銘々の時間が経過する。
「有様、ここから禍々しい気配を感じます」
『元素還元!』
有はプラネットの危険感知をもとに、床に向かって杖を振り下ろす。
有の杖から、放射状の光が放たれる。
その光が、避雷針がある場所に触れた途端、とてつもない衝撃が周囲を襲った。
避雷針が、まるで蛍火のようなほの明るい光を撒き散らし、崩れ落ちるように消滅したのだ。
「全て解除するまで、先行きは長そうだな」
「ロビーには、どのくらいの敵がいるのかな?」
有の切羽詰まった声は、花音の高らかな疑問に吸い込まれて消える。
有が罠を解除している間、望達は改めて、今後のことを話し合う。
「ロビーには、かなりの手練れのモンスター達が配置されているだろうな。もはや、脱出することすら困難なダンジョン。あり得ないな」
「俺達の動向はお見通しみたいだな」
「……出入口が封鎖されているダンジョンか。どんな対策を立てれば、いいんだろうな」
奏良と徹の懸念に後押しされるように、勇太は戦慄した。
「そうだな。せめて、突破口が開けたらいいんだけどな」
「そうだね。せめて、突破口が開けたらいいんだけど」
勇太の疑念に応えるように、望とリノアが唱和する。
「「はあっ!!」」
望とリノアは一閃し、目まぐるしく出現するモンスターを葬り去った。
「……私達も、お兄ちゃん達のお手伝いできることはないかな」
鞭を振るっていた花音が複雑な心境で、作業を進める有達を見守る。
モンスター達の猛攻を食い止めながらも、望達は有達が罠を解除していくのを見届けていた。
「よし、今のうちに全て解除するぞ!」
有は微塵も引かない態度で一つ、また一つと罠を解除していった。
そんな有を補佐しながら、プラネットは瓦礫の只中を駆け抜ける。
やがて、有達の手によって、全ての罠が解除された。
「今度は大丈夫かな?」
花音は細心の注意を払って、最深部の牢へと踏み込む。
『このクエストは終了しました。クエスト達成、おめでとうございます』
その瞬間、戦闘を行っていた望達の前にクエスト終了のメッセージが表示された。
それと同時に、クエストの報酬である10000ポイントと氷の結晶五個が手に入る。
「……クエスト、終了したんだね」
花音が複雑な心境で、メッセージを見上げた。
クエストそのものが終了したとはいえ、ここからは帰還するために、信也達が待ち構えているロビーに赴くことになる。
敵の目を掻い潜るための突破口を見出だす必要があった。
「有、これからどうするんだ?」
「ロビーに向かうつもりだ」
奏良の疑問を受けて、有はインターフェースで表示した『サンクチュアリの天空牢』のマップを見つめる。
「ロビーか。やはり、そこしか出口はないんだな」
「ああ。それが解っているからこそ、吉乃信也達はそこで待ち構えているのだろう」
奏良の言及に、有は落ち着いた口調で答える。
「お兄ちゃん。ロビーに行く前に、新しいアイテムの生成と対策を立てるんだよね?」
「その通りだ、妹よ。だからこそ、クエストを達成して『氷の結晶』を手に入れる必要があった」
花音が声高に疑問を口にすると、有は意味ありげに表情を緩ませた。
「氷の結晶があれば、氷属性の飛礫アイテムと魔弾アイテムを作成出来るからな。ロビーに存在するトラップには、全員で一斉に対処を行うことができるはずだ」
「さすが、お兄ちゃん!」
有の発言に、花音は両手を広げて歓喜の声を上げる。
だが、花音はすぐに思い出したように唸った。
「でも、ロビーには『カーラ』の人達がいるんだよね。トラップの解除、出来るかな」
「そうだな。戦闘しながら、トラップを解除するのは至難の技だな」
「そうね。戦闘しながら、トラップを解除するのは至難の技だね」
花音の躊躇いに、望とリノアもまた、不安を抱いていた。
「よし、まずは、この牢獄から休憩ポイントに向かうぞ!」
「ああ。ひとまず安全な場所で、アイテム生成と作戦を練らないとな」
「うん。ひとまず安全な場所で、アイテム生成と作戦を練らないとね」
有の決意表明に、望とリノアが嬉しそうに応えた。
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