「望、奏良、プラネット、妹よ。ここで決着をつけるか。それとも別の場所に移動するか」
「お兄ちゃん、そんなの決まっているよ!」
問いにもならないような有のつぶやきに、花音は人懐っこそうな笑みを浮かべて言った。
「追いかけっこは、そろそろ終わりにしたいもん! 私は勇太くんの意見に賛成するよ!」
「そうだな」
「そうだね」
予測できていた花音の答えに、望とリノアは笑みの隙間から感嘆の吐息を漏らす。
「この場を乗り切るために、まずはモンスターを倒すしかないな」
「この場を乗り切るために、まずはモンスターを倒すしかないね」
「うん」
望とリノアの決意の宣言に、花音は意図して笑みを浮かべてみせた。
有達のギルド『キャスケット』。
誰かと共にあるという意識は、追いつめられていてもなお、決して自分達が負けることはないという不屈の確信をかきたてるものだと望は感じた。
盛り上がる望達を背景に、承服できない奏良は素っ気なく答える。
「僕は、他の場所で構わない。また、『カーラ』のギルドマスターに光の加護を施されるのは勘弁してほしいからな」
「もう、奏良くん! 愛梨ちゃんのために、この場を乗り切ろうよ!」
「……花音。何故、そこで愛梨の名前を出すんだ?」
花音のどこか確かめるような物言いに、奏良は不快そうに顔を歪めた。
「何だ、奏良。勝てない勝負なら、諦めるのか? 確かに、今回の戦闘では、勇太が一番、活躍しているようだったな」
「……活躍」
有が神妙な面持ちで告げると、奏良は不意を突かれたように顔を硬直させる。
その途端、周囲に不穏な空気が流れた。
「君は今回、あまり活躍していないようだが?」
「俺達は、『カーラ』のギルドマスター達を抑えていたんだ!」
奏良が非難の眼差しを向けると、徹はきっぱりと異を唱えてみせる。
「なら、今後も君の出番はない。僕が愛梨を守るからな。ただひたすら、後方で援護してくれ」
「……おまえ、いつも一言多いぞ」
奏良の言及に、徹は恨めしそうに唇を尖らせた。
「とにかく、俺も勇太の意見には賛成だ」
徹は望達を護るようにして立ち塞がると、剣呑の眼差しを込めて告げる。
「望達は渡さないからな!」
徹は改めて、現存する敵ーー賢達に意識を向けた。
「残念だ。鶫原徹。君達は、ここにいたのか」
「……おまえ、俺達がここにいることを知っていて、わざと追いかけていただろう」
賢の戯れ言に、徹は不満そうに表情を歪める。
「いずれ、蜜風望達が君達、『アルティメット・ハーヴェスト』と合流することは分かっていたからな」
「とにかく、望も愛梨も、おまえ達に渡すつもりなんてないからな!」
賢の言葉を打ち消すように、徹はきっぱりとそう言い放った。
「なら、無理やりにでも一緒に来てもらいます」
徹の断言に、かなめは軽やかに宣戦布告する。
「蜜風望、そして、椎音愛梨。女神様の完全な覚醒のために、おまえ達を頂きます」
「…………っ」
かなめは前に進むと、あくまでも事実として突きつけてきた。
賢は、望達に一瞥くれて補足する。
「言ったはずだ。私達は、君達を逃がすつもりはない。美羅様が完全な覚醒を求めているからな」
確信を込めて静かに告げられた賢の意思は、この上なく望の心を揺さぶった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!