「まるで、私達など眼中にないような言い回しですね」
「賢様がいる『レギオン』のギルドホームに行かせるわけにはいかないからな」
状況説明を欲するイリスの言葉を受けて、『レギオン』のギルドメンバーは表情の端々に警戒の色をほとばらせた。
「蜜風望達を捕らえろ!」
『レギオン』の狙いは以前変わらず、美羅の真なる覚醒のために望と愛梨を捕らえることだ。
逆にそれを利用すればいいという望達の結論さえも、かなめの意思を突き動かす。
椎音愛梨に特殊スキルを使わせるーー。
その絶対目的を叶えるために、今までかなめ達は最善な方法を模索してきた。
だが、かなめ達が如何(いか)にあらゆる策を弄(ろう)しても、紘の特殊スキル『強制同調(エーテリオン)』によって見抜かれてしまう。
しかも、現実世界が理想の世界へと変わり、美羅の特殊スキルの力が働いた今でもプライバシー制度は行われている。
それは紘達、『アルティメット・ハーヴェスト』が、『レギオン』と『カーラ』から愛梨とリノアを守るために行っていることだった。
「お兄ちゃん。カリリア遺跡の伝説の武器って……」
戦況に目を配っていた花音が不安を端的に言い表す。
「ああ。手嶋賢が全て、持っているはずだ。だが、手嶋賢が俺と同じアイテム生成のスキルの使い手なのは変わらない。『星詠みの剣』を使いこなすだけで精一杯のはずだ。全ての武器を使うことは厳しいだろう」
「そうだな」
有が発したその意見を皮切りに、望は沈着に現状を分析した。
有が語った話は筋は通っているし、理にも敵っている。
天賦のスキルの使い手ではない賢が、伝説の武器を全て巧みに使いこなすことは不可能だろう。
だが、カリリア遺跡の伝説の武器を、賢が全て所持している。
その事実は、一瞬にして周囲の空気を硬化させた。
「ねえ、お兄ちゃん。手嶋賢さんは、私達が『レギオン』のギルドホームに向かっていること、気づいているのかな?」
「恐らくな」
それぞれが戦いに意識を高める中、花音は具体的な提案を口にする。
「だったら、何か不意を突けるようなものを用意したらどうかな?」
花音はさも名案を思いついたという顔で有に振り返った。
「なるほど、妹よ、一理あるな」
有は顎に手を当てると、花音の発想に着目する。
「飛礫アイテムを用いれば、少なくともモンスターの注意はこちらに向けられるだろうな」
戦局全体を見極めていた奏良は、銃を構えるとモンスター達ではなく、『レギオン』のギルドメンバー達に対して範囲射撃をおこなう。
「ーーっ」
不意を突いた連続射撃は、新たにモンスターを呼び出そうとしていた『レギオン』のギルドメンバーを大いに怯ませた。
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