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留菜マナ
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第ニ百四十八話 黄昏時の邂逅④

公開日時: 2021年5月24日(月) 16:30
文字数:1,422

「変化なしか」

「変化なしね」

「そうなんだね」


赤みがかかった髪を揺らした花音が、顔を俯かせて声を震わせる。

すると、望とリノアはそんな彼女の気持ちを汲み取ったのか、頬を撫でながら照れくさそうにぽつりとつぶやいた。


「花音。俺の想いに愛梨が応えた場合、愛梨と入れ替わる。そして逆に、愛梨の想いに俺が応えた場合、蒼の剣が力を増すことになる。それは、リノアがいる時でも変わらないはずだ」

「花音。私の想いに愛梨が応えた場合、愛梨と入れ替わる。そして逆に、愛梨の想いに私が応えた場合、蒼の剣が力を増すことになる。それは、私がいる時でも変わらないはずだから」

「……うん」


望とリノアの説明を聞いて、花音は勇気をもらったように肯定する。

望とリノアは一呼吸置いて、静かに互いの剣を構えた。


みんなを守る力がほしいーー。


それは、望自身のスキルを使えば叶うと信じている。

望とリノアは目を閉じて、愛梨の想いに応えようとした。

愛梨の想いに応える術はないのかもしれない。

今、この場で、特殊スキルを使うことができるとは限らない。

それでも、望は諦めなかった。


『……みんなの力になりたい』


不意に愛梨の声が聞こえた。

それは望を介し、望の意味が付与された愛梨の想い。


「ああ、そうだな。俺はーーいや、俺達は諦めない!」

「うん、そうだね。私はーーいや、私達は諦めない!」


顔を上げた望とリノアは、胸に灯った炎を大きく吹き上がらせた。

望とリノアは前を見据えて、この世界で、たった一つだけの自身のスキルを口にする。


『『魂分配(ソウル・シェア)!』』


そのスキルを使うと同時に、それぞれの剣からまばゆい光が収束する。

二人の剣からは、かってないほどの力が溢れていた。

望とリノアが剣を掲げると、さらなる輝きを発する。


「望くん、リノアちゃん、すごーい!」

「上手く使いこなせるかは分からないけれどな」

「上手く使いこなせるかは分からないけれどね」


花音の言い分に、望とリノアは少し逡巡してから言った。

その指摘に、花音は信じられないと言わんばかりに両手を広げる。


「やっぱり、リノアちゃんがいる時も、特殊スキルは問題なく使えるんだね」

「ああ」

「うん」


花音の咄嗟の疑問に、望とリノアは戸惑いながらも答えた。


「わーい! 望くん、リノアちゃん、すごーい!」

「花音、ありがとうな」

「花音、ありがとう」


喜色満面で喜び勇んだ花音の姿を見て、望とリノアは苦笑する。

望とリノアは仕切り直すと、残りのモンスター達へと対峙した。


「「これで決める!」」


そのタイミングで、望とリノアは剣を掲げると、連なる虹色の流星群を一閃とともに放つ。

望の特殊スキルと愛梨の特殊スキル。

それが融合したように、モンスター達に巨大な光芒が襲いかかる。

一片の容赦もない二人の一振りを受けて、モンスター達が消滅していった。

だが、残り三体のモンスターが、望とリノアの一閃から難を逃れていた。


「「あと、残り三体!」」

「リノア、任せろ!」


望達の戦いぷりが、勇太の心に火を点ける。

露骨な戦意と同時に、勇太は一気にモンスター達との距離を詰めた。


『フェイタル・ドライブ!』


勇太が大きく大剣を振りかぶり、光の刃が波動のようにモンスター達へと襲いかかった。

万雷にも似た轟音が響き渡る。


「ーーーーガアアッ!」


迷いのない一閃とともに、勇太の強烈な一撃を受けて、モンスター達は怯んだ。

モンスター達のHPが一気に減少する。

頭に浮かぶゲージは0になり、全てのモンスター達がゆっくりと消えていった。

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