「奏良よ、頼む」
「言われるまでもない」
有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、銃を構える。
発砲音と弾着の爆発音が派手に響き渡った。
「あなた方の行動は予測済み――」
かなめの言葉が途切れる。
何故ならーー
「その行動も予測済みです!」
「……っ。あなたは……!」
見覚えのある少女が跳躍し、かなめの不意を突くようなかたちで槍を振るってきたからだ。
「なっ……!」
それを見た『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達の心中には、かなめが感じたものとは全く異なる緊張が走る。
「吉乃かなめ。あなたの相手は、私達が務めます!」
そこにいたのは、『アルティメット・ハーヴェスト』が管理するNPCの少女ーーイリスだった。
「突然、姿を現しただと?」
「鶫原徹の召喚した精霊の力ですね。鶫原徹が契約している精霊は様々な力を持っています。気配遮断を用いて、私達を欺くことなど、たわいもないのでしょう」
『カーラ』のギルドメンバー達の疑問に捕捉するように、かなめは動揺を落ち着かせるために呼吸を挟んだ。
徹は今回、複数の高位ギルドと遭遇することに備えて、予め契約している精霊『シルフィ』を呼んでいる。
『シルフィ』は音の遮断以外にも、その気になれば気配遮断、魔力探知不可まで行うことができた。
今回、徹は奇襲に備えて、イリスに対して気配遮断を用いていたのだ。
その分、魔力消耗は激しいが、望達を護るための最適解だった。
「『キャスケット』と『アルティメット・ハーヴェスト』。お兄様を追い詰めただけのことはありますね」
戦況に目を配っていたかなめが不安を端的に言い表す。
「私は蜜風望と椎音愛梨をご所望しております。あなたがその妨害に徹するというのでしたら相手になりましょう」
かなめが憂いを帯びた眼差しでイリスに視線を向けた途端、金色の光を身に纏った四肢を持つ光龍が立ち塞がる。
「『達』。当然、一人じゃないよな」
「なるほど。鶫原徹、そして『アルティメット・ハーヴェスト』が誇るNPCが私の相手ということですね」
「そういうことだ」
骨竜とさほど変わらない巨躯の光龍は、主である徹の指示に従って、イリスに危害を加えようとしたかなめを睥睨した。
「いいでしょう。あなた方を倒した後……」
かなめは祈りを捧げるように両手を絡ませて告げる。
「蜜風望、そして、椎音愛梨。女神様の完全な覚醒のために、おまえ達を頂きます」
「……っ」
かなめはあくまでも事実として突きつけてきた。
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