按図索駿を発した花音に呆れの色を滲ませつつ、奏良は思考を重ねる。
花音に不意討ちが出来ないのなら、不意討ちが出来る環境を整えてやればいいだけの話かーー。
戦局全体を見極めていた奏良は、銃を構えると骨竜ではなく、『カーラ』のギルドメンバー達に対して範囲射撃をおこなう。
「ーーっ」
不意を突いた連続射撃は、骨竜を呼び出した『カーラ』のギルドメンバーも含めて、彼らを大いに怯ませる。
「喰らえ!」
「ーーっ!」
奏良が放った更なる銃弾の嵐が、『カーラ』のギルドメンバー達の動きを阻害した。
「「花音!」」
声に呼応するように、望達をブラインドして近づいていた花音が『カーラ』のギルドメンバー達にとっては死角から現れる。
「行くよ!」
花音の放った氷属性の飛礫アイテムが、意識を奏良に集中していた『カーラ』のギルドメンバー達へと叩きつけられた。
「くーーっ」
これに対して、『カーラ』のギルドメンバー達は攻撃を避けながらも、ロビーまでの道への防御を固める。
「よーし、さらに行くよ!」
その布陣を見た花音は、即座に判断した。
花音は裂帛の気合いと同時に、その周囲を固める『カーラ』のギルドメンバー達の元へと動く。
鞭を振るい、疾風の如き速さで距離を詰める。
花音は、ギルドメンバー達に反応させることさえ許さず、先制の一撃を叩き込むことに成功した。
一撃を叩き込むと即座に、囲まれないよう立ち回る。
「よし、今のうちに全て解除するぞ!」
それは絶好の好機だった。
有達はトラップを解除するため、混乱する『カーラ』のギルドメンバー達の只中を駆け抜ける。
「勇太くん、行くよ!」
「ああ、任せろ!」
花音と勇太は並走して、苛烈な連携攻撃を『カーラ』のギルドメンバー達に加えていった。
「行きます!」
「あの攻撃を、この状況で喰らうのはまずい! 一旦、下がれ!」
プラネットは吹っ切れた言葉ともに、両拳を『カーラ』のギルドメンバー達に叩きつけようとした。
それと同時に高濃度のプラズマが走り、爆音が響き渡る。
煙が晴れると、ぎりぎりのところで回避した『カーラ』のギルドメンバー達は大きく後方に下がっていた。
だが、それでも『カーラ』のギルドメンバー達は前に進み出て、行く手を阻むように包囲を固める。
「切りがないな」
「切りがないね」
包囲を崩そうしても、すぐに強固な陣形を組まれてしまう。
望とリノアは剣を構え、活路を見出だすために周囲を見渡した。
しかし、望とリノアは召喚されたモンスター達に再生能力を付与させないためにも、かなめの目を誘導してしなくてはならない。
必然的に、信也と『カーラ』のギルドメンバー達の対策は花音達に任せることになる。
望とリノアが駆け出し、かなめに向かって一閃したーーその瞬間だった。
「「ーーっ」」
リノアの位置が移動し、望と対面するかたちへと変えられる。
望とリノアの鍔迫り合いは一瞬で終わり、高い音を響かせて離れた二人は、そこから驚異的な剣戟の応酬を見せた。
互いの剣技は、きっちり打ち消し合う一閃で処理される。
高度で複雑な剣閃の応酬。
だが、それはリノアの座標をずらされることで、かなめには届かない。
「「ーーっ!」」
このまま続けても埒が明かない状況に、望とリノアは咄嗟に急制動をかける。
「私達から逃げる必要はありません」
その時、凛とした声がロビー内に響き渡った。
前に進み出たかなめは、無感動に望を見つめる。
「あなた方が女神様とシンクロすることで、あまねく人々を楽園へと導くことができるのです。これからあなたがおこなう功績は、未来永劫、称えられるでしょう」
かなめは両手を広げて、静かな声音で告げた。
「さあ、蜜風望、そして椎音愛梨。女神様のために、その全てを捧げなさい。あなた方の意思は、未来永劫、女神様の意思へと引き継がれていくのですから」
「悪いけれど、俺は協力するつもりはない」
「悪いけれど、私は協力するつもりはない」
かなめの戯れ言に、望とリノアは不満そうに表情を歪める。
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