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留菜マナ
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第ニ百五十八話 氷水晶のレクイエム⑥

公開日時: 2021年6月3日(木) 16:30
文字数:1,127

「蒼の剣、頼む。みんなを守る力を!」

「蒼の剣、お願い。みんなを守る力を!」


それでも、望とリノアは起死回生の気合を込めて、剣を中段に構えて前に踏み込みながら打ち込んだ。

だが、苦し紛れに繰り出した望とリノアの反撃は、ぎりぎりのところで、賢に回避されてしまう。


「ここまでのようだな……っ?」


望達と同様に打ち込もうと一歩踏み込んだ賢は、瞬間の違和感に急制動をかける。

その直後、回避されたのにも関わらず、望とリノアは追撃とばかりに斬撃を斬り込んできた。


「なっ!」


間一髪で直撃を避けた賢は、一気に剣撃の間合いまで迫っていた望とリノアを見て驚愕する。


「これでどうだ!」

「これでどう!」


賢が驚きを示したその時、望とリノアは乾坤一擲の技を放つ。

望とリノアの声に反応するように、それぞれの剣からまばゆい光が収束する。

二人の剣の刀身が燐光(りんこう)を帯びると、かってないほどの力が満ち溢れた。


「「はあっ!」」


望とリノアはその一刀に全てを託し、賢に向かって連なる虹色の流星群を解き放つ。

望の特殊スキルと愛梨の特殊スキル。

それが融合したように、賢に巨大な光芒が襲いかかろうとした。


「「ーーっ!」」


しかし、望とリノアが放った流星の剣の一撃は、合わせ鏡のように互いが向き合ったことで相殺される。


攻撃の瞬間に、リノアの座標を変えたのか?


その一連の鏡写しのような同一動作を前にして、望は推測を確信に変えた。


「「それならーーっ!」」


望が歩法で賢のテリトリーを崩しに掛かっても、リノアによってきっちり打ち消し合う攻撃で処理された。

望はそれでも、賢が攻撃を仕掛けようとした瞬間を狙ったリノアの座標転移潰しへと挑む。

しかし、望が動いたと同時に、リノアは望の進行方向へと移動していた。


「「ーーっ」」


望とリノアの鍔迫り合いは一瞬で終わり、高い音を響かせて離れた二人は、そこから驚異的な剣戟の応酬を見せた。

互いの剣技は、きっちり打ち消し合う一閃で処理される。

高度で複雑な剣閃の応酬。

だが、それはリノアの座標をずらされることで、賢には届かない。


「「ーーっ!」」


このまま続けても埒が明かない状況に、望とリノアは咄嗟に急制動をかける。


「今だ!」


戦局全体を見極めていた奏良は反撃の狼煙を上げるために、銃を構えると範囲射撃をおこなう。


「ーーっ」


不意を突いた連続射撃は、迎撃に動こうとした『レギオン』のギルドメンバー達を怯ませる。


「よし、今のうちにここから出るぞ!」


それは絶好の好機だった。

有はこのダンジョンから脱出するため、混乱する『レギオン』のギルドメンバー達の只中を駆け抜ける。


「プラネットちゃん、行くよ!」

「はい」


花音とプラネットは並走して、苛烈な連携攻撃を『レギオン』のギルドメンバー達に加えていった。


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