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留菜マナ
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第四百五十七話 死者殺しの魔術士④

公開日時: 2024年3月1日(金) 16:30
文字数:1,043

「だったら、突破口を開くだけだ!」


その決意が勇太の心に火を点ける。

露骨な敵意と同時に、勇太は一足飛びにかなめとの距離を詰めた。


『フェイタル・レジェンド!』


勇太は大剣を構え、大技をぶちかました。

勇太の放った天賦のスキルによる波動が、かなめ達を襲う。


「かなめ様!」

「必要ありません」


片や、『カーラ』のギルドメンバー達が進み出るが、かなめは無機質な口調で制した。


『我が愛しき子よ』

「「ーーっ」」


かなめは子守歌のように言葉を紡ぐと、自身の光の魔術のスキルを発動させようとする。

望の周りに魔方陣のような光が浮かぶ。

だがーー。


「望、リノア」

「「……シルフィ!」」


すんでのところで、シルフィが弾かれたように姿を見せる。

矢面(やおもて)に立った彼女が、咄嗟に光の魔術を遮断したことで、望は魔方陣から逃れられたのだった。


「かなめ様の光の魔術を防いだだと?」

「鶫原徹の召喚した精霊の力ですね。鶫原徹は複数、召喚の契約を交わすことができる使い手。召喚者との距離が離れた状態で使役することなど、たわいもないのでしょう」


『カーラ』のギルドメンバー達の疑問に捕捉するように、かなめは軽やかにつぶやいた。

徹は今回、複数の高位ギルドと遭遇することに備えて、予め契約している精霊『シルフィ』を呼んでいた。

『シルフィ』は音の遮断以外にも、その気になれば気配遮断、魔力探知不可まで行うことができる。

その分、魔力消耗は激しいが、望達をシンクロから護るための最適解だった。


「いつから付けられていたんだ?」


奏良が警戒するように周囲を見渡すと、いつの間にか、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバーであろう者達が通路の入口を封鎖している。

メンバー全員、気配を消していたためか、望達はこの時まで背後にいた彼らの存在に気づかなかった。


「多勢に無勢だな」

「気配遮断はシルフィ以外の精霊も使えるからな」


目の前の不穏な光景に、勇太と徹の背中を嫌な汗が流れる。

しかし、二人の動揺をよそに、彼らは強固な防衛線を築き上げていた。


「お兄ちゃん、どうしたらいいのかな?」

「妹よ、心配するな。今、突破口を探している」


花音の悲痛な想いに応えるべく、有は周囲を窺ったが、他の出口も、包囲の一角を切り崩す術も見つからない。


「ふむ。この部屋から出るためには、やはりこの部屋の秘密を探ることが必須か」


『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達の猛攻を回避しながらも、有はインターフェースを表示させて、これまで得た情報ーー部屋からロビーまでのルートを検索していった。

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