「リノアちゃんの移動を止めないと、望くんが思うように戦えないね」
花音が鞭を振るい、モンスター達を吹き飛ばした。
だが、さらに五体の影が地上からこちらへと駆けてくるのが見える。
「よーし、距離を取れる場所に行けるまで足止めするよ!」
裂帛の咆哮とともに、花音は力強く地面を蹴り上げた。
『クロス・バースト!』
今まさに望達に襲いかかろうとしていたモンスター達に対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。
花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った封印の効果によって、モンスター達は全ての特性を封じられた。
「『再生能力』が付与されているモンスターには、お兄ちゃんが事前に用意したアイテムで虚を突くよ」
花音の放った氷属性の飛礫アイテムが、次々とモンスター達へと叩きつけられていく。
これに対して、モンスター達は攻撃を避けながらも、行く手を阻むように防御を固めた。
「飛礫アイテムを用いれば、モンスターの注意を向けられるだろうな」
戦局全体を見極めていた奏良は、銃を構えるとモンスター達ではなく、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達に対して範囲射撃をおこなう。
「ーーっ」
不意を突いた連続射撃は、新たにモンスターを呼び出そうとしていた『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバーも含めて、彼らを大いに怯ませる。
「喰らえ!」
「ーーっ!」
奏良が放った更なる銃弾の嵐が、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達の動きを阻害した。
「プラネットちゃん、モンスターの動きを止めて!」
「お任せください!」
声に呼応するように、花音達をブラインドして近づいていたプラネットが、モンスター達にとっては死角から現れる。
「逃がしません!」
プラネットは吹っ切れた言葉ともに、両拳を花音の攻撃から逃れたモンスター達に叩きつけた。
それと同時に高濃度のプラズマが走り、爆音が響き渡る。
しかし、それはモンスター達の動きを止めただけで倒すには至らない。
有が罠を解除するまでの時間稼ぎ。
だが、それでも追撃するモンスター達の猛攻は止まらない。
「美羅の特殊スキルは、全ての人々にご加護を与え、一部の者達に神のごとき力ーー『明晰夢』を授ける力か」
「美羅の特殊スキルは、全ての人々にご加護を与え、一部の者達に神のごとき力ーー『明晰夢』を授ける力」
望とリノアは瞬きを繰り返しながら、かなめが語った美羅の特殊スキルの内容を思い出してつぶやいた。
「有が全ての罠を解除するまで、ここを防衛するのは厳しいな」
「有が全ての罠を解除するまで、ここを防衛するのは厳しいね」
それは無策よりはるかにいいが、かなめの『明晰夢』の力は不明瞭だ。
少なくとも地上で接近戦を仕掛けている徹とイリス、そして、勇太はかなりの危険を伴うことになりかねない。
しかし、世界に生じる禍根を断つために、そしてこの状況を変えるためには何らかの変化が必要だった。
そして……。
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