「だったら、突破口を開くだけだ!」
その決意が勇太の心に火を点ける。
露骨な敵意と同時に、勇太は一足飛びにかなめとの距離を詰めた。
『フェイタル・レジェンド!』
勇太は大剣を構え、大技をぶちかました。
勇太の放った天賦のスキルによる波動が、かなめ達を襲う。
「かなめ様!」
「必要ありません」
片や、『カーラ』のギルドメンバー達が進み出るが、かなめは無機質な口調で制した。
『我が愛しき子よ』
「「ーーっ」」
かなめは子守歌のように言葉を紡ぐと、自身の光の魔術のスキルを発動させようとする。
望の周りに魔方陣のような光が浮かぶ。
だがーー。
「望、リノア」
「「……シルフィ!」」
すんでのところで、シルフィが弾かれたように姿を見せる。
矢面(やおもて)に立った彼女が、咄嗟に光の魔術を遮断したことで、望は魔方陣から逃れられたのだった。
「かなめ様の光の魔術を防いだだと?」
「鶫原徹の召喚した精霊の力ですね。鶫原徹は複数、召喚の契約を交わすことができる使い手。召喚者との距離が離れた状態で使役することなど、たわいもないのでしょう」
『カーラ』のギルドメンバー達の疑問に捕捉するように、かなめは軽やかにつぶやいた。
徹は今回、複数の高位ギルドと遭遇することに備えて、予め契約している精霊『シルフィ』を呼んでいた。
『シルフィ』は音の遮断以外にも、その気になれば気配遮断、魔力探知不可まで行うことができる。
その分、魔力消耗は激しいが、望達をシンクロから護るための最適解だった。
「いつから付けられていたんだ?」
奏良が警戒するように周囲を見渡すと、いつの間にか、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバーであろう者達が通路の入口を封鎖している。
メンバー全員、気配を消していたためか、望達はこの時まで背後にいた彼らの存在に気づかなかった。
「多勢に無勢だな」
「気配遮断はシルフィ以外の精霊も使えるからな」
目の前の不穏な光景に、勇太と徹の背中を嫌な汗が流れる。
しかし、二人の動揺をよそに、彼らは強固な防衛線を築き上げていた。
「お兄ちゃん、どうしたらいいのかな?」
「妹よ、心配するな。今、突破口を探している」
花音の悲痛な想いに応えるべく、有は周囲を窺ったが、他の出口も、包囲の一角を切り崩す術も見つからない。
「ふむ。この部屋から出るためには、やはりこの部屋の秘密を探ることが必須か」
『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達の猛攻を回避しながらも、有はインターフェースを表示させて、これまで得た情報ーー部屋からロビーまでのルートを検索していった。
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