「有。これからは機械都市『グランティア』に赴くことを重点に置く必要がありそうだ」
奏良は腕を組んで考え込む仕草をすると、『アルティメット・ハーヴェスト』のメンバーの一人が提示した資料の情報を物言いたげな瞳で見つめる。
「奏良よ、その通りだ。しかし、どのような方法を用いて行く手段を確保するか、悩みどころだな」
「……あの、有様」
思案に暮れていた有を現実に引き戻したのは、躊躇いがちにかけられたプラネットの声だった。
「これからも電磁波の発信源を特定できるように頑張ります。機械都市『グランティア』にもご同行させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「もちろんだ、プラネットよ」
「ありがとうございます」
有の承諾に、プラネットは一礼すると強気に微笑んでみせた。
一悶着ありながらも、今後の話し合いはひとまずの一区切りをつける。
周囲に視線を巡らせていた花音は、興味津々の様子で勇太のもとを訪れると甘く涼やかな声で訊いた。
「ねえ、勇太くんとリノアちゃんって、小学校に入る頃に知り合ったんだよね。どちらから声をかけたの?」
「俺からだな」
「そうなんだねー」
勇太の答えに、花音は嬉々として声を弾ませる。
そこで勇太が核心に迫る疑問を口にした。
「望達は中学に上がった頃に知り合ったんだよな。確か、ゲーム内でーー」
「……ああ、その通りだ。このゲームをきっかけにな」
勇太の言葉に呼応するように、有は物憂げな表情で腕を組んだ。
徹もまた、意識を切り替えるように話に入ってくる。
「俺は『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドマスターである紘とその妹の愛梨とは、小学校に入る前に知り合って……なあ、紘」
「ああ、懐かしいな」
紘は昔日を呼び起こすように徹を見つめる。
三人が初めて出会った頃は明日を恐れることも、過去を嘆くこともなく、幸せな今だけがあった。
願わくば、いつまでも見ていたかったのかもしれない。
この胸の奥底を灼く焦燥にも似た、けれどより甘やかな過去の景色を。
「その頃から、俺は紘と愛梨と一緒に通学したりとかなり仲が良かったんだ」
「……かなり? そう思っているのは君だけではないのか?」
徹の発言に、奏良は納得できないように猜疑心を向けてくる。
「俺は愛梨としても生きているから、徹とも幼なじみのような感じがするな」
「私は愛梨としても生きているから、徹とも幼なじみのような感じがするね」
「そうだね」
望とリノアが咄嗟にそう言ってため息を吐くと、花音は元気づけるように望を見上げる。
話し合いは途中で脱線しつつも、一通りの会話が終わったところで、望達は『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドを出たのだった。
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