「リノア、おまえの望みは美羅になることじゃないからな」
勇太は遠い記憶に掘り起こしたことで、改めて自分が為すべきことを触発された。
リノアは望の側なら動くことが出来る。
同じ言動だが、話すことも出来る。
だが、それでも心配の種は尽きない。
信也を捕らえ、かなめを倒したとはいえ、現実世界のリノアは今もまだ、『レギオン』と『カーラ』の関係者がいる病院に囚われたままだからだ。
久遠リノア。
同じクラスメイトで、いつも意気投合していた彼女。
些細な喧嘩が元で絶交中だった彼女。
だけど、不器用な俺はいつまでも彼女に謝ることすらできなかった。
だから、今度こそ、彼女に謝りたい。
そして、もう一度、彼女に笑ってほしい。
幼い頃の勇太は毎日が楽しくて仕方がなかった。日々、大好きな幼なじみのリノアと遊んで、家に帰れば優しい笑顔で家族が迎え入れてくれる。
そんな当たり前の幸せな日々。
これからもそんな日々が続くと思っていた。
『勇太くん』
大輪の向日葵のような、思わず目を奪われるリノアの笑顔。
俺は幼い頃からリノアが好きだった。
時が廻り、季節が廻っても、この思いだけは変わらない。
リノアに伝えたい想いはたくさんある。
これから長い時を一緒に過ごすたびに、それは増えていくのだろう。
一言に集約できない気持ちはいつか全部、彼女に伝えきれる日が来るだろうか。
分からない。分からないけど。
これだけは確かだ。
「絶対にリノアを救ってみせる!」
「「勇太くん……」」
望とリノアは勇太の決意に目を見張り、息を呑んだ。
「リノアを元に戻したら、別の者が美羅の器になる。それを止めることはできないかもしれない。だが、一時的に美羅という『救世の女神』をデータの集合体に戻すことはできるはずだ」
「リノアを元に戻したら、別の者が美羅の器になる。それを止めることはできないかもしれない。だが、一時的に美羅という『救世の女神』をデータの集合体に戻すことはできるはず」
そう考察した望とリノアは、この場であの疑問を投げかけることを決断する。
「なら、別の者が美羅の器になる前に、美羅そのものを消滅させるしかない」
「なら、別の者が美羅の器になる前に、美羅そのものを消滅させるしかないね」
「ああ、そうだな」
望とリノアの断言に触れて、勇太は想いを絞り出すように美羅の残滓に懇願する。
「頼む! 教えてほしいんだ!」
大切だった。勇太を導く光だった。
ただ、リノアが傍にいてくれるだけで強くなれた。
リノアの笑った顔も、泣いた顔も、恥ずかしがる顔も、ふて腐れた顔も、全てが愛おしいと感じる。
「俺はどうしてもリノアを救いたいんだ!」
そう言う勇太の目には光るものが浮かんでいた。
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