「だが、『サンクチュアリの天空牢』のどこに向かえばいいんだ? 行き当たりばったりな行動は勘弁してほしい」
「……分かっているよ」
状況説明を欲する奏良の言葉を受けて、徹はもはや諦めたように続ける。
「まずは情報収集だ。彼らがこの後、どこに向かうつもりだったのか、そこだけでも即急に判明させるつもりだからな」
「ああ」
徹の提案に、有は納得したように視線を周囲に飛ばす。
やがて、『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバー達が状況を報告するために戻ってくる。
「徹様」
「どうだった?」
徹に問い掛けられてから、『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバー達は恭しく礼をする。
「捕らえた者達の情報によりますと、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達は既に『サンクチュアリの天空牢』で待ち構えているとのことです。彼らは愛梨様を捕らえた後、ロビーで合流する手筈だったようです」
「陽動作戦が功を奏したか。マスカットの聖誕祭で手に入れたメイキングアクセサリーは有用だったな」
有は改めて、この策こそが最上だったと判断する。
マスカットの聖誕祭の射的コーナーにおける目玉景品。
それはイメージした衣装に見た目を変えることができるメイキングアクセサリーだった。
「うーん。愛梨ちゃんの格好のままだとすぐにバレると思うし、私はやっぱり、『カーラ』の人達と同じ格好にするね」
花音はそう応えると、メイキングアクセサリーを用いて白いフードを身に纏う。
「俺はどうするかな」
「私はどうしようかな」
望達全員がそれぞれ『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバーに変装して、周囲の目から逃れようと模索する。
「空には数多くの浮き島が点在している。その中には小型のダンジョンも複数あるだろう」
有は準備を終えると、空を見上げて塔までの方角を見定めた。
「プラネットよ、頼む」
「有様、『サンクチュアリの天空牢』の位置特定、お任せ下さい」
有の指示に、プラネットは誇らしげに恭しく頭を下げる。
「……っ! 有様、『サンクチュアリの天空牢』は以前、訪れた地点よりかなり離れた場所に移動しています」
プラネットが『サンクチュアリの天空牢』の位置を探っていると、奇妙な違和感に気がついた。
浮き島の座標が流れる雲に沿って点々と動いているのだ。
「浮き島は、雲と同様に動いているはずだ。別の場所に移動していてもおかしくはない」
プラネットの説明を聞いて、有は悩むように首を傾げる。
「よし、行くぞ! 『サンクチュアリの天空牢』へ!」
「ああ」
「うん」
有の号令の下、望達は効果を確かめるように飛行アイテムを掲げた。
すると、飛行アイテムが光り、浮力が働いたかのように、望達の身体を上昇させていく。
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