掲示板の情報を頼りに訪れた『レギオン』と『カーラ』の者達は周辺に視線を張り巡らせる。
「『シャングリ・ラの鍾乳洞』付近で椎音愛梨らしき人物を目撃した情報。本当に信用できるのか?」
「分からん。だがーー」
ただの作り話と断じるには気になる噂である。
それに他に有力な情報がない今、調べる価値は充分にあった。
望はその様子を花音とともに窺いながら、戦闘の準備を整える。
まだ、こちらには気づいていないみたいだ。
偽物の愛梨だとバレないように、花音とリノアの距離を一定に保つ必要があるな。
戦いの熱に侵されながらも、望は『レギオン』と『カーラ』の者達との距離を図っていた。
「望くん……」
「花音、大丈夫だからな」
「花音、大丈夫だから」
「うん」
改めて、これからのことを確認する望とリノアの言葉に、花音は勇ましく点頭してみせる。
「シルフィの力で姿を消すこともできるけれど、その分、魔力消耗は激しい。『サンクチュアリの天空牢』の探索に備えて、今は出来る限り、魔力消耗を抑えたいからな」
『レギオン』と『カーラ』の者達の姿を視野に納めた徹の顔は、不安をより浮き彫りにしている。
徹が契約している精霊『シルフィ』は音の遮断以外にも、その気になれば気配遮断、魔力探知不可まで行うことができる。
しかし、その分、魔力消耗は激しい。
「この場所に訪れたのは紘が告げていたとおり、六人か。紘はこの展開を予測していたのかもな」
紘から告げられた言葉を思い返して、徹は考え込む仕草をした。
「徹様。各個撃破はお任せください」
「まずは敵陣営に紛れ込まないとな」
プラネットの思慮に、徹は複雑そうな表情で視線を落とすと、熟考するように口を閉じる。
そして、花音は望の合図を受けて、リノアとともに駆け出していく。
「……っ」
「あれは……!」
愛梨に扮した花音がリノアとともに駆けていく姿が、『レギオン』と『カーラ』の者達の視界を横切る。
「本当にいたぞ」
「絶対に逃がすな!」
『レギオン』と『カーラ』の者達による、隠しようもない戦意と敵意。
彼らは散開し、愛梨に扮した花音とリノアを行き止まりまで追い詰めていく。
絶望的な状況。交錯する視線。
「……お兄ちゃん、これからどうしたらーー」
「……お兄ちゃん、これからどうしたらーー」
予想外の出来事を前にして、花音とリノアが疑問を口にしようとした瞬間ーー
「リノアーーーーっ!」
「なっ!」
響き渡ったその声に、『レギオン』と『カーラ』の者達は大きく目を見開いた。
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