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留菜マナ
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第四百八十二話 夏の風に揺れる⑤

公開日時: 2024年5月27日(月) 07:30
文字数:1,055

「これは……」


かなめの視界が開ける。

いつの間にか、天井に設置されていた全ての罠が消え失せていた。


「全ての罠を消滅させたのですね」


目の前で巻き起こる想定外の光景を前にして、かなめ達は思わず刮目してしまう。

望と愛梨の特殊スキルによる、この部屋への干渉。

望とリノアは文字どおり、剣を一振りしただけで、天井に設置されていた罠を全て消滅させてしまった。

それは奇跡のような所行(しょぎょう)。


「罠を全てを消滅させただと?」

「蜜風望は、女神様の基礎となった椎音愛梨としても生きています。やはり、女神様との波長が最も合う特殊スキルの使い手なのでしょう」


『カーラ』のギルドメンバー達の疑問に捕捉するように、かなめは軽やかにつぶやいた。


「蜜風望、椎音愛梨。……美羅様はあなた方をご所望しております。女神様のために、その全てを捧げなさい。あなた方の意思は、未来永劫、女神様の意思へと引き継がれていくのですから」


かなめの思惑どおり、望が愛梨に変われば、愛梨の特殊スキルの力により美羅の真なる力は発動するだろう。

だがーー。


「引き継がせるかよ!」


勇太の気迫がかなめを押す。

想いが乗った勇太の大剣がかなめを吹き飛ばした。


「……っ。あなたは……」


かなめは窮地に立たされた気分で息を詰める。


まるでその思惑は無為に終わる行為だったようにーー。


距離を取った瞬間、勇太は仕切り直す。


「行くぜ」


勇太は高位ギルドの猛者達に向かって身を投げ出した。


『フェイタル・レジェンド!』


勇太は大剣を構え、大技をぶちかました。

勇太の放った天賦のスキルによる波動が、『カーラ』の召喚のスキルの使い手達を襲う。

新たにモンスターを召喚しようとしていた彼らは後方に吹き飛ばされた。

かなめの助力に心血を注いでいた『カーラ』の召喚のスキルの使い手達は怯む。


「絶対にこの部屋の秘密を暴いてみせる!」

「くっ……」


勇太の決意に目を見張り、『カーラ』の召喚のスキルの使い手達は明確に言葉に詰まらせる。


「望達の邪魔はさせないからな!」


勇太は静かな闘志を纏って大剣を手に地を蹴った。

大剣に白金の闘気が伝っていく。

勇太はそれに呼応するように、大剣を振りかざし、剣閃を煌めかせる。


「これが今の俺に出せる全力だ!」

「……っ」


かなめが行動を起こす以前に、勇太はこの部屋に赴く前に覚えた新たなスキル技を披露した。


『フェイタル・クロノス!』


最高度の補正を受けた高速六連撃から、その場で舞い踊るように繰り出す七連斬、そして締めとばかりに振るわれる横薙ぎ三連閃。

一呼吸の間に十六連撃を繰り出す大技中の大技だ。

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