「機械都市『グランティア』に赴くことができれば、美羅を消滅させる方法が分かるかもしれない。そうすれば、リノアを元に戻せるはずだ! 頼む! これからも望達の力を貸してくれないか!」
「……勇太くん」
思いの丈をぶつけられた望達は、その全てを正面から受け止める。
「ああ、これからもよろしくな」
「勇太くん、頑張ろうね」
望と花音は吹っ切れたように、勇太の申し出を承諾した。
そして、今までダンジョンを調べていた際の成果を伝える。
「……敵の目を欺く方法。そして『メイキングアクセサリー』か」
一瞬の静寂の後、勇太は感想をそのまま口に出した。
「そういえば、リノアは二階にいるのか?」
「ああ。俺と同じ言動を繰り返している。今は、有のおばさんが見てくれているはずだ」
勇太の疑問に、望は真剣な眼差しで捕捉する。
その言葉を聞いて、勇太は自身の希望を口にした。
「まだ、徹からの連絡は来ていないよな。その前にリノアに会ってきてもいいか?」
「勇太よ、もちろんだ。ただ、望と一緒に行った方が、ここに連れて来やすいだろうな」
そんな彼の意を汲むように、有は自身の考えを纏める。
「分かった。望、一緒に来てもらえるか?」
「ああ」
「望くん、勇太くん、私もリノアちゃんのところに行きたい」
勇太の誘いに、立ち上がった望は肯定した。
それに花音も付き添い、二階へと上がっていく。
望達が部屋に入ると、リノアは有の母親に支えられながらベッドの縁に座って力なく頭を垂れていた。
リノアに近づいた勇太は躊躇うように訊いた。
「リノア、大丈夫なのか?」
勇太が呼びかけても、リノアからの反応はない。
状況を察した望は花音とともにリノアのもとに寄り添う。
「ああ」
「うん」
望の言葉に反応するように、顔を上げたリノアは答える。
勇太の目の前にいるのは確かにリノアだ。
それなのに、まるでどこか得体の知れない相手と対峙しているような気分に襲われた。
望と同じリノアの表情が、どうしようもなくそれを証明する。
それでも先程までの虚ろな表情とは異なり、リノアは柔らかな笑みを浮かべていた。
「そうか」
リノアの様子に、勇太は表情をこれ以上ないほど綻ばせる。
感情を曝け出し、己の想いを口にするならば、勇太が告げるのはいつだって同じ誓いだ。
「おじさん、おばさん!」
勇太は後方に控えていたリノアの両親に視線を向けると、真剣な眼差しで訴える。
「絶対にリノアを救い出そうな!」
「ああ」
「ええ」
勇太の意気込みに、リノアの両親は決意を込めて応えた。
「望、花音、勇太、リノア、遅くなってごめんな!」
望達がリノアを連れて一階に降りると、有達は徹からダンジョン調査の経過報告を受けていた。
ダンジョン全域の索敵が終わった後は、徹はいつもどおり、望達に同行する形になる。
イリスは既にギルドの外で、望達の警護に当たっているようだ。
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