「分かった。吉乃信也にリノアの意識を失わせるように仕向けるんだな」
「分かった。吉乃信也に私の意識を失わせるように仕向けるんだね」
駆け寄ってきた望とリノアが有が呈示した作戦の概要を共有する。
「それにしてもリノアの意識を失わせる方法と吉乃信也を捕らえる手段、どちらも難しいな……」
「それにしても私の意識を失わせる方法と吉乃信也を捕らえる手段、どちらも難しいね……」
望とリノアは剣を構え、活路を見出だすために周囲を見渡す。
戦いは加熱していく。
リノアの意識を失わせる方法、そしてこの戦いを指揮している信也を捕らえることの難しさを改めて実感した。
「でも、お兄ちゃん。吉乃信也さんにリノアちゃんの意識を失わせるようにするのは難しいと思うよ」
「妹よ、だからこそだ」
花音の懸念事項に、有は落ち着いた声音で言葉を紡いだ。
「吉乃信也によってリノアは転移させられる。だが、それには何らかの動作が必要のはずだ」
「なるほどな。敢えて望達を吉乃信也に近づけさせることで、その動きを見極めるのか」
奏良は銃を構えながら、戦況の動きを見極めようとする。
有が呈示した案。
信也の動作を止めることと連座して、リノアの意識を失わせて美羅の力を一時的に途絶えさせる。
それは無策よりはるかにいいが、少なくとも望とリノアをかなりの危険に晒すことになりかねない。
しかし、世界に生じる禍根を断つためには何らかの変化が必要だった。
奏良の視線の先には望とリノアが連携して、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達と戦闘を繰り広げている姿があった。
「奏良よ、望達のサポートを頼む」
「言われるまでもない」
有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、かなめに向けて銃を構えた。
発砲音と弾着の爆発音が派手に響き渡る。
「「はあっ!」」
跳躍した望とリノアの一撃が剣閃を煌めかせる。
しかし、再び召喚された巨躯のモンスターの無数の触手がそれを捌き、望とリノアに追撃を放つ。
「望くん、リノアちゃん、サポートは任せて!」
鞭を振るった花音が、望達に向かってくる攻撃を捌いていく。
「花音、ありがとうな」
「花音、ありがとう」
花音のアシストを得て、望とリノアはモンスターの猛攻から逃れる。
花音の鞭がモンスターの触手を絡め取り、その隙に望とリノアの刃が閃いた。
「これなら、どうだ?」
「これなら、どう?」
望とリノアの一閃が、モンスターの触手を切り裂いていく。
しかし、その瞬間、後方に控えていた『レギオン』の魔術の使い手達がモンスターのHPを回復する。
「回復は厄介だな」
奏良は射程範囲を保ちつつも、突破口を切り開くために動いていく。
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