「それに『星詠みの剣』を始めとした伝説の武器は、こちらにある」
伝説の武器は、『創世のアクリア』のオリジナル版、そしてプロトタイプ版でも存在している。
望達が直に見たことがない理由、それは高位ギルドが独占していたからだ。
『レギオン』と『カーラ』。
『アルティメット・ハーヴェスト』。
そして、熟練のソロプレイヤーであり、かなめの兄、吉乃信也が手にしていた。
こうした伝説の武器を簡単に手に入れることができるのも、開発者側である特権だろう。
張りつめた空気が漂う中、賢の周囲では慌ただしくギルドメンバー達が行き来している。
「ニコット。美羅様の真なる覚醒には、君の力が必要だ」
賢の訴えに、画面の向こう側にいるニコットの返事は返ってこなかった。
その瞬間、沼底から泡立つように浮かんだ一毅の言。
『『究極のスキル』を使って、美羅を生き返させてくれないか……』
それは、一毅が賢達に託した遺言。
いつしか賢にとってーー賢達にとって、その望みを叶えることが生き甲斐となっていた。
賢と信也とかなめ、一毅と美羅。
五人の関係を崩壊させた忌まわしき事故が、まるで昨日のことのように追憶される。
「何故、だ……」
「一毅、美羅、しっかりしろ!」
「そんな……」
あの日、賢達の慟哭にも似た叫び声が轟いた。
悲痛な声は、夜空に吸い込まれて消える。
彼らの死亡原因は、ワゴン車に乗って研究室へと赴いていた際、車同士の衝突事故に巻き込まれたことだった。
吉乃一毅。
吉乃美羅。
二人の通夜と告別式に参列し、賢達は一毅と美羅の死を否応なしに実感する。
『『究極のスキル』を使って、美羅を生き返させてくれないか……』
一毅が最期に残した遺言。
それは、死にゆく者が残された者達に対して遺した言葉。
その夜、賢達の心中で、彼の言葉が残響のように繰り返される。
それはまるで、祈りを捧げるような願いだった。
一毅のその言葉は、今までのどの言葉よりも賢達の心に突き刺さり、的確に賢達の心を揺さぶり続ける。
今も終わることのない友人から託された使命。
それが残された賢達の生き様であり、成すべきことだった。
「美羅様はーー吉乃美羅様は、今も生きている。彼女(リノア)の中でな」
賢は不敵な笑みを浮かべた。
あの日、思考を加速させた賢は、やがて禁断の方法へと目を向ける。
それは、特殊スキルの使い手達のデータを収集して、新たな特殊スキルの使い手ーー美羅を産み出そうというものだった。
賢は、自身の思想に共感したプレイヤー達とともに、『レギオン』を発端させるとすぐに動き出した。
特殊スキルの使い手である愛梨のデータを収集すると、ギルドメンバー達のスキルを複合させて、そのデータベースを再構築(サルベージ)させるという離れ技を実行してみせたのだ。
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