「変化なしか」
「変化なしね」
「そうなんだね」
赤みがかかった髪を揺らした花音が、顔を俯かせて声を震わせる。
すると、望とリノアはそんな彼女の気持ちを汲み取ったのか、頬を撫でながら照れくさそうにぽつりとつぶやいた。
「花音。俺の想いに愛梨が応えた場合、愛梨と入れ替わる。そして逆に、愛梨の想いに俺が応えた場合、蒼の剣が力を増すことになる。それは、リノアがいる時でも変わらないはずだ」
「花音。私の想いに愛梨が応えた場合、愛梨と入れ替わる。そして逆に、愛梨の想いに私が応えた場合、蒼の剣が力を増すことになる。それは、私がいる時でも変わらないはずだから」
「……うん」
望とリノアの説明を聞いて、花音は勇気をもらったように肯定する。
望とリノアは一呼吸置いて、静かに互いの剣を構えた。
みんなを守る力がほしいーー。
それは、望自身のスキルを使えば叶うと信じている。
望とリノアは目を閉じて、愛梨の想いに応えようとした。
愛梨の想いに応える術はないのかもしれない。
今、この場で、特殊スキルを使うことができるとは限らない。
それでも、望は諦めなかった。
『……みんなの力になりたい』
不意に愛梨の声が聞こえた。
それは望を介し、望の意味が付与された愛梨の想い。
「ああ、そうだな。俺はーーいや、俺達は諦めない!」
「うん、そうだね。私はーーいや、私達は諦めない!」
顔を上げた望とリノアは、胸に灯った炎を大きく吹き上がらせた。
望とリノアは前を見据えて、この世界で、たった一つだけの自身のスキルを口にする。
『『魂分配(ソウル・シェア)!』』
そのスキルを使うと同時に、それぞれの剣からまばゆい光が収束する。
二人の剣からは、かってないほどの力が溢れていた。
望とリノアが剣を掲げると、さらなる輝きを発する。
「望くん、リノアちゃん、すごーい!」
「上手く使いこなせるかは分からないけれどな」
「上手く使いこなせるかは分からないけれどね」
花音の言い分に、望とリノアは少し逡巡してから言った。
その指摘に、花音は信じられないと言わんばかりに両手を広げる。
「やっぱり、リノアちゃんがいる時も、特殊スキルは問題なく使えるんだね」
「ああ」
「うん」
花音の咄嗟の疑問に、望とリノアは戸惑いながらも答えた。
「わーい! 望くん、リノアちゃん、すごーい!」
「花音、ありがとうな」
「花音、ありがとう」
喜色満面で喜び勇んだ花音の姿を見て、望とリノアは苦笑する。
望とリノアは仕切り直すと、残りのモンスター達へと対峙した。
「「これで決める!」」
そのタイミングで、望とリノアは剣を掲げると、連なる虹色の流星群を一閃とともに放つ。
望の特殊スキルと愛梨の特殊スキル。
それが融合したように、モンスター達に巨大な光芒が襲いかかる。
一片の容赦もない二人の一振りを受けて、モンスター達が消滅していった。
だが、残り三体のモンスターが、望とリノアの一閃から難を逃れていた。
「「あと、残り三体!」」
「リノア、任せろ!」
望達の戦いぷりが、勇太の心に火を点ける。
露骨な戦意と同時に、勇太は一気にモンスター達との距離を詰めた。
『フェイタル・ドライブ!』
勇太が大きく大剣を振りかぶり、光の刃が波動のようにモンスター達へと襲いかかった。
万雷にも似た轟音が響き渡る。
「ーーーーガアアッ!」
迷いのない一閃とともに、勇太の強烈な一撃を受けて、モンスター達は怯んだ。
モンスター達のHPが一気に減少する。
頭に浮かぶゲージは0になり、全てのモンスター達がゆっくりと消えていった。
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