『フェイタル・トリニティ!』
勇太は、『レギオン』のギルドメンバー達の不意を突くようなかたちで大技をぶちかました。
勇太の放った天賦のスキルによる波動が、『レギオン』のギルドメンバー達を襲う。
「なっーー」
視線を誘起された『レギオン』のギルドメンバーの一人は、その不慮の一撃をまともに喰らう。
その瞬間、『レギオン』のギルドメンバーの一人は体力を失い、そのまま、この仮想世界から消えていった。
光を纏った大剣が、周囲にいた『レギオン』のギルドメンバー達さえも攻撃ごと吹き飛ばす。
「行くぜ!」
一網打尽とまではいかなかったが、勇太は次々と『レギオン』のギルドメンバー達を薙ぎ倒していった。
「……っ! 父さんと母さんから連絡が来たぞ!」
そこで、有のもとに吉報が届く。
様々な場所に点在していた美羅の残滓を全て消滅させたという報告が来たのだ。
「お兄ちゃん、本当!」
花音が喜び勇んだその時ーー。
「あぐっ……」
再び、リノアの苦しげな叫び声が聞こえた。
「なっ!」
咄嗟に望が振り向くと、リノアは頭を抱えてふらついていた。
「お兄ちゃん、リノアちゃんがまたーー」
目まぐるしく変わる状況を前にして、花音が疑問を口にしようとした瞬間ーー
「リノア!!」
響き渡ったその声に、望達は大きく目を見開いた。
勇太は即座に駆け寄って、リノアの身体を支える。
その途端。
「うわああっ……!」
「なっ!」
リノアの身体から飛び出したのは、踊り狂う光の粒子。
やがて、その光が勢いよくニコットに伝播していく。
「光の解放……。美羅がデータの集合体に戻ったのか?」
望は目の前で起きた出来事を胸に刻むように、『サンクチュアリの天空牢』で美羅の残滓が語った言葉を思い起こす。
『久遠リノアから美羅を解放させることによって、美羅という『救世の女神』をデータの集合体に戻す必要があります。そのためには久遠リノアの意識が必要不可欠です』
美羅の残滓を全て消滅させたから、リノアから美羅を解放させることができたのか。
望が疑問だらけの脳内を整理していると、花音は沸き上がる疑問を口にした。
「でも、ニコットちゃんに……?」
「もしかして、新たな器にしようとしているのか……?」
望の発言に、花音は目を瞬かせた。
「……いや、ニコットはNPCだ。美羅の器にはなれない。恐らく……新たな器を手に入れるまでの保管庫のような役割を果たしているのかもしれないな」
「ダンジョンマップを遠隔操作できることといい、ここまで手の込んだことをしてのけるのはやはり、ただの機械人形型のNPCではない。特殊スキルの使い手とシンクロを行えることといい、もしかしたら特殊スキルの重要な秘密に関わっているのかもしれないな」
徹の説明に、奏良は驚きと同時に合点がいく。
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