歪ませる。
「とにかく、ここからは誘導に従うしかないな」
徹は気持ちを切り替えるように一呼吸置くと、改めて部屋を見渡した。
部屋には大きいテーブルとチェアが置かれている。
ただ、置き方はバラバラで散らばっており、幾つかのチェアは倒れていた。
あの時は特に気に留めなかった散乱の仕方だったが、この置き方には何か意味があるのかもしれない。
「ここだな」
望の思考に呼応するように、『レギオン』のギルドメンバーはチェアのひとつに触れる。
その瞬間、壁に備えられて沈黙していたはずの燭台のひとつが何の兆候もなく火を灯したのだ。
それからもチェアの並べ替えは続き、『レギオン』のギルドメンバーがもう幾つ目かも分からないギミックを解除すると、壁の一角が開いた。
望達は壁の先にあった通路を突き進む。
だが、進んだ先は行き止まりだった。
「あれ? 行き止まりだよ?」
「ここからは転送石を使って行くんだ」
花音の疑問に応えるように、『レギオン』のギルドメンバーは転送石を掲げる。
持っているアイテムが光り、望達は『レギオン』のギルドメンバーとともにその場から姿を消した。
「「ここは……」」
いつの間にか、望達の周囲の光景が変化していた。
壁は周囲に眩しく照らす黄金色に変わっている。
金色に輝く部屋は豪華絢爛で、まるで宝物庫のようだった。
「初めて、愛梨と出会った場所みたいなところに出たな」
「初めて、愛梨と出会った場所みたいなところに出たね」
望とリノアは神秘的な周囲の光景を目の当たりして驚きを口にする。
「あの部屋に赴くためには、転送石を用いる必要があったんだな」
「あの部屋に赴くためには、転送石を用いる必要があったんだね」
「ああ。ギミックの解除と転送石、どちらも僕達だけでは対処できなかったな」
望とリノアが気持ちを切り替えるように一呼吸置くと、奏良は改めて、自身の推測を確信へと変えた。
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