「新たなダンジョンに、特殊スキルの秘密が隠されているはずだ。だが、ダンジョンの構造は、吉乃信也達が自由に変えることができるのか」
「新たなダンジョンに、特殊スキルの秘密が隠されているはず。だけど、ダンジョンの構造は、吉乃信也達が自由に変えることができるのよね」
望とリノアは、今までの情報を照らし合わせて、状況を掴もうとする。
「有、これからどうするんだ?」
「牢獄へと続く道を探すつもりだ」
奏良の疑問を受けて、有はインターフェースで表示した『サンクチュアリの天空牢』のマップを見つめる。
「牢獄か。やはり、最深部の牢にたどり着いた時点で、クエスト達成の表示がされるからか」
「ああ。クエストを達成すれば、吉乃信也達も何かしらの動きを見せるはずだからな。ダンジョン脱出用のアイテムを使えるような状況に導くことができるだろう」
奏良の言及に、有は落ち着いた口調で答える。
「でも、お兄ちゃん。何もしてこない可能性もあるんじゃないのかな?」
「その通りだ、妹よ。だからこそ、最深部の牢に行く必要がある。クエストを達成すれば、『氷の結晶』が手に入れるはずだ。『氷の結晶』には、『潜水アイテム』を作る以外にも様々な使い道がある。新しいアイテムを作成すれば、このダンジョンから脱出する目処が立つかもしれないからな」
花音が声高に疑問を口にすると、有は意味ありげに表情を緩ませた。
「すごーい! さすが、ギルドマスターのお兄ちゃんだね!」
有の思慮深さに、花音は両手を広げて歓喜の声を上げる。
居ても立ってもいられなくなったのか、花音はモンスターに攻撃する際の身振り手振りを加えながら飛び跳ねた。
「お兄ちゃん、牢獄って、どんなモンスターが出るのかな? どんな相手でも、私の天賦のスキルで倒してみせるよ!」
「花音。まだ、牢獄までの道すら把握していない。そして、少し場所をわきまえてくれ」
花音が自信満々で告げると、奏良は呆れたように視線を周囲に飛ばす。
花音が奏良の視線を追った先には、リノアの両親が穏やかに望達の様子を見守っていた。
「その、お騒がせしてしまってごめんなさい」
リノアの両親の反応に、花音は気まずい表情を浮かべて謝罪する。
「よし、このまま、牢獄へ向かうぞ! これからのことは戦闘を繰り広げながら話し合う」
「ああ、分かった」
「うん、分かった」
有の指示に、望とリノアは花音の腕を引いて、ダンジョンの奥へと向かった。
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