「美羅は、特殊スキルであるーー究極スキルそのもの。だから、俺達、特殊スキルの使い手とシンクロすることで、彼女は目覚め、俺達と同じ動作をするんだな」
「美羅は、特殊スキルであるーー究極スキルそのもの。だから、私達、特殊スキルの使い手とシンクロすることで、私は目覚め、私達と同じ動作をする」
前に紘が語った真実を思い返して、望とリノアは噛みしめるように反芻する。
ただ、今は、濁流みたいに押し寄せてくる感情に耐えるだけで精一杯だった。
特殊スキル。
世界を牛耳る力と謳われ、現実世界をも干渉する力。
そして、全ての世界そのものを改変させることすら可能な、万能の力。
世界の根源へと繋がる話に、望はふと座りの悪さを覚える。
「それにしても、どうして今回は『レギオン』がいないんだ?」
「それにしても、どうして今回は『レギオン』がいないの?」
「『レギオン』の方々はーー賢様は別の場所に出向いているからです」
「「別の場所に……?」」
どうしようもなく不安を煽るそのフレーズに、望とリノアは焦りと焦燥感を抑えることができなかった。
「プロトタイプ版のみに存在するダンジョンは、あなた方が知る限り、サンクチュアリの天空牢』のみですね」
「「それはーー」」
予測出来ていた望の言及に、かなめは訥々と語った。
望は改めて、かなめが口にした言葉を脳内で咀嚼する。
プロトタイプ版のみに存在するダンジョンーー。
「もしかして、他にもあるのか?」
「もしかして、他にもあるの?」
不可解な空気に侵される中、望とリノアは慄然とつぶやいた。
そうーー。
プラネットの事前調査で判明したことだ。
もし、今回のダンジョン調査で、特殊スキルの手がかりが得られる場所があるとすれば、『サンクチュアリの天空牢』しかないと思っていたのだ。
望の思いとは裏腹に、かなめは夢見るような表情を浮かべて応える。
「今回、あなた方が調査している範囲内のダンジョンでは、特殊スキルのーー究極のスキルの秘密に繋がる場所は残念ながらありません」
「「なっ!」」
想定外の答えに、望とリノアは絶句した。
「お兄様が告げていたはずです。『創世のアクリア』のプロトタイプ版には、あなた方の知らない事実が隠されている、と。だからこそ、あなた方はこのダンジョン調査依頼のクエストを選んだのですよね」
「「ーーっ」」
かなめの追及に、望とリノアは事態の重さを噛みしめる。
確かに、新たなダンジョンを選んだ発端は、信也のあの言葉を聞いたからだ。
しかし、それは望達が、『レギオン』と『カーラ』の術中に完全に嵌まっている事を意味した。
「新たなダンジョンに、特殊スキルのーー究極のスキルの秘密が隠されているのは事実です。ですが、それは『アルティメット・ハーヴェスト』の管轄内にあるダンジョンには存在しません」
「『アルティメット・ハーヴェスト』の管轄内にあるダンジョンには存在しないのか?」
「『アルティメット・ハーヴェスト』の管轄内にあるダンジョンには存在しないの?」
かなめの言葉に、望は戸惑いながらも疑問を口にした。
リノアもまた、不思議そうに同じ動作を繰り返す。
「はい。プロトタイプ版のダンジョンやフィールドの権限は、開発者側にあります。もちろん、秘匿情報などもこちらで管理させて頂いています」
「今まで『レギオン』と『カーラ』による大規模な計画が秘匿出来ていたように、プロトタイプ版でも開発者である特典を生かしているのか」
「今まで『レギオン』と『カーラ』による大規模な計画が秘匿出来ていたように、プロトタイプ版でも開発者である特典を生かしているの」
かなめから開発者の顛末を聞き、望とリノアは痛ましげな表情を見せる。
かなめは両手を広げて、静かな声音で同じ言葉を繰り返した。
「さあ、蜜風望、そして椎音愛梨。女神様のために、その全てを捧げなさい。あなた方の意思は、未来永劫、女神様の意思へと引き継がれていくのですから」
「何度も言うけれど、俺は協力するつもりはない」
「何度も言うけれど、私は協力するつもりはない」
かなめの戯れ言に、望とリノアは不満そうに表情を歪めた。
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