「吉乃信也が作戦の指揮を執っていた場所……。あの時、通信したり、遠隔操作で罠を設置していた場所か。そこに吉乃かなめがいるかもしれないな」
リノアへの募る想いを抱きながらも、勇太もまた、あの部屋へと想いを馳せる。
吉乃かなめなら、あの部屋について何か知っているかもしれないな。
勇太は寂しげにそう思った後、悩みを振り払うように首を横に振った。
「……いや、分からなくてもいい。あの部屋の秘密を探れば、機械都市『グランティア』に赴くことができるはずだ」
「「勇太くん」」
勇太の決意に、望とリノアは躊躇うように応える。
「今度こそ、絶対にリノアを救ってみせる」
勇太は背負っている大剣を見据えると、改めて『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンの奥へと視線を向ける。
勇太が今、対峙するべきはかなめだ。
そして、かなめ達への邪念よりも先に大切な幼なじみを守るという信念だった。
「今回も『サンクチュアリの天空牢』にはたくさんの罠が仕掛けられたり、多くのモンスターが召喚されているのかな?」
「妹よ、恐らくはそうだろう」
花音が途方に暮れたようにつぶやくと、有は置かれた状況を踏まえて応えた。
望達の正体が判明すれば、前回と同様に対処に追われることになるだろう。
「次は情報収集だな。周囲の情報を集めて、吉乃かなめが今、どこにいるのか聞いてみるしかないよな」
『レギオン』と『カーラ』から情報を得るのは容易ではない。
だからこそ、徹は敢えてそう結論づける。
あらゆる可能性を拾い集めるしかないと。
「情報を集めてか。君はどんな手段を用いて、『レギオン』と『カーラ』から情報を得るつもりだ」
奏良は腕を組み、少しだけ考えた様子をみせる。
「そもそも、既に僕達が今回の作戦の概要を共有していないことを怪しまれている。君が考えている手段で問いただしても話すとは限らない」
「……おまえ、いつも一言多いぞ」
奏良が非難の眼差しを向けると、徹はきっぱりと異を唱えてみせた。
「だったら、おまえは何か策があるのか?」
「当然だ」
徹が苦々しいとした顔で聞くと、奏良は満足げに応える。
「『シャングリ・ラの鍾乳洞』の目撃情報を頼りに、彼らが愛梨を捕らえに出向いて返り討ちにあったことをこの場にいる『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達は知らない」
『レギオン』と『カーラ』の内情を知るために望達が取れる最善の手段。
だからこそ、奏良は敢えてこう結論づけた。
「なら、それを利用するだけだ」
奏良の言葉に反応して、プラネットがとらえどころのない空気を固形化させる疑問を口にした。
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