「喰らえ!」
「ーーっ!」
奏良が放った氷属性の飛礫アイテムが、『カーラ』のギルドメンバー達の動きを阻害した。
「「花音!」」
声に呼応するように、望達をブラインドして近づいていた花音が『カーラ』のギルドメンバー達にとっては死角から現れる。
「行くよ!」
花音の放った氷属性の飛礫アイテムが、意識を望達に集中していた『カーラ』のギルドメンバー達へと叩きつけられた。
「くーーっ」
咄嗟の判断で回避行動を取った『カーラ』のギルドメンバー達は、直後にそれが取り返しのつかないミスであったことに気づいた。
「まーー」
「待つわけないだろう!」
勇太はそう言い捨てると、『カーラ』のギルドメンバー達が避けたことで開いたスペースを望達共々、突っ切っていく。
「特殊スキルの使い手は、ここで確保しろ!」
「かなめ様のもとまで行かせるな!」
『カーラ』のギルドメンバー達を振り切り、ロビーへと向かう望達。
だが、ロビーで待ち構えていた別の『カーラ』のギルドメンバー達が望の存在に気づき、まるで呼び水のように集まってくる。
「わーい! もうすぐ出口だよ!」
「それどころじゃない」
「それどころじゃないよ」
両手を広げて喜ぶ花音をよそに、望とリノアは必死にロビーへと進んでいった。
「ふむ。このままだと挟み撃ちにされるな。やはり、『サンクチュアリの天空牢』から出るためには、『アルティメット・ハーヴェスト』の助力は必須か」
『カーラ』のギルドメンバー達から追いかけられながらも、有は再び、インターフェースを表示させて出口までのルートを再探索していく。
「イリスと連絡をつけるためには、『サンクチュアリの天空牢』から脱出しないといけないな」
「君の精霊が先行して、外にいる『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバー達に伝令を伝えることは出来ないのか?」
徹の懸念に、銃を構えた奏良は的確に指摘する。
「ああ。精霊だけだとしても、トラップが発動して外には出られないみたいだ」
奏良の剣呑な眼差しに、徹は素っ気なく答えた。
険悪なムードで睨み合いながらも、二人は息のあったコンビネーションで『カーラ』のギルドメンバー達を撃退していく。
これに対して、『カーラ』のギルドメンバー達は、ロビーまでの道への防御を固める。
「よーし、行くよ!」
その布陣を見た花音は、即座に判断した。
花音は裂帛の気合いと同時に、その周囲を固める『カーラ』のギルドメンバー達の元へと動く。
鞭を振るい、疾風の如き速さで距離を詰める。
花音は、ギルドメンバー達に反応させることさえ許さず、先制の一撃を叩き込むことに成功した。
一撃を叩き込むと即座に、囲まれないよう立ち回る。
「ーーっ」
その舞い踊るような花音の連撃に、『カーラ』のギルドメンバー達は躊躇し、翻弄されてしまう。
しかし、花音の防衛をすり抜けて、一部のモンスター達は勇太へと迫った。
「くっーー」
蹂躙ともいえるモンスター達の猛攻。
勇太が振るう剣戟は、ことごとく『カーラ』のギルドメンバー達が呼び出したモンスター達によって弾き返される。
「ま、まだだーー」
勇太は荒い呼吸を無理やり切って、モンスター達の元に向かおうとした。
「勇太くん!」
しかし、そのまま倒れそうになった勇太を、すんでのところでリノアの両親が支える。
「ここから出ないと……」
息も絶え絶えの勇太は、血の気の引いた顔を懸命に奮い立たせた。
その健気さが、リノアの両親の胸を打つ。
『アーク・ライト!』
「……っ!」
リノアの父親は光の魔術を使って、勇太の体力を回復させる。
『お願い、ジズ! 彼に力を与えて!』
それと同時にリノアの母親も、自身の召喚のスキルで小さな精霊を呼び出し、勇太の攻撃力を上げた。
「勇太くん。私達も出来る限り早く、トラップを解除していくつもりだ。その間の時間稼ぎを頼みたい」
「リノアを助けたいの」
「おじさん、おばさん、ありがとうな」
リノアの両親の懇願に、勇太は嬉しそうに承諾した。
「行くぜ!」
「ああ」
「ええ」
勇太は大剣を振り上げて、リノアの両親とともに『カーラ』のギルドメンバー達に立ち向かっていった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!