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留菜マナ
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第四百五十二話 君が原色に変わるまで⑦

公開日時: 2024年2月12日(月) 16:30
文字数:1,135

「奏良様。それは……『アルティメット・ハーヴェスト』によって、彼らが捕らえられたことを報告するのですか?」

「プラネットよ。俺達は『アルティメット・ハーヴェスト』と交戦したことになっている。愛梨を狙っていた者達がどうなったのか、知っていてもおかしくはないだろう」


プラネットの思慮に、有は複雑そうな表情で視線を落とすと熟考するように口を閉じた。


「先程の出来事を報告か。いや、事実をそのまま報告するより、少し虚実をない交せにした方がいいかもな」

「先程の出来事を報告。いや、事実をそのまま報告するより、少し虚実をない交せにした方がいいかもね」


その言葉を皮切りに、望とリノアは沈着に現状を分析する。


「貴様ら、そこで何をしている?」

「……っ」


その時、先程の『レギオン』のギルドメンバーが疑問を発した。

望達の間に緊張が走り、会話が止まる。


「あ、あの……。実は僕達、かなめ様に伝言を頼まれていたんです。椎音愛梨の目撃情報の真偽について……」


咄嗟の機転で、奏良は辿々しくも沈痛な面持ちで続ける。


「真偽だと……?」


『レギオン』のギルドメンバーは不思議そうに奏良の真偽を確かめた。


「はい。実はーーあの情報は真実でした。実際に蜜風望は椎音愛梨に変わっていました。ただ、椎音愛梨を捕らえに向かった者達は、『アルティメット・ハーヴェスト』の者達の介入によって捕らえられてしまいました」


奏良は虚実をない交ぜにし、知られたら都合の悪いことを伏せながら話を続ける。


「偶然、通りかかった僕達は、かなめ様にそのことを報告してほしいと頼まれたんです」

「そうだったんだな」


到底、聞き流せない言葉を耳にした『レギオン』のギルドメンバーは虚を突かれたように瞬く。

奏良はそれを見越した上で、徹頭徹尾、かなめのもとに行くために行動を起こす。


「もし、よろしければ、かなめ様の力をお貸してください。恐らく今も椎音愛梨のままです。かなめ様の光の魔術なら、椎音愛梨と美羅様とシンクロさせることができるはずです」

「なんだと……!」


奏良が語った、愛梨を捕らえようとした者達の顛末。

それは真実と詭弁が入り混じった内容だった。

だが、そのことを知らない『レギオン』のギルドメンバーは焦燥を抱く。


「確かにそれは絶好の好機だな。即急にかなめ様に報告せねば!」

「あの……、僕達に報告させて頂けませんか? あの場にいた僕達なら、椎音愛梨をどこに匿っているのか分かると思います」

「確かに。ついて来い」


愛梨のもとには『アルティメット・ハーヴェスト』の者達がいる。

到底、この場にいる自分達では対処することは出来ない。

状況を把握した『レギオン』のギルドメンバーに先導されて、望達はかなめのもとへと向かう。

そして、この場にいる者達に作戦の変更が言い渡された。

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