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留菜マナ
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第ニ百ニ十五話 久遠の鳥籠⑤

公開日時: 2021年5月1日(土) 17:16
文字数:1,439

『フェイタル・トリニティ!』


勇太は跳躍し、信也達の不意を突くようなかたちで大技をぶちかました。

勇太の放った天賦のスキルによる波動が、『カーラ』のギルドメンバー達を襲う。


「なっーー」


視線を誘起された『カーラ』のギルドメンバーの一人が、その不慮の一撃をまともに喰らう。

その瞬間、『カーラ』のギルドメンバーの一人は体力を失い、そのまま、この仮想世界から消えていった。

光を纏った大剣が、周囲にいた『カーラ』のギルドメンバー達さえも攻撃ごと吹き飛ばす。


「行くぜ!」


一網打尽とまではいかなかったが、勇太は次々と『カーラ』のギルドメンバー達を薙ぎ倒していく。


「よーし、私達も行くよ!」


裂帛の咆哮とともに、花音は力強く地面を蹴り上げた。


『クロス・バースト!』


今まさに望達に襲いかかろうとしていたモンスター達に対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。

花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った封印の効果によって、モンスター達は全ての特性を封じられた。

さらに追い打ちとばかりに、花音は鞭を振るい、何度も打ち据える。


「奏良よ、頼む」

「言われるまでもない」


有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、銃を構えた。

発砲音と弾着の爆発音が派手に響き、モンスター達を怯ませる。


「行きます!」


裂帛の咆哮とともに、プラネットは力強く地面を蹴り上げた。


「はあっ!」


気迫の篭ったプラネットの声が響き、モンスター達は次々と爆せていく。

花音達の攻撃により、モンスター達のHPは半分近くまで減った。


「「これで決める!」」


そのタイミングで、望とリノアは剣を掲げると、連なる虹色の流星群を一閃とともに放つ。

望の特殊スキルと愛梨の特殊スキル。

それが融合したように、モンスター達に巨大な光芒が襲いかかる。

一片の容赦もない二人の一振りを受けて、召喚されたモンスター達が全て消滅していった。


「これなら、どうだ!」


『カーラ』のギルドメンバーの一人が、新たなモンスターを召喚する。

鬼火が宙を漂う。

やがて、それらが一ヶ所に集まり、形を成していく。

望達の前に現れたのは、白骨で肉体を構成した巨大な体躯を持つ骨竜だった。


「メルサの森で現れた骨竜か……」

「メルサの森で現れた骨竜……」


カリリア遺跡のボスと同じ体躯の骨竜を前にして、望とリノアは声を上擦らせる。


「みんな、来るぞ!」

「みんな、来る!」

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』


望達を見据えた骨竜は、狙い誤つこともなく、望達めがけて咆哮を放った。


「……っ!」


轟音とともにそれは炸裂し、望達は弾き飛ばされ、視界が回転する。


「みんな、大丈夫か?」


望は何とか上半身を起こすと、周囲を確認する。

ロビーが風圧によって吹き飛ばされ、廃墟と変わり果てていた。


「うん。だけど、倒せる見込みが立たないよ。もう、HPがへろへろ~」


花音の指摘どおり、望達のHPは既に半分を切っていた。


「君の光龍で、対抗出来ないのか?」

「俺まで光龍を呼び出したら、ロビーが崩壊してここから出られなくなるだろう!」


奏良が非難の眼差しを向けると、徹はきっぱりと異を唱えてみせた。


「氷属性の飛礫アイテムは、『カーラ』の人達の虚を突くことが出来ないかな?」

「恐らく、目眩ましに使えるだろうな」

「わーい! 不意討ち、出来そうだよ!」


曖昧に言葉を並べる奏良をよそに、花音はぱあっと顔を輝かせる。


「妹よ、それを大声で言ってしまっては、不意討ちの意味がないぞ」


戦局を見据えていた有は、妹が口にした迂闊な発言に突っ込まざるをえなかった。

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