「お兄ちゃん、このままじゃ八方塞がりだよ……」
周囲に視線を巡らせていた花音が、焦るようにつぶやいた時だった。
「あっ……」
顔を上げた花音が小さな悲鳴を上げる。
いつの間にか、『レギオン』のギルドメンバー達が花音の前まで迫っていた。
「花音、多少のダメージは堪えろ」
「うわっ!」
「なんだ?」
花音に迫り来るモンスターを中心に、奏良が放った銃の弾が全方位に連射される。
放たれた弾は、対空砲弾のように相手の攻撃にぶつかり、『レギオン』のギルドメンバー達を怯ませた。
「マスターと愛梨様を渡すわけにはいきません!」
プラネットは吹っ切れた言葉ともに、両拳を迫ってきた『レギオン』のギルドメンバー達に叩きつけた。
それと同時に高濃度のプラズマが走り、爆音が響き渡る。
だが、倒すまでには至らない。
「このままでは勝てないな」
『レギオン』のギルドメンバー達を見据えながら、奏良は事実を冷静に告げた。
「奏良くん、奥の手とかないの?」
「せいぜい、弾に風の魔術を込めて放つしかできないな」
花音が恐る恐る尋ねると、奏良は自分と周囲に活を入れるように答える。
奏良は風の魔術を使い、弾に魔力を込めていった。
弾の外殻が次々と変色していく。
奏良くんの風の魔術で、何とか出来ないかな?
その様子を眺めていた花音は、この不利な状況を覆すために思考を重ねた。
奏良くんの風の魔術……?
その時、不意の閃きが花音の脳髄を突き抜ける。
「徹くん。カリリア遺跡の報酬で手に入れた『マナー・シールド』って、『アルティメット・ハーヴェスト』の人達も手に入れたんだよね」
「ああ」
花音が生じた疑問の答えは遅滞する事なく、徹によって示された。
「だけど、もう残っていないな」
「……そうなんだね」
花音の期待は見事に打ち砕かれた。
徹の答えに、花音は不満そうな眼差しを向ける。
だが、すぐに状況を思い出して、花音は徹に尋ねた。
「最初にボス討伐を行ったギルドのみに配布された伝説の武器って、星詠みの剣以外にもあるんだよね」
「ああ。アルビノの鞭、アサルトライフル、神速の弓だな」
花音が発した疑問に、徹は記憶を辿りながら応える。
「その武器って、『レギオン』の人達が持っているんだよね。誰が持っているのかな?」
「妹よ、確かにそうだな」
有もまた、花音と同じ疑問を抱いていた。
星詠みの剣は賢が使いこなしている。
だが、他の伝説の武器は誰の手に渡っているのだろうか。
しかし、その疑問に応えることもなく、賢は望達に視線を向けていた。
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