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留菜マナ
留菜マナ

第十四話 その先の未来②

公開日時: 2020年11月6日(金) 16:00
文字数:1,378

カリリア遺跡の入口。

望達は追っ手を振り、遺跡の奥へと向かうために走っていった。


「くそっ! 待ちやがれ!」

「特殊スキルの使い手を仲間にできるチャンス。逃がさないぞ!」

「おい、今の聞いたか? あいつ、特殊スキルの使い手だって?」

「伝説の武器よりすごくねえ?」


先に遺跡に入っていた他のプレイヤー達も、望の存在に気づき、まるで呼び水のように集まってくる。


「わーい! 望くん、伝説の武器を超えたよ!」

「それどころじゃない」


両手を広げて喜ぶ花音をよそに、望は必死に遺跡の奥へと進んでいった。


「ふむ。この遺跡は意外と複雑だな。やはり、決められた時間までにボスのいる最奥部に向かうためには、奏良のスキルは必須か」


他のプレイヤー達から追いかけられながらも、有は再び、インターフェースを表示させて、遺跡のルートを再探索していく。

遺跡の内部、ここからはモンスターとの遭遇なしにはいかない。


「くっ!」


望は先導しながら、目の前に現れるモンスター達を屠っていった。


「望くんに手出しはさせないよ!」

「うわっ!」

「危ねえ!」


後方に控える花音は身を翻しながら、鞭を振るい、他のプレイヤー達を翻弄する。

前方に望、有は真ん中、後方に花音という隊列で突き進んでいった。


「あいつだ!」

「いたぞ! 遺跡攻略なんて後回しだ!」

「俺は、遺跡に行くことさえもままならないのか……」


先に遺跡攻略を行っていた他のプレイヤー達が、次々と望達の行く手を遮った。

とんでもないことを口にするプレイヤー達に、望は困ったようにため息をつく。

遺跡の入口での騒ぎが、特殊スキルの使い手を狙う連中の呼び水になったようで、更なるプレイヤー達を招き寄せていた。


「試してみるか」


言葉とともに、望は剣を手に地面を蹴った。


「ーーっ」


受けの姿勢を取ったプレイヤー達を見据え、互いの間合いに入る直前で望は立ち止まる。

そして、牽制するように剣を地面に放った。


「なっ?」

「空打ち?」


望の剣が振り下ろされると同時に、プレイヤー達の動揺がはっきりと感じ取れた。

空打ちーー。

それも地面に向かって放つという明らかなミス。

それがこの状況で起こるという不可解な事態に、プレイヤー達は驚愕した。

そして、それゆえに、そこに埋めようもない隙ができる。


『クロス・レガシィア!』


驚愕に目を見開いたプレイヤー達に対して、花音がそのまま、天賦のスキルで間隙を穿つ。

瞬間の隙を突いた花音のスキルに、ターゲットとなったプレイヤー達は完全に虚を突かれた。


「うわわああああっーーーー!!」


花音の鞭によって、宙に舞ったプレイヤー達は凄まじい勢いで地面へと叩き付けられた。

だが、それでも追いかけてくるプレイヤーの数は一向に減らない。


「お兄ちゃん! この間の初心者用ダンジョンでは、『アルティメット・ハーヴェスト』の人達しか望くんを狙ってこなかったのに、今回は大盛況だよ!」

「うむ。『創世のアクリア』の公式リニューアル当日のみに開催されるクエストに参加したのはまずかったようだな。しかし、妹よ、俺達は六人しかいないギルドだ。上級者クエストには、出勤している父さん、ギルドを管理している母さんを除いて、メンバー全員を投入しなくてはボスには勝てないぞ!」


有と花音が会話のキャッチボールをしている間も、プレイヤー達は血気盛んな様子で追いかけてくる。

望達によるカリリア遺跡の攻略は、まだ始まったばかりだ。

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