「鶫原徹、素晴らしい力ですね。ですが、それだけの魔術を用いれば、魔力の消耗は激しいはずです」
上空と地上の下地。その着眼点。
徹とイリスの高度な連携が織り成す中、かなめは確かな事実を口にする。
「あなた方の体力と魔力が尽きた瞬間が最後です。蜜風望、そして、椎音愛梨。女神様の完全な覚醒のために、おまえ達を今度こそ頂きます」
かなめは自らの矜持を持って運命の天秤を傾けていく。
その瞳の奥に在るのは問いではなく、確信だった。
「望達に手を出させないからな!」
徹がそう叫ぶと、光龍はそれに応えるように重い唸りを上げて『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達に襲いかかった。
一筋の閃光が空間を切り裂いて、彼らを大きく吹き飛ばす。
その隙に、望達は最上部にたどり着く。
「有様、ここから禍々しい気配を感じます」
『元素還元!』
有はプラネットの危険感知をもとに、天井に向かって杖を振り下ろす。
有の杖から放射状の光が放たれる。
その光がある場所に触れた途端、とてつもない衝撃が周囲を襲った。
天井の一部が、まるで蛍火のようなほの明るい光を撒き散らし、崩れ落ちるように消滅したのだ。
「天井に穴……?」
「待て、妹よ! そこから先は、罠が仕掛けられている!」
杖を構えた有は、最上部の更なる上へと赴こうとしていた花音を呼び止める。
「ーーっ!」
有の制止と同時に、浮上しようとしていた花音は強引に急制動をかけた。
その瞬間、花音の頭上で、凄まじい爆音が聞こえた。
「妹よ。ここから先は、危険な罠が設置されている」
有は警告するように望達を手で制した。
「『避雷針』。恐らく、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達が予め、仕掛けていたものだろう。いろいろな場所に仕掛けることができ、その場所に触れた者に一定のダメージとスタン効果を発生させることができるからな」
「えっー! お兄ちゃん、罠があるの!」
それは花音達にとって、全く予想だにしていなかった言葉だった。
「爆破トラップ……!」
色めき立って、勇太は辺りを見回す。
奏良もプラネットも、険しい表情で最上部を傾注していた。
「ああ。『避雷針』は、浮遊物が通り過ぎた際にも爆破する危険な代物だ。迂闊に天井の先に踏み込まない方がいいだろう」
有が咳払いをして、落ち着いた口調で説明すると、奏良は身構えていた銃を下ろす。
「爆破か。魔術や遠距離攻撃にも反応するから、厄介だな」
「やっぱり、この先に何かがあるのかな」
奏良の宣告に、花音は名残惜しそうな眼差しを向ける。
だが、すぐに状況を思い出して、花音は興味津々な様子で尋ねた。
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