「これは……」
かなめの視界が開ける。
いつの間にか、天井に設置されていた全ての罠が消え失せていた。
「全ての罠を消滅させたのですね」
目の前で巻き起こる想定外の光景を前にして、かなめ達は思わず刮目してしまう。
望と愛梨の特殊スキルによる、この部屋への干渉。
望とリノアは文字どおり、剣を一振りしただけで、天井に設置されていた罠を全て消滅させてしまった。
それは奇跡のような所行(しょぎょう)。
「罠を全てを消滅させただと?」
「蜜風望は、女神様の基礎となった椎音愛梨としても生きています。やはり、女神様との波長が最も合う特殊スキルの使い手なのでしょう」
『カーラ』のギルドメンバー達の疑問に捕捉するように、かなめは軽やかにつぶやいた。
「蜜風望、椎音愛梨。……美羅様はあなた方をご所望しております。女神様のために、その全てを捧げなさい。あなた方の意思は、未来永劫、女神様の意思へと引き継がれていくのですから」
かなめの思惑どおり、望が愛梨に変われば、愛梨の特殊スキルの力により美羅の真なる力は発動するだろう。
だがーー。
「引き継がせるかよ!」
勇太の気迫がかなめを押す。
想いが乗った勇太の大剣がかなめを吹き飛ばした。
「……っ。あなたは……」
かなめは窮地に立たされた気分で息を詰める。
まるでその思惑は無為に終わる行為だったようにーー。
距離を取った瞬間、勇太は仕切り直す。
「行くぜ」
勇太は高位ギルドの猛者達に向かって身を投げ出した。
『フェイタル・レジェンド!』
勇太は大剣を構え、大技をぶちかました。
勇太の放った天賦のスキルによる波動が、『カーラ』の召喚のスキルの使い手達を襲う。
新たにモンスターを召喚しようとしていた彼らは後方に吹き飛ばされた。
かなめの助力に心血を注いでいた『カーラ』の召喚のスキルの使い手達は怯む。
「絶対にこの部屋の秘密を暴いてみせる!」
「くっ……」
勇太の決意に目を見張り、『カーラ』の召喚のスキルの使い手達は明確に言葉に詰まらせる。
「望達の邪魔はさせないからな!」
勇太は静かな闘志を纏って大剣を手に地を蹴った。
大剣に白金の闘気が伝っていく。
勇太はそれに呼応するように、大剣を振りかざし、剣閃を煌めかせる。
「これが今の俺に出せる全力だ!」
「……っ」
かなめが行動を起こす以前に、勇太はこの部屋に赴く前に覚えた新たなスキル技を披露した。
『フェイタル・クロノス!』
最高度の補正を受けた高速六連撃から、その場で舞い踊るように繰り出す七連斬、そして締めとばかりに振るわれる横薙ぎ三連閃。
一呼吸の間に十六連撃を繰り出す大技中の大技だ。
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